[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏

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スペイニ国王の末路 / 新しい仕事

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 ♦♢オリバーside
 
「よく眠っているようだな」
「今のうちに手足を縛り上げよう」

 スペイニ国王とローマムア帝国騎士のふりをしていた男たちを拘束し、偽ローマムア帝国騎士服も証拠のために差し押さえた。
 
 ちなみにオリバーの頬の傷は、スペイニ国の王宮内ではそれほど目立たなかった。スペイニ国王は些細なことで怒り、使用人たちに暴行を加える人間であった。そのため、顔に痣や傷のある使用人は珍しくもなかったのだ。

 
 
 さて、こちらはスペイニ国の中心に位置する広場である。民衆が詰めかける中、壇上には拘束されたスペイニ国王が引き立てられている。眠り薬から覚めたばかりの王の顔には、戸惑いと怒りが入り混じった表情が浮かんでいた。彼の橫に堂々と立っているのは、オリバーだった。その冷静かつ鋭い視線が、スペイニ国王を射抜いていた。

「皆、よく聞いてくれ!」オリバーが広場を見渡して声を上げた。その声は広場の隅々まで響き渡る。
「あなたたちがローマムア帝国の騎士だと思っていた者の正体を明らかにしよう。略奪や暴行を行ったのは、スペイニ国の騎士たちだった。こいつらの顔を覚えているだろう? スペイニ国王自らの命令だったのだ!」

 一瞬の静寂の後、民衆の中から驚きと怒りの声が一斉に沸き起こった。信じられないという目つきで国王を見つめる人々。その視線に、スペイニ国王は狼狽しながら叫ぶ。
「嘘だ! 私はそんなことは命じていない!」

 オリバーは冷笑を浮かべた。
「お前の命で、ローマムア帝国の偽制服を纏った者たちが、街で略奪や暴行を行った。民たちは奴らの顔を見ているはずだ」

「おぉ、あいつらの顔には見覚えがあるぞ。金も払わず商品を奪っていった奴らじゃないか。ん? 今はスペイニ国の騎士服姿だ」
 店主が悔しそうに叫んだ。

「ほんとだ。あいつらは若い娘に乱暴したり、さらっていったこともある人でなしだ!」
 
 多くの民たちが、悪さをした騎士たちの姿を記憶していた。全ての陰謀が明らかになっていくと、次第に広場は怒りの渦と化し、国王へ向けられた視線は憎悪に変わっていく。真実が暴かれた今、国王の否定は空しく響くだけだった。国王に命令された騎士たちと国王が言い争いを始めたが、結局、言い争ううちに彼らの繋がりが浮き彫りになり、どちらも墓穴を掘った形になったからだ。

「明朝、この者たちをローマムア帝国に連行する! 一晩、ここで手足の自由を奪ったまま置いておく。なぜ、自らの民を追い詰めるような愚行を犯したのか、この愚かな王に尋ねてみるがいい。あぁ、なにをしてもいいが、首だけは残しておいてくれ」

 ーー愚かな王よ。お前は虐げてきた民から裁かれろ!

「ちょっと、待てーー! お前、そんなことを許したら、余は民たちに……。こら、余たちを置いていくな! 待てーー! 待つんだ。金をあげよう。大金だぞ。城の地下室に隠し金と拉致した若い女たちがいる。みんな、やるから……」

 もちろん、オリバーはそんな言葉を無視して、その場を立ち去った。そして、スペイニ国王は……




 ♦♢アルバートside



「大罪人の子にしては、文句も言わずによく働くなぁ。俺たちの任された区画もむしってくれよ。気が利かねぇなぁ、新入りは先輩を手伝うのが当たり前だろう?」
 
 先ほどの庭師たちは、アルバートがむしり取った草が入った籠を、足で思いっきり蹴飛ばしたのだった。

 アルバートは文句を言うこともなく、先輩たちの区画の草をひたすらむしり取っていく。そのあいだに何度も籠をひっくり返されたが、必死で耐えていた。

 ビクトリアアグネスはそんなアルバートの姿を遠くから見つめていた。確かに、アルバートは自分に意地悪な発言をすることはあった。しかし、それはモーガン男爵夫人やアリスに影響されていたからだ。

 今、彼女の目の前には過激派の男たちと行動を共にしていた少女、マドリンがいた。地下牢に入れるというアレクサンダーの決定にビクトリアアグネスは懇願し、彼女を自分の管理下に置くことにした。しかし、マドリンは心を閉ざし、ひたすらローマムア帝国とアレクサンダー皇帝への恨みを口にするばかりだった。

 両親を亡くし、姉のラクエルに育てられたマドリンは、ラクエルを奪った帝国の騎士を激しく憎んでいたのだ。ビクトリアアグネスはそのマドリンを伴い、アルバートのいる庭園へと向かった。

「頑張っているわね、アルバート」 
 
「アグネス姉様……じゃなくて……皇女殿下。ありがとうございます。この仕事はなんとなく僕に合っているような気がします。これから僕は皇女殿下に喜んでいただけるように綺麗な花を咲かせたいです。以前のことは、反省しています」
 
「花を咲かせる、とても素敵な言葉ね。この少女は私に毒をかけようとした者たちの仲間だったのよ。でも、彼女には深い理由があって、哀れな境遇にいるのよ。アルバートが面倒をみて良い方向に導けないかしら? それが私への償いになるわ」

 アルバートは思いがけない仕事を、ビクトリアアグネスから任されたのだった。 
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