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カイド様とクレオパトラ様の件をザヘリー女侯爵様と王妃殿下に報告した4ヶ月後、クレオパトラ様の妊娠が確認されました。なんと、おめでたいことでしょうか。
「速やかに離婚、いや結婚無効の申し立てをしなさい。白い結婚として認めます」
王妃殿下の鶴のひと声で私は結婚をしていなかったことになり、カイド様との契約は終わりました。契約妻を円満卒業ができて、とても嬉しい私なのでした。
「カイド様はあの健気なアイビー様を抱きもせず、クレオパトラ様を妊娠させたそうですわ」
「白い結婚だったのにも拘わらず、あれほど夫思いだった妻をないがしろにして・・・・・・許せませんわね」
「全くですわ! あの二人は社交界から追放ですわ」
夜会やお茶会のたびに、そのようなお話を耳にします。穏やかではありませんね。私は今、王妃殿下主催のお茶会に参加しているところです。
「あのぅーー。私はむしろ喜んでおります。私ではお役に立てなかったことを、クレオパトラ様が見事してくださいました。お生れになる赤ちゃんは、とても美しいと思いますわ。追放などとおっしゃらないでくださいませ。私は応援したい気持ちでいっぱいです」
高位貴族の夫人がたは、目を丸くして驚きの声をおあげになるのでした。
「まぁーー。アイビー様は素晴らしい寛容な心をお持ちなのですね? ところで、私にはまだ結婚していない息子がいますのよ? 年下の男性はお嫌かしら?」
「あら、それなら私の三男もまだ結婚しておりません!」
「まぁ、なんなら私の甥はいかがでしょう?」
そのようなお言葉は嬉しいのですが、またすぐに結婚という気持ちにはなれません。
「アイビーは、もう自由ですよ。仕事を持ち、自分で生活できる自立した女性です。家格や爵位に拘らず、本当に好きな男性と結婚すればよろしいわ。ですが、トラビス第三王子のことも考えてみてちょうだい」
王妃様はにこにこして、そうおっしゃいました。確かに、トラビス王子殿下はカイド様とは違って、それほど麗しくはありません。これは私にとっては誉め言葉ですよ! 無駄にキラキラしていないところが大変好ましいです。
☆彡★彡☆彡それから1年後の夜会ーー
カイド様はザヘリー公爵家を追い出され、クレオパトラ様と平民になりましたが元気です。文官のお仕事を辞めて吟遊詩人になったカイド様は、恋の詩や劇の脚本を書くようになりました。
その『すれ違いの悲恋の物語』は、世界的に大ヒットし、恋に憧れる女性の涙を誘ったのです。あぁ、カイド様がいそいそとこちらにやって来ますね。
「やぁ、会う度に綺麗になるね! アイビーは素晴らしい」
カイド様はこのように私の側にきては褒めちぎるのですが、元の妻との良好な関係をアピールしたいのでしょうね。私も協力しなければいけませんわね。
「まぁーー。カイド様も相変わらず素敵ですわ。あの劇は、恋人達のバイブルと呼ばれていますわ。大変、素晴らしいと思います!」
「あれは、私とアイビーの恋物語だよ。想い合いながらも別れざるを得なかった私達の真実の愛は、あの劇になり恋する迷える子羊達の共感をよんだ! 私達の愛こそ、本物だった証拠だよね」
「・・・・・・おほほほ・・・・・・?」
私達の愛? そもそも愛なんてあったかしら? 私は、契約妻でしたよ? まぁ、ここで否定することもありませんし、そもそも色恋沙汰って勘違いの連続から起こるのかもしれませんよね。私はカイド様の言葉を笑って誤魔化すと、にこやかに駆け寄ってくるクレオパトラ様に声をかけます。
「クレオパトラ様! 元気だったぁ? ロゼッタちゃん、本当に可愛いわーー。また遊びに行かせていただくわね」
