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「お前の知っていることを全て話せ!」
「私は何も言わない。私の口からは何も聞けない」
グレイトニッキーに命じられた男性は堅固な決意を心に秘め、表情にはその決意がはっきりと現れていた。彼の眉間には深いしわが刻まれ眼差しは鋭く、自分の信念を持ちグレイトニッキーに対する抵抗を示していたのよ。
唇は閉じられ固い線を描いていた。彼は言葉を一つも口にせず、沈黙を武器として使うつもりのようだった。その静寂は、彼の決意と不屈の意志を物語っていた。
この男性の表情と態度からは、どんなに圧力がかかろうとも、彼が自分の信念を曲げないことが明確に伝わってきた。これではきっと証言は得られない、そう思った。
「お前に黙秘権などないのだよ。拷問してでも、吐いてもらおうか?」
グレイトニッキーの脅しに反応した男性は、呪文のような言葉を唱えだす。その瞬間、彼は苦痛で顔を歪め大粒の汗を噴き出した。
いったい、なにが起こっているの?
「その拘束具は錬金術師が魔法を使用しようとする瞬間に、微弱な魔法エネルギーを感知するんだよ。すると、拘束具内部で反魔法シールドが生成されるのさ。わかるよな? お前はなにもできない。それどころか・・・・・・」
グレイトニッキーの説明では、反魔法シールドは錬金術師の心に向かって働きかけ、彼の過去の罪や過ちに対する深い罪悪感を増幅させるそうだ。過去の行いや罪に対する後悔や自責の念が錬金術師の心に広がり、自白への圧力となるという。
この仕組みにより、拘束された錬金術師は自己の罪悪感と魔法の封印に苦しむこととなり、罪を自白せざるを得ない状況が生み出されるという仕組みらしい。グレイトニッキーは、罪を犯した錬金術師用にこれを開発した、と胸を反らせた。
やがて、捕らえられた男が自分の名前を語り、罪を自白しだした。彼が作成したエリクサーは3種類。ここ最近の記憶を消すものと、記憶を差し替えるもの、強力に好感度を上げるもの、それらをカロライナ国王とカメーリア殿下に依頼されたことを白状したのだ。
それらの詳細な効果なども説明されていくと、ライオネル殿下は平静を装いながらも、その手が震えだしていた。
自分が飲まされた恐ろしいエリクサーの効果に、きっと戸惑いと動揺を感じているのだろう。
可哀想に・・・・・・彼に罪はない。なにも悪いことはしていない。彼の記憶がないのは彼のせいではなく、カメーリア殿下と親しそうに見えたのも、あの錬金術師の作成したエリクサーのせい。
けれど、カメーリア殿下と仲良く寄り添うように歩く場面を目撃し、その衝撃と混乱に襲われた私には、大きなわだかまりが残った。ライオネル殿下への愛と信頼が一瞬揺らぎ、心が深い痛みで押しつぶされそうになったのだから、なかったことには到底できなかった。
ライオネル殿下とカメーリア殿下がソファに並んで座った時も、彼との未来を明るく描いていた私にとっては衝撃だった。私の名前を聞いてもわからず、それは誰かと聞かれた時の無力感と絶望は、言葉では表現できない。
思わず私を思い出してくださるように懇願したときも、彼はカメーリア殿下の横に座り続け、彼女の私を貶める言葉を注意することもなかった。エリクサーのせいだとわかった今も、その光景はあまりにも鮮明に私の頭に焼き付いてしまったのだった。
