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27.遺跡探索5
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「さてと、じゃーこれから、
残りのお宝を入手して、戻りましょう。
そこそこのお金になるから、ご飯でも奢るよ」
ガイドブックを見ながら話すリシェーヌは、
心なしか嬉しそうだった。
最深部の宝箱に到達した二人の前に
遺跡のガーディアンが立ちはだかっていた。
「ラスボスみたいな感じだけど、
ゴブリンマスターを見た後だと、
どうも迫力にかけるな」
余裕を見せる誠一だったが、
それをリシェーヌは窘めた。
「アル、集中して。ホブゴブリンは、
ゴブリンの上位種よ」
その言葉を肯定するかのようにホブゴブリンが吠えた。
「ゴオオオォ」
簡素で巨大な刀を右手に持ち、
簡素で丸い盾を左手に持ち、二人に向かって
突進してきた。
アルに向かって、力任せに刀を振り回した。
刃こぼれの目立つ刀は、斬るというより、
叩き潰すためのものであった。
「うーん、全てが一撃必殺の勢いだけど、
あまりにもトロ過ぎじゃね」
補助魔法で強化していとは言え、
余裕で剣筋を見切る誠一であった。
「ていっ」
隙をみて、杖でホブゴブリンを叩く誠一。
「ていっていっ」
「アル、本当に集中して。余裕見せすぎ」
リシェーヌはそう言うと、誠一と比較に
するのが馬鹿らしくなるほどの鋭い一撃を
ホブゴブリンの背中に加えた。
そのまま、ホブゴブリンは倒れて、溶け出した。
「ふう」
リシェーヌは一息ついた。
「誠一、お遊びが過ぎる。
不測の事態はいつ何時、起きるか分からない。
戦闘は、可能なら、素早く終わらせるべき」
ごもっともと思いつつ、詫びれる風もなく答えた。
「今回は、リシェーヌに経験値を
得て欲しかったからね。
それより最後のお宝を開けよう」
頬を膨らますリシェーヌだったが、
宝物が気になるため、言い返さずに誠一の後へ続いた。
「ガイドブックによると、
攻撃力が少し高い短剣だっけ?」
「そう、そう記載されている。
ほんの僅かだけど、魔力を纏っているから、
同じタイプの短剣より切れ味が優れているみたい。
他の宝物同様にトラップも鍵もない」
二人は既にトラップがないことをガイドブックで
知っているため、無造作に宝箱を開けた。
遺跡の鈍い明りが短剣の刃に収束されて、
二人に向かって放出された。
その明かりは、二人の視界を奪った。
「ちょっ」
「なっ」
二人は視界を突然、失ったため、気が動転したのか、
焦ったのか、お互いの手がぶつかると
強く握りしめあった。
二人に視界が戻り始めると、
お互いを確認し合い、誠一は名残惜しそうに
手を放した。
リシェーヌの頬は若干、赤みかかっていた。
そして、それを悟られまいとして、
普段より饒舌になっていた。
「えっと、これは、この短剣は、
ガイドブックの記載と全然、違う。
切れ味も一線級だし、光の反射も凄かったし、
何かしら付加されている能力がありそう。
そう言えば、アルは、ロジェに宝箱の開ける順序を
尋ねていたよね?
もしかして、このことを知っていた?」
バッシュのことを話す訳にはいかないと思い、
誠一は、知らないふりをした。
そして、リシェーヌの最適解を導き出した
天性の直感に驚いた。
「うーん、何か隠してそうだけど、まあ、いいや。
それより、この短剣は私のでいいよね?」
誠一はうなずいた。
そう言えば、バッシュが持っていた短剣に
似ているような気がしたが、それも黙っていた。
「大逆罪のバッシュって、昔、閃光のバッシュと
呼ばれていたらしい。
暗闇に閃光を放ち、暗殺するからだそうよ。
もしかして、この短剣でも持っていたのかもしれない。
低レベル時の暗殺の成功率の高さは、異常らしいからね」
それ、知っていると思いつつも黙っていた。
この世界でバッシュとの繋がりを
知られる訳にはいかないと思い、沈黙し、
自然、眉間に皺が寄ってしまった。
「アル、黙り込んでいるけど、どうしたの?