私はカイド様がお留守の時に、イボちゃんとクレオパトラ様の家をたまに訪ねているのです。ロゼッタちゃんはもちろんクレオパトラ様とカイド様の娘で、とっても綺麗で愛らしいです。私とイボちゃんは、ロゼッタちゃんの大ファンなのです。イボちゃんは、某伯爵家の長男と結婚して、今では堅実な奥様です。
「えぇ。アイビー様に懐いて帰った途端に泣き出して困ったわ。来週はお花見に一緒に行きませんこと? イボちゃんも誘いましょうよ」
「ほんとに? 楽しそうね! イボちゃんも行くなら、薬草汁も持って行くわね! そういえばアイリーン様は、すっかりスターね? まさか、カイド様の舞台の主役をつとめるなんて!」
「そうねぇーー。アイリーン様は良いように解釈する天才だから、あの劇のヒロインは、自分がモデルだと思っているみたい。あんなの、ただの作り話よね?」
「えぇ。もちろん、作り話ですわ! 真実の愛はクレオパトラ様とカイド様に決まっているじゃありませんの? 人は実らなかった恋を美化するだけですわ」
私は、クレオパトラ様ともイボちゃんとも親友と呼べる仲になり、アイリーン様とも仲良しです。エストレラはずっと私の護衛をするつもりだと言うし、カイド様に感謝すべきは、友人がたくさんできたことかもしれないです。
クレオパトラ様と話し込んでいるうちに、イボちゃんもアイリーン様もこちらにやって来ました。ここで、貴婦人がたの見物がはじまります。私達の会話はカイド様の劇より楽しいのだそうです。
「イボちゃぁん、今日は顔色もいいわね! やっぱり、薬草汁って効くでしょう」
「う、うん、だからもう薬草汁は卒業でいいかと思うのよねぇ? これからはオレンジジュースにしようと思うぅ」
「まぁーー。その油断がいけないのよ! ここが肝心ですわ! もっと量を増やし一日に3回、分けて飲めば・・・・・・」
「あ、アイビーちゃん! あのね、だったら今まで通りのほうがマシかも・・・・・・うん、量は増やさないで」
「あら、そう? 私は、あれを食後にいつも飲んでいるわよ? 最近は豆乳と蜂蜜も入れて飲んでいるわ」
「へ? なんで、自分だけずっこい飲み方をなさるのぉ? 酷いわぁーー。イボちゃんを虐めたわね? クレオパトラ様ぁーー。アイビーちゃんがイボちゃんを虐めるぅーー」
このすぐに「……虐めるーー」という癖はなかなかなおらないようです。でも、見てて面白いから問題ありませんね。私たちを興味津々に見ていた方々も、一斉に笑っていましたから。
「はい、はい。くっだんない話はここまでよ! 聞いてよ! 来週の舞台で、なんと世界的に有名な大スターのハロルド様が相手役をつとめるの。ロマンスの予感しない? アイリーンとハロルド・美男美女のビッグカップルの誕生なぁーーんて、騒がれたら困るわぁーー」
途中から会話に加わったのは、もちろんアイリーン様で、早速自分の舞台の宣伝を始めました。
「美男美女のビッグカップルなら、私、クレオパトラとカイド様の他にはいませんわ!」
クレオパトラ様は美女という言葉に敏感です。私としてはクレオパトラ様もアイリーン様も美女なので、どっちが上とか下とかないです。
「アイビーちゃん、あの薬草にバナナを入れてみて。甘くしたらもっと飲めるかもぉーー」
「え? バナナ? 苺の方がイボちゃんにあってますわ・・・・・・でも甘酸っぱい味と苦い味が融合するとミラクルなお味に・・・・・・」
「『ミラクルパンチなイボちゃんドリンク』として売り出すっていいかもぉ。あぁ、劇場に置いてもらって売るのはどうかなぁ?」
「は? やめてよ! 私が主役をつとめる美しい悲恋の物語を、くっさい薬草汁飲みながら見られたのじゃぁ、舞台の品格が落ちますわぁー!」
