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58.隊商の護衛2

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「おい、アルフレート君、リシェーヌ、
シエンナ、それとヴェル。
交代の時間だ。周囲の警戒を始めてくれ」
ロジェが4人に声をかけた。

キャロリーヌも戻り、派手に胸元を開き風を
誘い込んでいた。
「うーん、今日は暑いよ。
女性陣は街道の日差しが強いから
お肌に気を付けてねー」

「このアホウが!余計なことは教えんでいい。
そんなことに気を取られずに周囲の警戒に
集中しなさい」

ロジェとキャロリーヌが言い合っていたが、
取り敢えず、リシェーヌとヴェル、
シエンナと誠一の組み合わせで左右に散った。
 ボリスやスターリッジは、学生たちを二人で
一人分の冒険者と考えているようであった。

「なあ、リシェーヌ。
アルと二人の探索でなんかなかったのか?」
ヴェルが無遠慮に尋ねて来た。
リシェーヌは誠一がまさかあの森での一件を
話したのかと思い、顔が真っ赤になってしまった。

「何つーかさ、めっちゃ面白い冒険でもしたのか?
後方の冒険者たちと知り合いっぽいだろう。
おっおい、大丈夫か、顔が真っ赤だぞ」

心配そうにヴェルが覗き込むが、
リシェーヌはフードを深く被り表情を
見られないように隠した。
「何でもない。
ギルドでストラッツェール家の
ティモールとちょっとね」

侯爵家の家名を聞いた瞬間、ヴェルは
びくりとしたが、以前ほどの恐れは抱かなくなっていた。
「はー次男に続いて、長男と揉めるとか。
目をつけられているけど、ほんと、大丈夫?」

「さあ?まーでもめんどくさいかな。
ロジェさんやキャロリーヌさんも
助けてくれたし、大丈夫でしょ」
上手く話題が逸れたために
ほっとするリシェーヌであった。

リシェーヌとヴェルがそんな会話をしている頃、
馬車の逆側では、シエンナと誠一が話していた。

「えー結局、じゃあ、二人ともこの護衛のために
それらの依頼を受けていたってこと?」
シエンナが誠一に尋ねた。

「まあ、そう言うことです。
僕も使えるお金はほとんどありませんし、
リシェーヌもそれは同じでしょうから。
しかし、毎日のように草を引っこ抜く作業は
大変でした。
リシェーヌの鑑定眼のお陰でかなりの
希少な薬草も手に入れることができましたら、
軍資金は充分です」

街道の両脇は大きな木々に覆われており、
道に木陰を作っていた。
たまに吹く風も木々を軽く揺らす程度で、
木々の擦れ合う音が奏でるメロディーも
相まって彼等にとって心地良かった。
 カサカサ、木々の擦れ合う音であろう。
誠一は、馬上で大欠伸をした。
くすりと笑うシエンナ。

 カサカサ、今度は少し大きく誠一に聞こえた。

 カサカサ、更に音が大きくなった。

流石に何事かとシエンナは音のする方に
目を向けると、そこには体長60㎝ほどの
蜂らしき物体がいた。
 
シエンナは、すぐさま魔石を空に向かって放り投げた。
魔石は上空で黄色い煙を発して、広がった。

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