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66.鍛冶場1

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殺人蜂の臨時収入に気を良くした
モリス隊商の一行は、意気揚々と目的地に向かった。

天候にも恵まれ、当初の予定通りに到着した。

目的地であるヴェルトゥール王国第3都市、
ソルテールは、名目上、王国の直轄領であったが、
鉱山に位置する山間部はドワーフの自治領であった。
中心となる都市部・平野部を中央から
派遣された代官と武官が管理していた。
天然資源が豊富であり、主にそれらが
交易品の中心を担い、この地方の財源となっていた。

「随分と家々の壁が厚く感じる造りですね」
誠一の目には、華やかさより、堅牢なイメージに映った。

「そうねードワーフが本気を出したら、
主城のある都市に勝るとも劣らない
華やかな建物が並ぶでしょうけど、無理無理。
冬の豪雪でね、どうしてもああいった建物に
ならざるを得ないみたい」
誠一の疑問に馬上からキャロリーヌが答えた。
露出は少ないはずだが、キャロリーヌは、
街中の人々の注目を浴びていた。
同性からの眉を顰めた視線、異性からの好色な視線、
所変われども注目を浴びるようだったが、
気にした風もなく、受け流していた。

ソルテールのモリス家の商館に到着すると、
クラン氷帝のメンバーは軽い挨拶をすると、
クランの拠点に戻った。
ストラッツェール家を首になった冒険者たちは、
どうやら宿を宛がわれているため、そちらに向かった。
シエンナを除く誠一たちもモリス家によって
予約されている宿に向かった。

誠一とヴェルは興奮していた。
街中に並ぶ武器屋と防具屋、鍛冶屋。
無論、その多くがドワーフであった。
「アル、これはもう、あれだな。
オリジナルを製作して貰うしかないな」
夕食時、開口一番、ヴェルが叫んだ。

「製作は無理にしても掘り出し物には
出会いたいですね。
ロジェさん、戻りの出発までは、自由ですよね」
誠一も興奮気味に話した。

「そうだが、ボーリスさんが
招待してくれている宿に明日午後、向かうぞ。
準備等を考えると左程の時間はない」
二人の興奮に水を差すようなロジェの発言に
二人は黙り込んでしまった。

「まあまあ、夜のうちに準備しておきなさい。
そしたら、十分に時間がとれるから。
リシェーヌもいいわね?
念のため、言っておくけど、夜の逢引はまだ、
早すぎるから我慢しなさい」
余計な一言を付け加えて、キャロリーヌが取りなした。
最早、ロジェは疲れたような表情で何も言わなかった。

各々、おやすみの挨拶を交わすと各自、部屋に戻った。

誠一は簡素なベッドに寝転びながら、
考え事に耽っていた。
鉱山群の最奥地に聳え立つ「霊峰氷山」、
その頂きに鎮座される神殿、そこに納められている神剣は、
この世に二つとない剣と目されていた。
攻略した者が皆無のため、実際の所、
真偽のほどは定かではないが、大いに誠一の興味を引いた。

この世界を去る前に攻略してやるそんな思いを
抱きながら、いつの間にか寝てしまった。
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