周りがどっと笑いだし、私はいつのまにか社交界の中心になっていたのでした。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※前作では、ここでおしまいだったんですけど、あと三話ぐらいお話を続けて終わります。
「速やかに離婚、いや結婚無効の申し立てをしなさい。白い結婚として認めます」
王妃殿下の鶴のひと声で私は結婚をしていなかったことになり、カイド様との契約は終わりました。契約妻を円満卒業ができて、とても嬉しい私なのでした。
「カイド様はあの健気なアイビー様を抱きもせず、クレオパトラ様を妊娠させたそうですわ」
「白い結婚だったのにも拘わらず、あれほど夫思いだった妻をないがしろにして・・・・・・許せませんわね」
「全くですわ! あの二人は社交界から追放ですわ」
夜会やお茶会のたびに、そのようなお話を耳にします。穏やかではありませんね。私は今、王妃殿下主催のお茶会に参加しているところです。
「あのぅーー。私はむしろ喜んでおります。私ではお役に立てなかったことを、クレオパトラ様が見事してくださいました。お生れになる赤ちゃんは、とても美しいと思いますわ。追放などとおっしゃらないでくださいませ。私は応援したい気持ちでいっぱいです」
高位貴族の夫人がたは、目を丸くして驚きの声をおあげになるのでした。
「まぁーー。アイビー様は素晴らしい寛容な心をお持ちなのですね? ところで、私にはまだ結婚していない息子がいますのよ? 年下の男性はお嫌かしら?」
「あら、それなら私の三男もまだ結婚しておりません!」
「まぁ、なんなら私の甥はいかがでしょう?」
そのようなお言葉は嬉しいのですが、またすぐに結婚という気持ちにはなれません。
「アイビーは、もう自由ですよ。仕事を持ち、自分で生活できる自立した女性です。家格や爵位に拘らず、本当に好きな男性と結婚すればよろしいわ。ですが、トラビス第三王子のことも考えてみてちょうだい」
王妃様はにこにこして、そうおっしゃいました。確かに、トラビス王子殿下はカイド様とは違って、それほど麗しくはありません。これは私にとっては誉め言葉ですよ! 無駄にキラキラしていないところが大変好ましいです。
☆彡★彡☆彡それから1年後の夜会ーー
カイド様はザヘリー公爵家を追い出され、クレオパトラ様と平民になりましたが元気です。文官のお仕事を辞めて吟遊詩人になったカイド様は、恋の詩や劇の脚本を書くようになりました。
その『すれ違いの悲恋の物語』は、世界的に大ヒットし、恋に憧れる女性の涙を誘ったのです。あぁ、カイド様がいそいそとこちらにやって来ますね。
「やぁ、会う度に綺麗になるね! アイビーは素晴らしい」
カイド様はこのように私の側にきては褒めちぎるのですが、元の妻との良好な関係をアピールしたいのでしょうね。私も協力しなければいけませんわね。
「まぁーー。カイド様も相変わらず素敵ですわ。あの劇は、恋人達のバイブルと呼ばれていますわ。大変、素晴らしいと思います!」
「あれは、私とアイビーの恋物語だよ。想い合いながらも別れざるを得なかった私達の真実の愛は、あの劇になり恋する迷える子羊達の共感をよんだ! 私達の愛こそ、本物だった証拠だよね」
「・・・・・・おほほほ・・・・・・?」
私達の愛? そもそも愛なんてあったかしら? 私は、契約妻でしたよ? まぁ、ここで否定することもありませんし、そもそも色恋沙汰って勘違いの連続から起こるのかもしれませんよね。私はカイド様の言葉を笑って誤魔化すと、にこやかに駆け寄ってくるクレオパトラ様に声をかけます。
「クレオパトラ様! 元気だったぁ? ロゼッタちゃん、本当に可愛いわーー。また遊びに行かせていただくわね」
