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69.鍛冶場4

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「師匠、すごーい。
私たちの手の平を見て、判断されたんですね。
身体はそれなりに鍛えられているけど、
本職を目指す人達に比べると、手の平は
そこまで厚くないもんね」
なんだろ、キャロリーヌのような話し方のリシェーヌだった。

そう言われた師匠は満更でもなさそうであった。
「よかろう、こいつが鍛えた鈍らなら、売ってやろう。
ただし、俺が認める戦士だったらだ。
中庭に来い。稽古をつけてやる」
どかどかと中庭に師匠が向かった。

「ささっ、みなさんもどうぞ」
ひょろ長の男が3人を案内した。

ドワーフは戦斧を構えて、彼等を迎え入れた。
「ヨークだ!
自分で言うのもなんだが中堅の鍛冶師だ。
武器は気に入ったのを取れ」

「あっちなみに私は、ラッセルと言います。
主に素材の手配と製作品の卸、受注管理、
後は一応、武器を作ったりしています」
3人もそれぞれ、挨拶と自己紹介をした。

誠一の名前を聞くとラッセルはにんまりした。
恐らく伯爵家と繋がりを持てるかもしれないと
期待したのだろう。

3人がそれぞれ武器を選ぶと、
まず、リシェーヌとヴェルが立候補した。
お互いに譲らずに二人が組打ちを
始める程の勢いであった。

こいつらは根っからの戦闘民族かと
誠一は心のなかで呟いた。

「師匠、駄目です。
師匠に怪我をされては明日からの生活に
支障をきたします。
うちは弱小ですから、日々、ぎりぎりなんですよ。
私がお相手しましょう。
まずは槍を選んだ君からだ」

ラッセルは、片手で細剣を掴むと、
長い腕をいかして、ゆらゆらと動かし始めた。

その動きに息をのむリシェーヌとヴェルであった。
「なっ剣が揺れている。
しかも無詠唱だぞ。ありえない」
ヴェルは槍を構えて、警戒した。
あの剣の揺らぎようから、
鞭のようにしなって攻撃されると思ったのだろう。
リシェーヌですら、真剣にその動きを追っていた。
誠一はやれやれと思い、小枝を拾うと、
警戒するヴェルの視線に入るように
枝を上下に振り始めた。

ヴェルの目には、剣と同じように小枝が
波打っているように見えた。
リシェーヌも同様であった。
ラッセルはにやりとした。

「なっアルも無詠唱で同じことを!」
心の声がだだ洩れのヴェルであった。

「ふふっタネは割れているようですが、
果たしてうまくよけられますかな?」
ヴェルは魔術の類と判断しているために
全く理解していなかった。
誠一は、目の錯覚を利用したものであることは
理解していたが、細剣を片手で握り、
それを実行するラッセルの膂力に感心していた。
見た目以上に力があるのだろう、
いわゆる細マッチョだと判断した。

ヨークは興味深く視線を3人に送っていた。

鋭い突きであったが、ヴェルは辛うじて避けた。
「うん、いいね、君。
本当にいい目をしている。合格かな」
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