(完結)家族にも婚約者にも愛されなかった私は・・・・・・従姉妹がそんなに大事ですか?

青空一夏

文字の大きさ
47 / 67

47

しおりを挟む
「ごめんなさい! 立ち聞きするつもりはなかったのですけれど、ソフィ様の姿を見つけてこちらに向かっていたら、お二人の会話が聞こえてしまいましたわ」

 いきなり謝ってきた声の主を振り返れば、そこにはマリエッタ様とジョディ様、アーリン様がいらっしゃった。

「まぁ、とんでもない会話を聞かれてしまいましたね。ニッキーシェフ長は錬金術師で、不思議な奇跡を起こすエリクサーを作成することができますのよ。私はライオネル殿下の記憶を持っているのが辛いのですわ」

 私の話を聞いて三人とも顔を見合わせた。今回のライオネル殿下の事件は、メドフォード国民が憤った大事件だったから、彼女達もことの経緯は知っていた。

「もうすぐ夏至祭りですわよね。ビニ公爵邸にお帰りにならないなら、私達四人でお祭りにいきませんこと?」

 私に合わせるように、最近は週末も屋敷に戻らないマリエッタ様たちに誘われた。

「今回の夏至祭りは私たち皆、屋敷に戻りませんわ。理由はね、お母様と喧嘩してしまっただけですのよ」

 それは彼女達の優しい嘘だ。マリエッタ様たちが家族と良好な関係であることは、週末前に届くたくさんの特産物や新しいドレスや手紙でわかる。この三人は私を心底心配してくれる大切な友人になっていた。



☆彡 ★彡



 夏至祭りは毎年6月21日に開催され、夏の始まりを祝う壮麗な祭りになっていた。この特別な日には、王都の中心にある王宮の前に壮大な広場が設けられ、祭りのための飾り付けと装飾が数週間前から進められる。
 春祭りと違う点は飾り付けの基調となる色がオレンジや赤なことだ。アーチや噴水周辺にバラのつるを絡ませるのだけれど、その色も深紅やオレンジ色のバラになる。

 ラベンダーが小道や歩道に植えられて、その青紫色の花が風に揺れ、訪れる人々を魅了した。レマチスは広場の噴水周辺に絡まり、美しい花のカーペットを形成していた。その花弁は様々な色に彩られ、祭りの色鮮やかさを増していく。アジサイは庭園に植えられ、青やピンクの大きな花が咲き誇り、その美しさを鑑賞できた。
 広場の中央には大きな太陽の模型が設置され、オレンジ色の旗や大きなヒマワリの花が並ぶ。大輪の黄色い花は祭りの象徴で、太陽を称える意味も込められている。

 さらに、会場から聞こえる楽しい音楽や歓声、お祭りの色とりどりの屋台が、私たちを待ち構えていた。私たちは笑顔で手をつなぎ、屋台めぐりを始めた。
 最初に目に入ったのは、キラキラ光る宝石や、手作りアクセサリーが並ぶ屋台だった。試着してみたり、新しいアクセサリーを見つけたりする楽しみは、私たちを幸せな気分にさせた。

 食べ物の屋台も多く、焼きたてのパンやケーキ、フルーツ、ソーセージ、クレープ、アイスクリーム、新鮮なジュース、ワイン、そして夏至祭りの名物であるヒマワリの種から作られるスナックなどが提供されていた。人々はこれらの美味しい料理や飲み物を楽しむために列を作り、食べ物と会話を楽しんでいた。

 友人と来る夏至祭りはなんの気兼ねもない。おしゃべりをしながら食べたい物を食べて、少しぐらいワンピースに食べ物がこぼれても気にしないで笑っていられた。
 
 けれど、気がつけば周りはカップルだらけで、私達はカップルに囲まれながらアイスクリームを食べていた。前のカップルの言い争う声や、横のカップルの男性の不機嫌そうな声などを聞いていると、ついライオネル殿下と比べてしまう。

 ジュースをこぼしてワンピースを汚した女性に、冷たい言葉を投げつける男性もいれば、自分の話題ばかりを話している男性もいた。
 私はまわりにいる恋人同士と思われるカップルの会話に耳を澄ます。すると、ライオネル殿下と同じような気遣いを見せる男性が、とても少ないことに気づいた。

「どうしたのですか? ソフィ様」

 マリエッタ様が、急に黙ってしまった私を、心配して話しかけた。ジョディ様もアーリン様も、私の顔を覗き込み首を傾げている。私はまわりの男性たちが、あまりにライオネル殿下と違うので、驚いたことを打ち明けた。

 ライオネル殿下は私が失敗をしても、少しもあざ笑ったり機嫌が悪くなることはなかった。それどころか、自分も失敗をしたように見せかけて、私の心を軽くしてくださった。
 いつも気にかけてくださって、楽しませてくださった。朗らかで思いやりがあって・・・・・・彼の長所を言い始めたら止まらない。

 私はライオネル殿下に優しくされることに慣れすぎていた。思いやりとたくさんの愛情を注がれることが、当たり前になっていた。だから、自分が望んだ行動をしてくれなかった彼に、私は失望したり悲しんだりしていたのよ。彼はおかしなエリクサーを飲まされて、命の危険だってあったかもしれないのに! 
 
「私、ライオネル殿下に会いに行くわ」

 私は自分自身を励ますようにそうつぶやいた。

「会いに行かなくても、ライオネル殿下はソフィ様の後ろにいますよ」

 マリエッタ様はそう言って、私に振り返るように促したのだった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【完結】「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

処理中です...