もしかして、この短剣を欲しかった?」
誠一が形のいい眉をひそめ、表情がすぐれないため、
心配そうにリシェーヌが尋ねた。
「いや、特にそれより早く戻ろう。
みんなに心配をかけ過ぎたかな」
話題がバッシュから逸れたのを幸いに
誠一はリシェーヌの左手を掴み、
遺跡の最深部から外に向かおうとした。
リシェーヌは、驚いたが誠一の機嫌が
戻っているように見受けられため、追及することなく、
誠一の意見に従った。
遺跡の入り口付近でロジェやキャロリーヌ、
幾人かの冒険者たちとばったりと会った。
ロジェが無言で近づくと、ごつっ!ごつっ!と
派手な音が誠一とリシェーヌの頭から鳴った。
二人の頭にはこぶが出来ていた。
「ったく、何か言うことはないか?」
ロジェは、本気で怒っていた。
キャロリーヌは今にも泣きそうだった。
「すみません」と誠一。
「ごめんなさい」とリシェーヌ。
誠一は、痛みで涙を溜めていたが、
リシェーヌは、歳相応の感情の高ぶりから
涙を溜めていた。
「はいはい、泣かない泣かない。
無茶をしゃちゃダメでしょう。
チームを組んだ以上、個人行動を
優先しちゃうのはよろしくないかな」
キャロリーヌがリシェーヌを優しく抱きしめると、
リシェーヌは、泣き出してしまった。
「リシェーヌはともかく、アルフレート、
君はもっと大人びていると思っていたがな。
今回は、拳骨一発で済んだが、最悪、
遺跡で死んでいたかもしれないんだぞ。
よく考えて行動するように」
ロジェが二人に反省を促した。
二人は頷いた。
二人の大人にお説教と夕食を振舞われて、
リシェーヌとアルは解放された。
残りのお宝を入手して、戻りましょう。
そこそこのお金になるから、ご飯でも奢るよ」
ガイドブックを見ながら話すリシェーヌは、
心なしか嬉しそうだった。
最深部の宝箱に到達した二人の前に
遺跡のガーディアンが立ちはだかっていた。
「ラスボスみたいな感じだけど、
ゴブリンマスターを見た後だと、
どうも迫力にかけるな」
余裕を見せる誠一だったが、
それをリシェーヌは窘めた。
「アル、集中して。ホブゴブリンは、
ゴブリンの上位種よ」
その言葉を肯定するかのようにホブゴブリンが吠えた。
「ゴオオオォ」
簡素で巨大な刀を右手に持ち、
簡素で丸い盾を左手に持ち、二人に向かって
突進してきた。
アルに向かって、力任せに刀を振り回した。
刃こぼれの目立つ刀は、斬るというより、
叩き潰すためのものであった。
「うーん、全てが一撃必殺の勢いだけど、
あまりにもトロ過ぎじゃね」
補助魔法で強化していとは言え、
余裕で剣筋を見切る誠一であった。
「ていっ」
隙をみて、杖でホブゴブリンを叩く誠一。
「ていっていっ」
「アル、本当に集中して。余裕見せすぎ」
リシェーヌはそう言うと、誠一と比較に
するのが馬鹿らしくなるほどの鋭い一撃を
ホブゴブリンの背中に加えた。
そのまま、ホブゴブリンは倒れて、溶け出した。
「ふう」
リシェーヌは一息ついた。
「誠一、お遊びが過ぎる。
不測の事態はいつ何時、起きるか分からない。
戦闘は、可能なら、素早く終わらせるべき」
ごもっともと思いつつ、詫びれる風もなく答えた。
「今回は、リシェーヌに経験値を
得て欲しかったからね。
それより最後のお宝を開けよう」
頬を膨らますリシェーヌだったが、
宝物が気になるため、言い返さずに誠一の後へ続いた。
「ガイドブックによると、
攻撃力が少し高い短剣だっけ?」
「そう、そう記載されている。
ほんの僅かだけど、魔力を纏っているから、
同じタイプの短剣より切れ味が優れているみたい。