☆彡 ★彡
私はエレガントローズ学院で、辛い気持ちから逃れるように勉学に励んだ。週末ごとに帰っていたビニ公爵邸にも自然と足が遠のいていた。ビニ公爵邸にはライオネル殿下との思い出がありすぎるのよ。私は彼との思い出を持て余し、途方に暮れていた。
ぼんやりとしていても、ライオネル殿下のことを考えてしまう。思い出したくないのに、カメーリア殿下と寄り添っている姿が、何度も何度も脳内で再生された。
私は思い出したくない。彼のことを考えたくない。
私はエレガントローズ学院の庭園で、ひとり物思いにふけることが多くなった。そこは色とりどりのバラで埋め尽くされ、淡いピンクから真紅まで、さまざまな色の花が咲き誇り、甘い香りが漂っていた。バラの間にはフレンチリリーが植えられており、その優雅な紫色の花が庭園に彩りを加えていた。
アジュガという青紫色の花弁もバラの色と調和し、庭園の美しさを引き立てている。ライオネル殿下のことがなければ、気候も暖かく花々が溢れる今の季節は最高だと思う。
庭園の中央には噴水があり、水しぶきが太陽の光で輝いていた。私は噴水の周りに設置されたベンチに座り、ぼんやりとその美しい光景を眺めている。
そんなときであっても、不意にライオネル殿下とカメーリア殿下が微笑み合う場面がよみがえり、自分でも情けないと思うほど心が沈み込む。
「ソフィ様。ライオネル殿下の記憶が戻るエリクサーを開発しているところですので、どうかもう少しお待ちください」
グレイトニッキーはエレガントローズ学院でシェフ長を続けている。このように私が庭園でひとりでいると、慰めるように声をかけてくれる。私は彼に忘れたい場面を消し去ることはできるのかを聞きたくなった。
「私の頭からライオネル殿下の思い出だけを消し去ることは可能ですか?」
私は自分でもとんでもないことを口にしていると思った。彼の長い沈黙が私を後悔させた。
いくらなんでも言ってはいけない言葉だったかも。そう、反省しかけたところに彼の答えが返ってきた。
「可能ですよ。しかし、私が作るエリクサーで記憶を失ったら、もう二度とそれを取り戻すことはできません。それでもよろしいですか?」
私が忘れたいのはライオネル殿下が帰国した日の出来事や瞬間だ。でも、楽しかった思い出だけ残してもなんになるのだろう? ライオネル殿下が覚えていない二人の思い出に価値はあるのだろうか?
「私は何も言わない。私の口からは何も聞けない」
グレイトニッキーに命じられた男性は堅固な決意を心に秘め、表情にはその決意がはっきりと現れていた。彼の眉間には深いしわが刻まれ眼差しは鋭く、自分の信念を持ちグレイトニッキーに対する抵抗を示していたのよ。
唇は閉じられ固い線を描いていた。彼は言葉を一つも口にせず、沈黙を武器として使うつもりのようだった。その静寂は、彼の決意と不屈の意志を物語っていた。
この男性の表情と態度からは、どんなに圧力がかかろうとも、彼が自分の信念を曲げないことが明確に伝わってきた。これではきっと証言は得られない、そう思った。
「お前に黙秘権などないのだよ。拷問してでも、吐いてもらおうか?」
グレイトニッキーの脅しに反応した男性は、呪文のような言葉を唱えだす。その瞬間、彼は苦痛で顔を歪め大粒の汗を噴き出した。
いったい、なにが起こっているの?
