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18 人の男にはもう手を出さない!(イボンヌ視点)
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あたしはお兄様やカイド様のように麗しい男性が大好きで、美しくない男でなければ人間じゃないと思っている。
この世は見た目が勝負だから、あたしはとても儚げな天然美少女を演じる。
もともと黒髪で一重の細い目のあたしは、ピンクに髪を染めまぶたに透明テープを貼って、二重ぱっちりお目々を演出している。朝のメイクはとても時間がかかるし、人前でお化粧を落とせないのが悩みよ。
でも、この革新的なお化粧方法と、可愛らしく見える動作や表情を研究し尽くして今の奇跡のかわいさがある。これで数々のイケメン男性を夢中にさせてきたが、カイド様もそのなかの一人にすぎない。
妻がいながら4人も恋人がいる絶世の美男子を虜にしたらいい気分だろうな、って思った。だから、『つきあってくれないと悲しくて死んじゃうかもぉーー』と甘えながらすり寄ってカイド様に近づいた。男なんて単純だから天然美少女には冷たくできないのを最大限に利用したのよ。
みんな蹴散らしてカイド様を手に入れることができる自信があった。だって、カイド様の奥方は冴えないお嫁に行き遅れたガリガリおばさんらしいし(あたしが調べた情報によると)、他の恋人もみんなあたしよりおばさんだもん。恋愛において重要なのは若さと可愛さよ。だからあたしは楽勝だねっ。
ところが夜会で見かけたカイド様の奥方は、想像していたよりもずっと綺麗だった。カイド様が『良くも悪くも普通の妻』と言ったのは大嘘だ。
上品な優しい顔立ちは整っていて、細身だがバストや腰の線は理想的な曲線を描いていた。全然、ガリガリじゃないんだけど・・・・・・でも、あたしのほうが可愛さにおいては勝っているわ!
この百合のような凛とした奥様に天然キャラをぶつけ、精神的に追い詰めてやる! ところが、この奥方のアイビーちゃんは全然動じずあたしを演技だと決めつけた。お疲れ様とまで言われ・・・・・・あ、私は世界の中心にいる女王様じゃなくてただの苺って言われたんだっけ・・・・・・
むかついたから倒れてやろうとしたら、あの薬草の煮汁をどんぶり一杯も強引に飲ませたのよぉーー! あたしはその時に、本当の天然女の恐ろしさを知ったわ。天然って滅多にお目にかかれない稀少な存在だから、その威力の凄まじさを味わった者はそうはいないはずよ?
もう絶対にカイド様には関わらないと決めたのに、アイビーちゃんは友人のあたしに協力すると言い張った。そして今日も午後一時ぴったりに天然はやって来た。
「イボちゃぁん! 身体の具合はいかが? 今日の薬草汁は特別に濃いめにしたわ。さぁ、お口を開けて?」
(絶対、嫌がらせでしょう? この女も天然のふりだよね?)
「絶対、飲まないわよ! あたしを虐めてるのはわかってるんだからね? わざとでしょう? こんな苦くてどろどろの泥臭い汁なんて、身体にいいのはわかっていても飲めるわけないもん。あんただって、飲めないくせに!」
あたしの言葉にアイビーちゃんは笑いながらその汁をごくごく飲んだ。
「これって慣れると癖になるお味ですのよ? エルナン男爵家では高いお薬が買えなかったので、なんでもこの薬草で治していました」
(嘘・・・・・・嫌がらせじゃないんだ・・・・・・だったら、なんでよ?)
「私達、お友達ではありませんか? イボちゃんから言ってきたのでしょう? 友人は大事にすることに決めております」
キラキラした瞳でにっこりした顔は・・・・・・悪意のかけらも感じない。あぁ、なんでこんなのに絡みに行ったのだろう。今日もこの薬草汁をたっぷり飲まされて・・・・・・帰りにはまたくるわね、と言いながら爽やかに去って行く。
あたしはこの時に、恋人や妻のいる男性には二度と近づかないことを固く心に誓ったのだった。金輪際カイド様には近づかないことはもちろん、人の男には手を出さないわっ!
