転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

178.悩み事4

「よしっ、アル！放課後だ。行くぞ。
こういうのは勢いが重要だ」

勇ましくまくしたてるヴェルが疎ましかった。
そんなにやる気があるなら、どうぞよろしく
お願いいたしますと思い、ヴェルへその役目を
譲ろうとしてみた。

「いや、遠慮しておく。
これはリーダーであるアルの仕事だろう。
新しいメンバーをスカウトするなんて、
俺には向いてない」
にべもない返答だった。

素っ気ない返事に誠一は、少しヴェルに対して
苛立ちを覚えた。
最近、ヴェルの言動や態度を
不快に感じることが多い様な気がしていた。
15歳、多感な時期のせいなのだろうと思い、
精神的には遥かに歳上である自分が
もう少し上手く立ち回るべきだと思った。

「アル、ファブリッツィオは、
あなたに興味深々なんだから、早く行って来て。
私たちも一緒に行くから」
急かすシエンナに促されて、
トボトボと歩き出した。

誠一は、一体、どう声をかけて良いのか分からず、
内心、ファブリッツィオがさっさと、
寮に戻ればいいのにと心の中で毒づいた。

「あーまったくもう！
この男どもときたらもうっ！いいわ、呼ぶわよ。
ファブリッツィオ！ちょっと待って。
はいはい、取り巻きの方たちは、ちょっと、外して」
貧乏くじのスキルが発動しているのだろうか、
ファブリッツィオが突然、急停止した。
取り巻き達が胡散臭げにこちらを見ているが、
ファブリッツィオが先に寮へ戻るように促した。

誠一はこっそりとシエンナを鑑定した。
相変わらずのプロポーションに
ドキリとした誠一だった。
そこじゃないと自分に言い聞かせて、
シエンナの状態をチェックした。
確かに貧乏くじのスキルが発動していた。
そして、よく確認すると、スキルの熟練度が
以前より大幅に上がっていることが分かった。
どんだけ貧乏くじを引いて、このスキルを
発動させているんだと驚く半面、
どんだけ迷惑をかけているんだろうと
少し反省した。

「ふん、何か用か？
用があるなら、さっさとしろ、俺は忙しいんだ」
引き止められたファブリッツィオは、
冷たい態度で応じた。

「ほら、アル。今度はあなたの番でしょ！」
シエンナが誠一に行動するように促した。

「やあ、ファブリッツィオ」
誠一はファブリッツィオに近づき、
フレンドリーな態度を心がけて、声をかけた。

しかし、その声は裏返っていた。

「なっなんのつもりだ。貴様らに用はないぞ」
誠一の裏返った声に驚くも一先ず、
話を聴くつもりはるようだった。

「君は今、少しこの学院に物足りなさを
感じてはいませんか。
そう、ストラッツェール家の教育と
2年間の騎士学園での経験値は、
君を倦ませているのではないでしょうか？
ファブリッツィオ、君の淀んだ気持ちを
軽くする方法がここにあるっ。
話を聞いてみないか？」
誠一は、先程の裏返った声とは裏腹に
囁きかける様な口調であった。

美辞麗句で飾り立てる言葉の合間に
ほんの少しの毒を吐く誠一の話術であった。