「その拘束具は錬金術師が魔法を使用しようとする瞬間に、微弱な魔法エネルギーを感知するんだよ。すると、拘束具内部で反魔法シールドが生成されるのさ。わかるよな? お前はなにもできない。それどころか・・・・・・」
グレイトニッキーの説明では、反魔法シールドは錬金術師の心に向かって働きかけ、彼の過去の罪や過ちに対する深い罪悪感を増幅させるそうだ。過去の行いや罪に対する後悔や自責の念が錬金術師の心に広がり、自白への圧力となるという。
この仕組みにより、拘束された錬金術師は自己の罪悪感と魔法の封印に苦しむこととなり、罪を自白せざるを得ない状況が生み出されるという仕組みらしい。グレイトニッキーは、罪を犯した錬金術師用にこれを開発した、と胸を反らせた。
やがて、捕らえられた男が自分の名前を語り、罪を自白しだした。彼が作成したエリクサーは3種類。ここ最近の記憶を消すものと、記憶を差し替えるもの、強力に好感度を上げるもの、それらをカロライナ国王とカメーリア殿下に依頼されたことを白状したのだ。
それらの詳細な効果なども説明されていくと、ライオネル殿下は平静を装いながらも、その手が震えだしていた。
自分が飲まされた恐ろしいエリクサーの効果に、きっと戸惑いと動揺を感じているのだろう。
可哀想に・・・・・・彼に罪はない。なにも悪いことはしていない。彼の記憶がないのは彼のせいではなく、カメーリア殿下と親しそうに見えたのも、あの錬金術師の作成したエリクサーのせい。
けれど、カメーリア殿下と仲良く寄り添うように歩く場面を目撃し、その衝撃と混乱に襲われた私には、大きなわだかまりが残った。ライオネル殿下への愛と信頼が一瞬揺らぎ、心が深い痛みで押しつぶされそうになったのだから、なかったことには到底できなかった。
ライオネル殿下とカメーリア殿下がソファに並んで座った時も、彼との未来を明るく描いていた私にとっては衝撃だった。私の名前を聞いてもわからず、それは誰かと聞かれた時の無力感と絶望は、言葉では表現できない。
思わず私を思い出してくださるように懇願したときも、彼はカメーリア殿下の横に座り続け、彼女の私を貶める言葉を注意することもなかった。エリクサーのせいだとわかった今も、その光景はあまりにも鮮明に私の頭に焼き付いてしまったのだった。
☆彡 ★彡
私はエレガントローズ学院で、辛い気持ちから逃れるように勉学に励んだ。週末ごとに帰っていたビニ公爵邸にも自然と足が遠のいていた。ビニ公爵邸にはライオネル殿下との思い出がありすぎるのよ。私は彼との思い出を持て余し、途方に暮れていた。
ぼんやりとしていても、ライオネル殿下のことを考えてしまう。思い出したくないのに、カメーリア殿下と寄り添っている姿が、何度も何度も脳内で再生された。
私は思い出したくない。彼のことを考えたくない。
私はエレガントローズ学院の庭園で、ひとり物思いにふけることが多くなった。そこは色とりどりのバラで埋め尽くされ、淡いピンクから真紅まで、さまざまな色の花が咲き誇り、甘い香りが漂っていた。バラの間にはフレンチリリーが植えられており、その優雅な紫色の花が庭園に彩りを加えていた。
アジュガという青紫色の花弁もバラの色と調和し、庭園の美しさを引き立てている。ライオネル殿下のことがなければ、気候も暖かく花々が溢れる今の季節は最高だと思う。
庭園の中央には噴水があり、水しぶきが太陽の光で輝いていた。私は噴水の周りに設置されたベンチに座り、ぼんやりとその美しい光景を眺めている。
そんなときであっても、不意にライオネル殿下とカメーリア殿下が微笑み合う場面がよみがえり、自分でも情けないと思うほど心が沈み込む。
「ソフィ様。ライオネル殿下の記憶が戻るエリクサーを開発しているところですので、どうかもう少しお待ちください」
グレイトニッキーはエレガントローズ学院でシェフ長を続けている。このように私が庭園でひとりでいると、慰めるように声をかけてくれる。私は彼に忘れたい場面を消し去ることはできるのかを聞きたくなった。
「私の頭からライオネル殿下の思い出だけを消し去ることは可能ですか?」
私は自分でもとんでもないことを口にしていると思った。彼の長い沈黙が私を後悔させた。
いくらなんでも言ってはいけない言葉だったかも。そう、反省しかけたところに彼の答えが返ってきた。
「可能ですよ。しかし、私が作るエリクサーで記憶を失ったら、もう二度とそれを取り戻すことはできません。それでもよろしいですか?」
私が忘れたいのはライオネル殿下が帰国した日の出来事や瞬間だ。でも、楽しかった思い出だけ残してもなんになるのだろう? ライオネル殿下が覚えていない二人の思い出に価値はあるのだろうか?
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