この世は見た目が勝負だから、あたしはとても儚げな天然美少女を演じる。
もともと黒髪で一重の細い目のあたしは、ピンクに髪を染めまぶたに透明テープを貼って、二重ぱっちりお目々を演出している。朝のメイクはとても時間がかかるし、人前でお化粧を落とせないのが悩みよ。
でも、この革新的なお化粧方法と、可愛らしく見える動作や表情を研究し尽くして今の奇跡のかわいさがある。これで数々のイケメン男性を夢中にさせてきたが、カイド様もそのなかの一人にすぎない。
妻がいながら4人も恋人がいる絶世の美男子を虜にしたらいい気分だろうな、って思った。だから、『つきあってくれないと悲しくて死んじゃうかもぉーー』と甘えながらすり寄ってカイド様に近づいた。男なんて単純だから天然美少女には冷たくできないのを最大限に利用したのよ。
みんな蹴散らしてカイド様を手に入れることができる自信があった。だって、カイド様の奥方は冴えないお嫁に行き遅れたガリガリおばさんらしいし(あたしが調べた情報によると)、他の恋人もみんなあたしよりおばさんだもん。恋愛において重要なのは若さと可愛さよ。だからあたしは楽勝だねっ。
ところが夜会で見かけたカイド様の奥方は、想像していたよりもずっと綺麗だった。カイド様が『良くも悪くも普通の妻』と言ったのは大嘘だ。
上品な優しい顔立ちは整っていて、細身だがバストや腰の線は理想的な曲線を描いていた。全然、ガリガリじゃないんだけど・・・・・・でも、あたしのほうが可愛さにおいては勝っているわ!
この百合のような凛とした奥様に天然キャラをぶつけ、精神的に追い詰めてやる! ところが、この奥方のアイビーちゃんは全然動じずあたしを演技だと決めつけた。お疲れ様とまで言われ・・・・・・あ、私は世界の中心にいる女王様じゃなくてただの苺って言われたんだっけ・・・・・・
むかついたから倒れてやろうとしたら、あの薬草の煮汁をどんぶり一杯も強引に飲ませたのよぉーー! あたしはその時に、本当の天然女の恐ろしさを知ったわ。天然って滅多にお目にかかれない稀少な存在だから、その威力の凄まじさを味わった者はそうはいないはずよ?
もう絶対にカイド様には関わらないと決めたのに、アイビーちゃんは友人のあたしに協力すると言い張った。そして今日も午後一時ぴったりに天然はやって来た。
「イボちゃぁん! 身体の具合はいかが? 今日の薬草汁は特別に濃いめにしたわ。さぁ、お口を開けて?」
(絶対、嫌がらせでしょう? この女も天然のふりだよね?)
「絶対、飲まないわよ! あたしを虐めてるのはわかってるんだからね? わざとでしょう? こんな苦くてどろどろの泥臭い汁なんて、身体にいいのはわかっていても飲めるわけないもん。あんただって、飲めないくせに!」
あたしの言葉にアイビーちゃんは笑いながらその汁をごくごく飲んだ。
「これって慣れると癖になるお味ですのよ? エルナン男爵家では高いお薬が買えなかったので、なんでもこの薬草で治していました」
(嘘・・・・・・嫌がらせじゃないんだ・・・・・・だったら、なんでよ?)
「私達、お友達ではありませんか? イボちゃんから言ってきたのでしょう? 友人は大事にすることに決めております」
キラキラした瞳でにっこりした顔は・・・・・・悪意のかけらも感じない。あぁ、なんでこんなのに絡みに行ったのだろう。今日もこの薬草汁をたっぷり飲まされて・・・・・・帰りにはまたくるわね、と言いながら爽やかに去って行く。
あたしはこの時に、恋人や妻のいる男性には二度と近づかないことを固く心に誓ったのだった。金輪際カイド様には近づかないことはもちろん、人の男には手を出さないわっ!
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