他の宝物同様にトラップも鍵もない」
二人は既にトラップがないことをガイドブックで
知っているため、無造作に宝箱を開けた。
遺跡の鈍い明りが短剣の刃に収束されて、
二人に向かって放出された。
その明かりは、二人の視界を奪った。
「ちょっ」
「なっ」
二人は視界を突然、失ったため、気が動転したのか、
焦ったのか、お互いの手がぶつかると
強く握りしめあった。
二人に視界が戻り始めると、
お互いを確認し合い、誠一は名残惜しそうに
手を放した。
リシェーヌの頬は若干、赤みかかっていた。
そして、それを悟られまいとして、
普段より饒舌になっていた。
「えっと、これは、この短剣は、
ガイドブックの記載と全然、違う。
切れ味も一線級だし、光の反射も凄かったし、
何かしら付加されている能力がありそう。
そう言えば、アルは、ロジェに宝箱の開ける順序を
尋ねていたよね?
もしかして、このことを知っていた?」
バッシュのことを話す訳にはいかないと思い、
誠一は、知らないふりをした。
そして、リシェーヌの最適解を導き出した
天性の直感に驚いた。
「うーん、何か隠してそうだけど、まあ、いいや。
それより、この短剣は私のでいいよね?」
誠一はうなずいた。
そう言えば、バッシュが持っていた短剣に
似ているような気がしたが、それも黙っていた。
「大逆罪のバッシュって、昔、閃光のバッシュと
呼ばれていたらしい。
暗闇に閃光を放ち、暗殺するからだそうよ。
もしかして、この短剣でも持っていたのかもしれない。
低レベル時の暗殺の成功率の高さは、異常らしいからね」
それ、知っていると思いつつも黙っていた。
この世界でバッシュとの繋がりを
知られる訳にはいかないと思い、沈黙し、
自然、眉間に皺が寄ってしまった。
「アル、黙り込んでいるけど、どうしたの?
もしかして、この短剣を欲しかった?」
誠一が形のいい眉をひそめ、表情がすぐれないため、
心配そうにリシェーヌが尋ねた。
「いや、特にそれより早く戻ろう。
みんなに心配をかけ過ぎたかな」
話題がバッシュから逸れたのを幸いに
誠一はリシェーヌの左手を掴み、
遺跡の最深部から外に向かおうとした。
リシェーヌは、驚いたが誠一の機嫌が
戻っているように見受けられため、追及することなく、
誠一の意見に従った。
遺跡の入り口付近でロジェやキャロリーヌ、
幾人かの冒険者たちとばったりと会った。
ロジェが無言で近づくと、ごつっ!ごつっ!と
派手な音が誠一とリシェーヌの頭から鳴った。
二人の頭にはこぶが出来ていた。
「ったく、何か言うことはないか?」
ロジェは、本気で怒っていた。
キャロリーヌは今にも泣きそうだった。
「すみません」と誠一。
「ごめんなさい」とリシェーヌ。
誠一は、痛みで涙を溜めていたが、
リシェーヌは、歳相応の感情の高ぶりから
涙を溜めていた。
「はいはい、泣かない泣かない。
無茶をしゃちゃダメでしょう。
チームを組んだ以上、個人行動を
優先しちゃうのはよろしくないかな」
キャロリーヌがリシェーヌを優しく抱きしめると、
リシェーヌは、泣き出してしまった。
「リシェーヌはともかく、アルフレート、
君はもっと大人びていると思っていたがな。
今回は、拳骨一発で済んだが、最悪、
遺跡で死んでいたかもしれないんだぞ。
よく考えて行動するように」
ロジェが二人に反省を促した。
二人は頷いた。
二人の大人にお説教と夕食を振舞われて、
リシェーヌとアルは解放された。
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