19 / 23
19 クレオパトラが勝者?
しおりを挟む
あの夜会以来、とてもカイド様が気持ち悪いです。ベタベタ肩や腰に手をまわしてきますし、記念日でもないのに花束まで買って来てくれます。それに加えて、愛しのアイビーとか麗しのアイビーとか・・・・・・枕詞をつけての呼びかけ! うんざりしますね。・・・・・・これは、嫌がらせですわ!
あの事件以来、恋人が減ったので八つ当たりでしょうね? きっと、そうに決まっています。なんて、心根の腐った方なのでしょうか? やっぱり、綺麗な男にはろくな方がいませんね?
今も私に無駄に艶っぽく微笑みかけて、ソファではなくテーブルに座り、長い足をあり得ない角度で組みかえております。私の目の前のテーブルに座って刺繍の邪魔をするなんて、実家の猫みたいです。
「愛しのアイビー! それは、私のハンカチの刺繍だな? なんて私は果報者なのだ! 神よ、感謝します! これほど優しい妻を私に与えてくださり・・・・・・」
カイド様って、はじめはもっとまともな方だと思っていたのに、どんどんイメージが崩壊していきます。もとからこんな性格だったのか、途中からポッと目覚めた新たな人格なのかはわからないですが、ますます好きになれません。
このバイトはよく考えてお引き受けするべきだったかもしれないと思い、後悔しはじめておりました。毎日のように耳元でささやかれる愛の言葉に、私のストレスはマックスです。
「アイビー! 大好きだ! 愛してる! いいんだ、なにも言わないで。君の気持ちはわかっているよ。喜びに打ち震え、心は天にも昇る気持ち・・・・・・そうだろう?」
そっと、私の頬にキスをして抱きしめられると、甘い柑橘系とムスクの混ざり合ったコロンの香りに、むせそうになります。男性用のコロンって、わざとらしい香りが多くて苦手です。
天にも昇る気持? そうですね。ある意味、卒倒して気絶しかけましたので、あのイボちゃん用薬草汁を飲んで正気を取り戻しました。あの薬草汁はやはり万能ですね。
この気持ち悪いカイド様の行動を誰か直してくれないでしょうか? あの恋人達のどなたかが、カイド様の心をわしづかみにしてくだされば良いのに・・・・・・私はカイド様の心、いらないです。
☆彡★彡☆彡
私は、王妃殿下のお茶のお相手をしています。王妃様は隣国ラピス王国の第三王女殿下でした。つまり、女王陛下の妹君なのです。ラピス王国はこのオランジ王国の3倍の広い領土を持ち豊かな国です。
「アイビーは感心だわ。あんなに不実な夫を愛し続けて尽くしているなんて、なかなかできないことよ」
王妃殿下はとても褒めてくださるのですが、真実がまるで違っていることに私は良心の呵責を感じております。
「お恥ずかしいことに、私の妹の学費や実家の父母の生活費をカイド様に援助していただいております。これは感謝しており、ありがたいことなのです。ですから、私はカイド様がなにをなさろうと大事にすると決めています」
「そういうことなら、アイビーに私が自由をプレゼントしてあげましょう」
王妃殿下は私の顔を楽し気に見つめて、そうおっしゃったのでした。
翌日、王家の使者がザヘリー公爵家に来訪しました。
「『これより、アイビーはラピス王国のルピナス女公爵の養女になり、アイビー・ルピナス公爵令嬢となれ! そして、我が国の王女達の家庭教師となれ! 給金は文官と同じとし、働きに応じてボーナスも支給される!』以上が王妃殿下からのありがたいお言葉である!」
王妃殿下からの書簡が読み上げられ、ザヘリー女公爵夫妻は気絶しそうになっております。
「アイビーちゃんはザヘリー家の嫁よ? これは・・・・・・カイドのせいね? アイビーちゃん! 甥を全部集めるから好きな人を選んでちょうだい! カイドが嫌ならいくらでも替えて良いのよ?」
ザヘリー女公爵様は甥を集め出し、王妃殿下は第三王子殿下と私をデートさせようとするのでした。
これ、どーーなってるの? 今までモテなかった私が急にモテ期?
王宮に出仕して3人の王女殿下のお勉強をみる傍ら王妃殿下ともお茶をします。妹達も招かれるようになり、王妃殿下から可愛がられております。もう、すっかり学費の心配はなくなりました。
カイド様・・・・・・もういらなくなりましたねぇ。私は冷たい人間でしょうか? もともと契約ですから破棄してもかまわないでしょうか?
☆彡★彡☆彡
まんまるな満月が浮かぶ夜、私はカイド様に提案しました。
「カイド様! 私達、離婚しませんこと?」
「え? もしかして、クレオパトラのことがばれたの? あれは媚薬で・・・・・・」
ん? 媚薬って? あら、まぁ・・・・・・勝者はクレオパトラ様でしたか! アイリーン様とのお子様を見たかったのに、なんて残念なのでしょうか。私はがっかりしてしまいました。
「ごめんよ・・・・・・アイビーを泣かせて・・・・・・あぁ、私はなんて罪な男だ! 二度と罠にはかからない。約束する」
(二度あることは三度も四度もありますわ。このような男性はいりません! いざ、離婚ですよっ)
あの事件以来、恋人が減ったので八つ当たりでしょうね? きっと、そうに決まっています。なんて、心根の腐った方なのでしょうか? やっぱり、綺麗な男にはろくな方がいませんね?
