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カメーリア視点
既に、私はカロライナ王国の王妹の地位を失っていた。お兄様は退位を迫られ従兄弟が王位に就き、メドフォード国に忠誠を誓う形になり実質上属国となった。
カロライナ王国は外交政策や国際関係において、メドフォード国の指示に従い同盟や保護を受けることになった。しかし、内部政治や一部の自治権は保持することができるらしい。
私はメドフォード国の裁判所で、裁かれる立場になってしまったことに、戸惑いと恐怖を感じていた。私を裁く裁判所は宮殿の敷地の一角に建てられていた。高い塔がそびえ城壁に囲まれた中庭には、市民や貴族の立ち入りを管理する騎士たちが配置されている。裁判所の扉は重厚で、メドフォード国の紋章が掲げられていた。
国王自らが裁判を主宰し、法廷には大臣たち、主だった貴族、法務省の文官、代表市民たちが出席していた。座席は段差を持ち、王国内の重要な貴族が高い場所に座り、王権の象徴として位置づけられていた。
裁判が始まると、私の罪状が読み上げられた。ライオネル殿下に対する怪しげなエリクサーの投与が明らかにされ、アルケムスが全てを自白し、それが決定的な証拠とされた。
私は有罪と宣告され、メドフォード国の王位継承権第二位に位置する大切な王子に、危害を加えた稀代の悪女として名を刻まれることになった。誰も私を庇う人はいない。
ライオネル殿下が好きになったから欲しいと思った。身分も釣り合うし、私は美しい。なぜ、それがいけないの?
「カメーリアよ。己の罪深き行為の償いと悔い改めのため、修道院に入ることを命ずる。神の赦しを願いつつ、心と精神を浄め己を更生し、罪からの贖罪を果たせ」
アルフォンソ国王陛下が裁決を下した瞬間、私は絶望の波に飲み込まれた。
酷すぎるわ!
☆彡 ★彡
私は木製のベッドフレームの上にわらを敷き、綿よりも荒くて肌触りの悪い寝具で寝る。修道院では一人部屋ではなくて、多くの修道女と部屋を共有するから落ち着かない。
夜明けの五つ時(朝の5時)に起床の鐘が鳴り礼拝堂に向かう。ここでは、日の出と共に朝のお祈りをするのだ。一刻(1時間)もお祈りを捧げると、やっと朝食のために大食堂に移動する。出されるものは籾(もみ)の殻を混ぜた粗末なパンと林檎が半分、飲み物は水だけだった。
こんなものは食事なんて言えない!
その後、三刻(3時間)ほど共同労働という作業をさせられる。掃除や畑仕事に洗濯、手工芸などで、決して楽な仕事ではなかった。
私は掃除なんてしたことはない。エリアごとに、どこを掃除するのか割り当てられる。礼拝堂の掃除係になると床や祭壇周りの拭き掃除、ろうそくの蝋の片付け、祈祷書の整理など、しなければならないことがたくさんあった。
畑仕事も野菜の収穫やら草むしりは大変な作業だった。洗濯も冷たい水に手を突っ込み、洗濯桶の中で布をこすりあわせなければならない。指先がかじかみ、手はあっという間に荒れた。手工芸なども苦手で苦痛しか感じなかった。
その後、また正午の祈りを捧げると、やっと昼食の時間になる。けれど、野菜と豆のスープに茹でたジャガイモだしか食べられない。
その後、個人的な省察の時間が続き、自身の罪を何百回も紙に書き記すことが求められた。また、神の教えも何百回も書き写すこともあった。そして、夕方になり、夕食は朝と同じくパンと水、ごくわずかな果物だけだった。
こんな食事では栄養が足りなくて死んでしまうわ。この修道院は川が近いので、たまに夕食に魚が出ることもあるけれど、私は魚が大嫌いなのよ!
ここにはなんの楽しみもない。背中は寝心地の悪いベッドで常に痛かったし、質素すぎる食事は私の口にはあわなかった。私は修道女たちに八つ当たりをしたり、食事を捨てたり、祈りの時間には居眠りをしてやった。
「きっと、お兄様が私を助けに来てくださるわ。絶対に、ここから抜け出してやるんだから!」
私は、お兄様も私と同様に、どこかの修道院で過ごしていると信じていた。でも、修道院長は呆れた顔で、言いにくそうに震える声で、私に真実を教えてくれた。
「前カロライナ国王は、もうこの世におりません。全ての罪は自分にあるとおっしゃって、カメーリアさんの命だけは助けてくれるように願い出て、自ら毒杯をお飲みになりました。ですから、あなたはこうして生きていられるのです」
メドフォード国の第二王子にエリクサーを盛った私も、本来なら毒杯を賜るのが当然の流れだと、修道院長はおっしゃった。アルフォンソ国王陛下の慈悲によって、刑が軽減され私が生きているとも。
私はこの時、初めて自分の罪の重さを、自分の愚かさを知った。それからの私は、お兄様の魂のために真剣に祈る日々を過ごしている。
「神よ、お願いします。兄の魂が平和に眠れるように、お願いします。兄が犯した罪は私の罪でもあります。私は一生ここで祈りを捧げます」
どんなに後悔しても時は戻らず・・・・・・私は泣きながら今日も祈る。私の我が儘で、お兄様を死なせてしまった深い後悔と、祖国をメドフォード国の属国にさせてしまった罪の重さを、反省しない日は一日もないのだった。
既に、私はカロライナ王国の王妹の地位を失っていた。お兄様は退位を迫られ従兄弟が王位に就き、メドフォード国に忠誠を誓う形になり実質上属国となった。
カロライナ王国は外交政策や国際関係において、メドフォード国の指示に従い同盟や保護を受けることになった。しかし、内部政治や一部の自治権は保持することができるらしい。
私はメドフォード国の裁判所で、裁かれる立場になってしまったことに、戸惑いと恐怖を感じていた。私を裁く裁判所は宮殿の敷地の一角に建てられていた。高い塔がそびえ城壁に囲まれた中庭には、市民や貴族の立ち入りを管理する騎士たちが配置されている。裁判所の扉は重厚で、メドフォード国の紋章が掲げられていた。
国王自らが裁判を主宰し、法廷には大臣たち、主だった貴族、法務省の文官、代表市民たちが出席していた。座席は段差を持ち、王国内の重要な貴族が高い場所に座り、王権の象徴として位置づけられていた。
裁判が始まると、私の罪状が読み上げられた。ライオネル殿下に対する怪しげなエリクサーの投与が明らかにされ、アルケムスが全てを自白し、それが決定的な証拠とされた。
私は有罪と宣告され、メドフォード国の王位継承権第二位に位置する大切な王子に、危害を加えた稀代の悪女として名を刻まれることになった。誰も私を庇う人はいない。
ライオネル殿下が好きになったから欲しいと思った。身分も釣り合うし、私は美しい。なぜ、それがいけないの?
