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22-1 楽しい冬至祭り

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 冬至祭りはメドフォード国の人々にとって、一年で最も楽しいイベントだった。この祭りは通常、十二月二十一日から五日間にわたり行われる。この期間は必ず家族で過ごすという習わしがあり、私もビニ公爵様とボナデア伯母様とで過ごすのだと思っていた。

 ところが、エレガントローズ学院から二十日の夕方にビニ公爵邸に帰ってくると、私やボナデア伯母様のたくさんのトランクが荷物用馬車に積み込まれるところだった。

「どこかに旅行するおつもりですか?」

「あら、旅行ではありませんよ。明日の朝早くに、家族で過ごすために王城に行くのですわ」
「え?・・・・・・」

 私はここで自分の認識の甘さを痛感したのだけれど、『家族』のなかにはアルフォンソ国王陛下が含まれるのよ。なぜなら、ビニ公爵様とアルフォンソ国王陛下はとても仲の良い兄弟で、お互いを大事な家族と思っていたからだ。

 ということは・・・・・・そう、冬至祭り期間はアルフォンソ国王陛下をはじめ、カサンドラ王妃殿下やカーマイン王太子、ライオネル殿下やミラ王女殿下と一緒に過ごすことになるのよね。

 メドフォード国に来てから、ライオネル殿下には何度もお会いしている。彼は以前から、ビニ公爵様が好きで敬愛しているところもあって、頻繁にビニ公爵邸にいらっしゃっていたらしい。

 今は主に、私に会いにいらっしゃる部分が大きい。けれど、他の方々とは一度だけご挨拶をしに王宮に行ったきり、お話することはなかった。

 メドフォード国の社交シーズンは、冬至祭りが終わるあたりから春にかけてだった。だからメドフォード国の舞踏会や夜会なども、まだ未経験だったりする。

「大丈夫。緊張しなくても良い。ソフィ嬢はもう家族だよ」

 ビニ公爵様はそうおっしゃってくださったけれど、国王陛下の前で緊張しないわけがない。


☆彡 ★彡


 翌日の朝早く、私達は王宮に向かった。王宮に入ると、壮大な門が立ちはだかる。その門は、厚い石壁と高い塔で囲まれ、堂々とそびえ立っていた。門の上には城の旗が掲げられ、風に揺れていた。

 門をくぐると、美しい広場が広がる。広場には石畳が敷かれ中央には大きな噴水があり、水しぶきが太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。噴水の周りには花壇が配置され、美しい花々が咲き誇っていた。

 馬車は大きなお城の玄関前に停まった。すると、すぐに中からメイドや執事がわらわらと出て来て、荷物を持って入って行く。その後ろから私達も続いた。

「皆様。ようこそ、いらっしゃいました」

 カサンドラ王妃殿下が出迎えてくださった。カサンドラ王妃殿下は女性らしい体つきの小柄な方だ。髪は淡い金髪で瞳はヘーゼル色をしていた。




 王宮の中庭には、厳冷な冬の日差しと青い空が広がっていた。寒さにも負けず、王宮の庭師たちが巨大な氷のブロックを慎重に運び込んできた。この日は、王国の伝統的な冬至祭りの一環として、王宮の庭で美しい雪の女神の像を彫る日だった。

 王宮の庭園は、雪がきらきらと輝く冷たい絨毯で覆われており、美しい冬の景色が一望できる場所だった。庭師たちは巧みな技術を駆使して、氷のブロックを庭の中央に運び、その上に立派な雪の女神の像を彫るための台座を作成した。

 王宮の中庭で私達は色とりどりの厚着をして、冷たい寒風に耐えつつも楽しげな笑顔で待っていた。

 いよいよ、彫刻家たちは雪の女神の像を彫る作業を開始した。氷のブロックから滑らかなカーブをつくり、優美なドレスを持つ女神像が次第に形作られていく。彼らは慎重に作業を進め、氷に命を吹き込むような技術で女神の髪、顔、そして衣装を彫刻した。

 私達は歓声と笑い声を上げ、寒さを忘れるほどの楽しい雰囲気が中庭に広がっていった。やがて、太陽は西に傾き、氷の女神像が完成した。巨大な氷の彫刻の周りには華麗に飾られたランプが配置され、美しい雪の女神の像を一際美しく際立たせた。

 その後、私達たちは美味しい料理とホットワインを楽しむために大広間に移動した。その夜、私はダンスと音楽に興じることができ、楽しい夜を過ごしたのだった。




 
 翌日はメドフォード国の冬至祭りの伝統的な競技大会が開催された。大闘技場は壮大な建物であり、王宮の隣に設置されている。

 建物自体は石造りで作られ、堂々とした外観だ。外壁には彫刻や装飾が施され、豪華な雰囲気を醸し出していた。入口には大きな門があり、その上には王家の紋章が掲げられている。

 内部は広い競技場となっており、観客席が円形に配置されていた。観客席は段々になっており、数千人以上が収容できるほどの大規模なスペースを持っていた。観客は皆家族と来ていて、観客席の中央には特別な席が用意され、王族や高位の貴族がそこに座る。

 競技場には多くの観客が訪れていた。ほとんどが皆家族連れで、子供たちはワクワクした表情で大会を楽しみにしていた。競技場の周りには出店が立ち並び、彩り鮮やかな屋台からは美味しそうな食べ物の香りが漂っている。人々は、おやつや飲み物を購入し、楽しい時間を過ごすために友人や家族と一緒に列に並んでいた。笑顔と笑い声が競技場全体に広がる。

 お弁当を持ち込んでいる家族連れも多いようだった。色とりどりのお弁当箱が広がり、観客席で座っている家族が団欒を楽しんでいる様子が微笑ましい。

 私達は王族用の特別な席に座り、多くの競技者が参加する大会を観覧する。アルフォンソ国王陛下が開催の言葉を述べた後に、カーマイン王太子殿下も参加者を激励する言葉を述べた。

 競技場の中央には射場が設けられており、そこで弓射の競技が行われるのだ。射場は広くて開けたスペースであり、的が適切に配置されていた。その的はさまざまな大きさや距離が設定されており、競技者はそれらを的確に射抜くことを目指す。

 カーマイン王太子殿下が、最も長い距離で小さい的を、驚異的な腕前で射抜くと、大衆が大歓声を上げた。そのようなことがあまり得意でないライオネル殿下は、居心地が悪そうにしていたけれど、私はそっと彼の手に自分の手を添えた。

「カーマイン王太子殿下の弓射もすばらしいですが、ライオネル殿下のフルートやヴァイオリンも同じぐらい、いいえ、それ以上に素晴らしいですよ」

 私がふわりと微笑むと、ライオネル殿下もホッとしたような暖かい笑顔を浮かべた。その瞬間、大闘技場での冬至祭りの雰囲気は、さらに温かく愛に満ちたものに変わったのだった。




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※異世界のお話ですので、社交シーズンとかは作者独自の期間になっています。
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