私はカイド様がお留守の時に、イボちゃんとクレオパトラ様の家をたまに訪ねているのです。ロゼッタちゃんはもちろんクレオパトラ様とカイド様の娘で、とっても綺麗で愛らしいです。私とイボちゃんは、ロゼッタちゃんの大ファンなのです。イボちゃんは、某伯爵家の長男と結婚して、今では堅実な奥様です。
「えぇ。アイビー様に懐いて帰った途端に泣き出して困ったわ。来週はお花見に一緒に行きませんこと? イボちゃんも誘いましょうよ」
「ほんとに? 楽しそうね! イボちゃんも行くなら、薬草汁も持って行くわね! そういえばアイリーン様は、すっかりスターね? まさか、カイド様の舞台の主役をつとめるなんて!」
「そうねぇーー。アイリーン様は良いように解釈する天才だから、あの劇のヒロインは、自分がモデルだと思っているみたい。あんなの、ただの作り話よね?」
「えぇ。もちろん、作り話ですわ! 真実の愛はクレオパトラ様とカイド様に決まっているじゃありませんの? 人は実らなかった恋を美化するだけですわ」
私は、クレオパトラ様ともイボちゃんとも親友と呼べる仲になり、アイリーン様とも仲良しです。エストレラはずっと私の護衛をするつもりだと言うし、カイド様に感謝すべきは、友人がたくさんできたことかもしれないです。
クレオパトラ様と話し込んでいるうちに、イボちゃんもアイリーン様もこちらにやって来ました。ここで、貴婦人がたの見物がはじまります。私達の会話はカイド様の劇より楽しいのだそうです。
「イボちゃぁん、今日は顔色もいいわね! やっぱり、薬草汁って効くでしょう」
「う、うん、だからもう薬草汁は卒業でいいかと思うのよねぇ? これからはオレンジジュースにしようと思うぅ」
「まぁーー。その油断がいけないのよ! ここが肝心ですわ! もっと量を増やし一日に3回、分けて飲めば・・・・・・」
「あ、アイビーちゃん! あのね、だったら今まで通りのほうがマシかも・・・・・・うん、量は増やさないで」
「あら、そう? 私は、あれを食後にいつも飲んでいるわよ? 最近は豆乳と蜂蜜も入れて飲んでいるわ」
「へ? なんで、自分だけずっこい飲み方をなさるのぉ? 酷いわぁーー。イボちゃんを虐めたわね? クレオパトラ様ぁーー。アイビーちゃんがイボちゃんを虐めるぅーー」
このすぐに「……虐めるーー」という癖はなかなかなおらないようです。でも、見てて面白いから問題ありませんね。私たちを興味津々に見ていた方々も、一斉に笑っていましたから。
「はい、はい。くっだんない話はここまでよ! 聞いてよ! 来週の舞台で、なんと世界的に有名な大スターのハロルド様が相手役をつとめるの。ロマンスの予感しない? アイリーンとハロルド・美男美女のビッグカップルの誕生なぁーーんて、騒がれたら困るわぁーー」
途中から会話に加わったのは、もちろんアイリーン様で、早速自分の舞台の宣伝を始めました。
「美男美女のビッグカップルなら、私、クレオパトラとカイド様の他にはいませんわ!」
クレオパトラ様は美女という言葉に敏感です。私としてはクレオパトラ様もアイリーン様も美女なので、どっちが上とか下とかないです。
「アイビーちゃん、あの薬草にバナナを入れてみて。甘くしたらもっと飲めるかもぉーー」
「え? バナナ? 苺の方がイボちゃんにあってますわ・・・・・・でも甘酸っぱい味と苦い味が融合するとミラクルなお味に・・・・・・」
「『ミラクルパンチなイボちゃんドリンク』として売り出すっていいかもぉ。あぁ、劇場に置いてもらって売るのはどうかなぁ?」
「は? やめてよ! 私が主役をつとめる美しい悲恋の物語を、くっさい薬草汁飲みながら見られたのじゃぁ、舞台の品格が落ちますわぁー!」
周りがどっと笑いだし、私はいつのまにか社交界の中心になっていたのでした。
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