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1 漫画の世界に来ちゃったよ
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痛くて苦しい。お願い、この火を消して。いいえ、違うわ。もっとごうごうと燃えさかる火にしてちょうだい。
私は意識も失えないぐらいの小さな炎で少しづつ焼かれていく。一気に殺してほしいのにわざと苦痛を長引かす。
「その痛みが苦しさが貴様の罪だ! 私の正妃と言えども、私の子を宿した側妃を殺そうとした罪は重い! しかもそれはお前の妹だぞ! 妹殺し未遂の罪と皇帝の子殺し未遂の罪、加えて側妃殺し未遂の罪は万死に値する!」
かつては私を溺愛し私だけを愛すると誓った皇帝が私を睨み付けて宣言した。
「こいつは大悪党だ! よってこれは天罰である!」
私は愛する夫を見つめ涙を流すが、彼はただ冷たい眼差しで吐き捨てるように言った。
「魔女めっ! 俺を見るな! 汚らわしい!」
――そうか……私をそれほど魔女にしたいのか……無実の私をその邪悪な妹の言葉だけを信じて火あぶりの刑にしたあなたを決して私は許さない! ならば私は本物の魔女になって復讐を誓おう……ぎゃぁあぁあぁぁあああ~~!!
あたしは残酷な処刑シーンのところで漫画本を慌てて閉じた。これは友達に貸してもらった本なのだけど、「けっこう残酷だけど面白いよ。悪人がバッサバッサ復讐されていくんだよ?」とスプラッターもの大好き親友のお墨付きだった。
最初は妹とも仲が良く正妃に選ばれ夫にも愛され、それがどんどん妹の罠にはまり最期がこれ。そこから悪魔の力を借りて復活して復讐するらしいんだけれど、なんだかめちゃくちゃな設定だし復活する前の死に方が惨すぎる。
「こんなの読んじゃだめだ。心が荒むわ。もう読まないで早いとこ返そう」
その本が光っているのも知らずにあたしはそのまま朝まで眠った。
目覚めたらやたら豪華な部屋の天蓋付きのベッドに寝ているあたし。いや、これは夢でしょう? あんな微妙な本を読んだからこんな夢を見るのよねぇ。
「お姉様、お目覚めですか? 今日は皇太子妃候補を選ぶ日ですよね? 一緒に行きましょう」
部屋に入って来て抱きつく女の子の顔を見て私は固まった。
――この子、あの性悪な妹じゃない! ってことはあたし、……殺されるヒロイン?
夢よ、夢! 覚めろよ、悪夢! 立ち去れ、この性悪女!
心の中で唱えつつ思いっきり自分の頬をつねった。
「痛い! 痛いわ! しかも目の前に広がる光景は変わらない! なによぉーー!これ」
「大好きなお姉様、急いで支度したほうがいいですわ! さぁ、起きて一緒に朝食を食べましょう」
――うわっ! なに、こいつ! ニコニコして腹の中は悪魔のくせに女狐め!
あたしはこの女を絶対信用しないわよ。とにかく夢なら早く覚めてちょうだい!
私は意識も失えないぐらいの小さな炎で少しづつ焼かれていく。一気に殺してほしいのにわざと苦痛を長引かす。
「その痛みが苦しさが貴様の罪だ! 私の正妃と言えども、私の子を宿した側妃を殺そうとした罪は重い! しかもそれはお前の妹だぞ! 妹殺し未遂の罪と皇帝の子殺し未遂の罪、加えて側妃殺し未遂の罪は万死に値する!」
かつては私を溺愛し私だけを愛すると誓った皇帝が私を睨み付けて宣言した。
「こいつは大悪党だ! よってこれは天罰である!」
私は愛する夫を見つめ涙を流すが、彼はただ冷たい眼差しで吐き捨てるように言った。
「魔女めっ! 俺を見るな! 汚らわしい!」
――そうか……私をそれほど魔女にしたいのか……無実の私をその邪悪な妹の言葉だけを信じて火あぶりの刑にしたあなたを決して私は許さない! ならば私は本物の魔女になって復讐を誓おう……ぎゃぁあぁあぁぁあああ~~!!
あたしは残酷な処刑シーンのところで漫画本を慌てて閉じた。これは友達に貸してもらった本なのだけど、「けっこう残酷だけど面白いよ。悪人がバッサバッサ復讐されていくんだよ?」とスプラッターもの大好き親友のお墨付きだった。
最初は妹とも仲が良く正妃に選ばれ夫にも愛され、それがどんどん妹の罠にはまり最期がこれ。そこから悪魔の力を借りて復活して復讐するらしいんだけれど、なんだかめちゃくちゃな設定だし復活する前の死に方が惨すぎる。
「こんなの読んじゃだめだ。心が荒むわ。もう読まないで早いとこ返そう」
その本が光っているのも知らずにあたしはそのまま朝まで眠った。
目覚めたらやたら豪華な部屋の天蓋付きのベッドに寝ているあたし。いや、これは夢でしょう? あんな微妙な本を読んだからこんな夢を見るのよねぇ。
「お姉様、お目覚めですか? 今日は皇太子妃候補を選ぶ日ですよね? 一緒に行きましょう」
部屋に入って来て抱きつく女の子の顔を見て私は固まった。
――この子、あの性悪な妹じゃない! ってことはあたし、……殺されるヒロイン?
夢よ、夢! 覚めろよ、悪夢! 立ち去れ、この性悪女!
心の中で唱えつつ思いっきり自分の頬をつねった。
「痛い! 痛いわ! しかも目の前に広がる光景は変わらない! なによぉーー!これ」
「大好きなお姉様、急いで支度したほうがいいですわ! さぁ、起きて一緒に朝食を食べましょう」
――うわっ! なに、こいつ! ニコニコして腹の中は悪魔のくせに女狐め!
あたしはこの女を絶対信用しないわよ。とにかく夢なら早く覚めてちょうだい!
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