転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

50.チーム戦4

「ったく世話がやける坊やだ。
んで？おまえはどうすんの？
ぼーっと突っ立てても
どうしようもないだろうがよ、
ストラッツェール家の二男坊がよおっ！」

「おっ俺は」

「糞が。虫唾が走るわ。
レアリティなんぞ、関係ねーわ。
お前ら貴族どものレアリティ崇拝主義には
虫唾が走るわ。
そもそもお前らのぬるい努力で
与えられたレアリティの限界まで
成長出来るつもりかよ。
安直な考えでリシェーヌに近づくんじゃねえよ」

そもそもこんなことでリシェーヌに
剣を向けることに釈然としない
ファブリッツィオであった。
しかし、嫡子であり、SRの兄へ
逆らうことなど出来はずもなく、
何となく言われるがままについて
来てしまった。
剣を抜くこともできずに
うろうろとしていた矢先に
バルドロから罵声を浴びてしまった。

悪相の男が罵る言葉は、
ファブリッツィオの根底に根付き、
纏わりつく価値観であった。
「如何に言われようとも
我らが価値観は否定させん」
ファブリッツィオは剣を抜いた。

「ふん、たまには叩きのめされるのも
いい経験になるだろうよ。
お前はまだ、あの歪んだ男のように
ならない可能性はある。
レアリティノーマルな上に義足である俺に
叩きのめされて、少しは考えるんだな」

リシェーヌの相手は、どうやら大柄の戦士と
俊敏な盗賊の二人であった。
二人はリシェーヌの潜在能力は認めていたが、
現状では余裕を持って対応できると高を括っていた。
そのため、ティモールと対峙している
キャロリーヌの方ばかりに視線が向かっていた。
キャロリーヌが激しく動くたびに
豊かな胸が派手に揺れて、スカートがはためき、
太ももと下着を露わにしていた。
都度、歓声を上げる二人であった。

「今晩のオカズは決定だな」
「ああ、たまんねーな。
あんなのを見せつけてんだ、誘って欲しいとしか思えん」
「目の前の餓鬼をさっさと折檻して、
キャロリーヌに勝者への
ご奉仕の仕方を教えてやらんとな」

戦斧が何度もリシェーヌを両断しようと、
ゆっくりと振り下ろされた。
この程度の速度を見切るのは
リシェーヌにとって造作ないことであった。
事実、リシェーヌは余裕を持って
何度も躱していた。
その余裕から何度か躱しているうちに
一瞬であるが、リシェーヌは隙を作ってしまった。

戦士はニヤリとした。

盗賊は戦士の体躯を隠れ蓑にしていた。
リシェーヌが戦斧の一撃を躱すと
同時に複数の短剣を投じた。
そして、そのまま、リシェーヌに接近しようとした。

飛来した短剣を叩き落すリシェーヌ。

「ふん、可愛げのない娘だ。おうら！」
戦士は、先ほどとは段違いの速度で
戦斧を地面に叩きつけた。
地面は爆発したように砂塵を舞い上がらせて、
リシェーヌに降りかかった。
リシェーヌは視界を奪われた瞬間、
全力で後方へ下った。

「へへっ、餓鬼の割にはやるなあ、おい。
坊ちゃんが気にするだけはある」
短剣を器用に回しながら、
盗賊は、隙を伺っていた。
戦士も感心したような様子で
ゆっくりとリシェーヌとの間合いを詰め始めた。

リシェーヌはURだけに基本スペックでは
同世代の追従を許さないが、
ファブリッツィオや誠一のように劣勢を
覆すような一撃必殺の技を持っていなかった。
そのため、通常時の攻撃でダメージを
与えにくい敵と相見えた場合、勝利を
得ることが非常に難しかった。

「うーん、いつもながらどうしたものかな。
この短剣に頼るばかりでもしょうがないし」
砂埃を払い、不敵な笑みを浮かべていた。

二人の男たちは心底楽しそうに言った。
「気に入った。いい度胸だ、小娘。
これは訓練だ、色々と試してみるがいい。
死なない程度に相手をしてやる」

「くっくっくっ、本当だよな。
力の差は歴然。
だが勝とうと真剣に悩んでいやがるわ」

戦士は心底可笑しそうに笑いを
訓練場に響かせ、盗賊はニヤリとした。