「カメーリアよ。己の罪深き行為の償いと悔い改めのため、修道院に入ることを命ずる。神の赦しを願いつつ、心と精神を浄め己を更生し、罪からの贖罪を果たせ」
アルフォンソ国王陛下が裁決を下した瞬間、私は絶望の波に飲み込まれた。
酷すぎるわ!
☆彡 ★彡
私は木製のベッドフレームの上にわらを敷き、綿よりも荒くて肌触りの悪い寝具で寝る。修道院では一人部屋ではなくて、多くの修道女と部屋を共有するから落ち着かない。
夜明けの五つ時(朝の5時)に起床の鐘が鳴り礼拝堂に向かう。ここでは、日の出と共に朝のお祈りをするのだ。一刻(1時間)もお祈りを捧げると、やっと朝食のために大食堂に移動する。出されるものは籾(もみ)の殻を混ぜた粗末なパンと林檎が半分、飲み物は水だけだった。
こんなものは食事なんて言えない!
その後、三刻(3時間)ほど共同労働という作業をさせられる。掃除や畑仕事に洗濯、手工芸などで、決して楽な仕事ではなかった。
私は掃除なんてしたことはない。エリアごとに、どこを掃除するのか割り当てられる。礼拝堂の掃除係になると床や祭壇周りの拭き掃除、ろうそくの蝋の片付け、祈祷書の整理など、しなければならないことがたくさんあった。
畑仕事も野菜の収穫やら草むしりは大変な作業だった。洗濯も冷たい水に手を突っ込み、洗濯桶の中で布をこすりあわせなければならない。指先がかじかみ、手はあっという間に荒れた。手工芸なども苦手で苦痛しか感じなかった。
その後、また正午の祈りを捧げると、やっと昼食の時間になる。けれど、野菜と豆のスープに茹でたジャガイモだしか食べられない。
その後、個人的な省察の時間が続き、自身の罪を何百回も紙に書き記すことが求められた。また、神の教えも何百回も書き写すこともあった。そして、夕方になり、夕食は朝と同じくパンと水、ごくわずかな果物だけだった。
こんな食事では栄養が足りなくて死んでしまうわ。この修道院は川が近いので、たまに夕食に魚が出ることもあるけれど、私は魚が大嫌いなのよ!
ここにはなんの楽しみもない。背中は寝心地の悪いベッドで常に痛かったし、質素すぎる食事は私の口にはあわなかった。私は修道女たちに八つ当たりをしたり、食事を捨てたり、祈りの時間には居眠りをしてやった。
「きっと、お兄様が私を助けに来てくださるわ。絶対に、ここから抜け出してやるんだから!」
私は、お兄様も私と同様に、どこかの修道院で過ごしていると信じていた。でも、修道院長は呆れた顔で、言いにくそうに震える声で、私に真実を教えてくれた。
「前カロライナ国王は、もうこの世におりません。全ての罪は自分にあるとおっしゃって、カメーリアさんの命だけは助けてくれるように願い出て、自ら毒杯をお飲みになりました。ですから、あなたはこうして生きていられるのです」
メドフォード国の第二王子にエリクサーを盛った私も、本来なら毒杯を賜るのが当然の流れだと、修道院長はおっしゃった。アルフォンソ国王陛下の慈悲によって、刑が軽減され私が生きているとも。
私はこの時、初めて自分の罪の重さを、自分の愚かさを知った。それからの私は、お兄様の魂のために真剣に祈る日々を過ごしている。
「神よ、お願いします。兄の魂が平和に眠れるように、お願いします。兄が犯した罪は私の罪でもあります。私は一生ここで祈りを捧げます」
どんなに後悔しても時は戻らず・・・・・・私は泣きながら今日も祈る。私の我が儘で、お兄様を死なせてしまった深い後悔と、祖国をメドフォード国の属国にさせてしまった罪の重さを、反省しない日は一日もないのだった。
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