今も私に無駄に艶っぽく微笑みかけて、ソファではなくテーブルに座り、長い足をあり得ない角度で組みかえております。私の目の前のテーブルに座って刺繍の邪魔をするなんて、実家の猫みたいです。
「愛しのアイビー! それは、私のハンカチの刺繍だな? なんて私は果報者なのだ! 神よ、感謝します! これほど優しい妻を私に与えてくださり・・・・・・」
カイド様って、はじめはもっとまともな方だと思っていたのに、どんどんイメージが崩壊していきます。もとからこんな性格だったのか、途中からポッと目覚めた新たな人格なのかはわからないですが、ますます好きになれません。
このバイトはよく考えてお引き受けするべきだったかもしれないと思い、後悔しはじめておりました。毎日のように耳元でささやかれる愛の言葉に、私のストレスはマックスです。
「アイビー! 大好きだ! 愛してる! いいんだ、なにも言わないで。君の気持ちはわかっているよ。喜びに打ち震え、心は天にも昇る気持ち・・・・・・そうだろう?」
そっと、私の頬にキスをして抱きしめられると、甘い柑橘系とムスクの混ざり合ったコロンの香りに、むせそうになります。男性用のコロンって、わざとらしい香りが多くて苦手です。
天にも昇る気持? そうですね。ある意味、卒倒して気絶しかけましたので、あのイボちゃん用薬草汁を飲んで正気を取り戻しました。あの薬草汁はやはり万能ですね。
この気持ち悪いカイド様の行動を誰か直してくれないでしょうか? あの恋人達のどなたかが、カイド様の心をわしづかみにしてくだされば良いのに・・・・・・私はカイド様の心、いらないです。
☆彡★彡☆彡
私は、王妃殿下のお茶のお相手をしています。王妃様は隣国ラピス王国の第三王女殿下でした。つまり、女王陛下の妹君なのです。ラピス王国はこのオランジ王国の3倍の広い領土を持ち豊かな国です。
「アイビーは感心だわ。あんなに不実な夫を愛し続けて尽くしているなんて、なかなかできないことよ」
王妃殿下はとても褒めてくださるのですが、真実がまるで違っていることに私は良心の呵責を感じております。
「お恥ずかしいことに、私の妹の学費や実家の父母の生活費をカイド様に援助していただいております。これは感謝しており、ありがたいことなのです。ですから、私はカイド様がなにをなさろうと大事にすると決めています」
「そういうことなら、アイビーに私が自由をプレゼントしてあげましょう」
王妃殿下は私の顔を楽し気に見つめて、そうおっしゃったのでした。
翌日、王家の使者がザヘリー公爵家に来訪しました。
「『これより、アイビーはラピス王国のルピナス女公爵の養女になり、アイビー・ルピナス公爵令嬢となれ! そして、我が国の王女達の家庭教師となれ! 給金は文官と同じとし、働きに応じてボーナスも支給される!』以上が王妃殿下からのありがたいお言葉である!」
王妃殿下からの書簡が読み上げられ、ザヘリー女公爵夫妻は気絶しそうになっております。
「アイビーちゃんはザヘリー家の嫁よ? これは・・・・・・カイドのせいね? アイビーちゃん! 甥を全部集めるから好きな人を選んでちょうだい! カイドが嫌ならいくらでも替えて良いのよ?」
ザヘリー女公爵様は甥を集め出し、王妃殿下は第三王子殿下と私をデートさせようとするのでした。
これ、どーーなってるの? 今までモテなかった私が急にモテ期?
王宮に出仕して3人の王女殿下のお勉強をみる傍ら王妃殿下ともお茶をします。妹達も招かれるようになり、王妃殿下から可愛がられております。もう、すっかり学費の心配はなくなりました。
カイド様・・・・・・もういらなくなりましたねぇ。私は冷たい人間でしょうか? もともと契約ですから破棄してもかまわないでしょうか?
☆彡★彡☆彡
まんまるな満月が浮かぶ夜、私はカイド様に提案しました。
「カイド様! 私達、離婚しませんこと?」
「え? もしかして、クレオパトラのことがばれたの? あれは媚薬で・・・・・・」
ん? 媚薬って? あら、まぁ・・・・・・勝者はクレオパトラ様でしたか! アイリーン様とのお子様を見たかったのに、なんて残念なのでしょうか。私はがっかりしてしまいました。
「ごめんよ・・・・・・アイビーを泣かせて・・・・・・あぁ、私はなんて罪な男だ! 二度と罠にはかからない。約束する」
(二度あることは三度も四度もありますわ。このような男性はいりません! いざ、離婚ですよっ)
167
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜
涙乃(るの)
恋愛
これは王命です……抱いてください
「アベル様……これは王命です。触れるのも嫌かもしれませんが、最後の願いなのです……私を、抱いてください」
呪いの力を宿した瞳を持って生まれたサラは、王家管轄の施設で閉じ込められるように暮らしていた。
その瞳を見たものは、命を落とす。サラの乳母も母も、命を落としていた。
希望のもてない人生を送っていたサラに、唯一普通に接してくれる騎士アベル。
アベルに恋したサラは、死ぬ前の最期の願いとして、アベルと一夜を共にしたいと陛下に願いでる。
自分勝手な願いに罪悪感を抱くサラ。
そんなサラのことを複雑な心境で見つめるアベル。
アベルはサラの願いを聞き届けるが、サラには死刑宣告が……
切ない→ハッピーエンドです
※大人版はムーンライトノベルズ様にも投稿しています
後日談追加しました
もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~
岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。
「これからは自由に生きます」
そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、
「勝手にしろ」
と突き放した。
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる
きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。
穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。
——あの日までは。
突如として王都を揺るがした
「王太子サフィル、重傷」の報せ。
駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる