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208.閑話 とある男の休日の情景2

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「運だけなのかよ。
多分、違うな。
俺らに隠して結構な額を
課金しているに違いない。
それにキャラも複数操作しているはず。
こっちが親切に教えてやったのに
随分と卑怯な真似をしてくれるよな。
こっちも手加減なしだ。
オニヤは引き抜かせて貰う」
会社での彼からは想像できぬほどに
モニターの前で饒舌に話す清涼であった。
ただし、それらは、独り言であったが。

オニヤが王都で目撃されている情報は
ちらほらと攻略サイトにも掲載されていた。
真偽は別として、人なりに関しても色々と
書き込みがあり、清涼は幾つかの方法を
試してみることにした。

「よし。ベタなパターンだが、
オニヤに有効そうだな」

清涼はまず、オニヤの動向を把握するために
盗賊、暗殺者を動かした。
オニヤを直接、監視すれば、容易にばれると思い、
目撃情報を集めて、そこから彼の行動を
把握するように努めた。

「こいつ、毎日、飲み屋に入り浸ってやがる。
金か女かどうするかな」
ひとまず、行きつけの飲み屋に
冒険者と商人、盗賊を送り込み、恐喝まがい行動で
強引に店を買収した。
商人に店を引き継がせた後で、
幾人か魅力と色気の高い女性を配置した。

「まずは金だな」
オニヤが入店して、呑み始めたら、
嵌めるように指示を出した。

両脇に女を侍らせて、ご機嫌のオニヤ。
軽快なトークは留まるところ知らずに続いていた。
『お客様、そろそろ閉店の時間ですので」
ボーイがスッと伝票を差し出した。
オニヤの表情がスッと蒼くなった。

『きみきみ、いつからここは
こんなふうになったの?
先に言ってくれないと困るよ』

『お客さん、そんな御託はいいから、
さっさと払ってください。
我々も帰れませんので』

いつの間にかオニヤの両脇にいた女性は
いなくなっており、代わりに屈強そうな男たちが
オニヤを囲んでいた。
この状況をモニター越しに見ていた清涼は
すかさず指示を出した。

『お客さん、払えないなら、働いて貰おうか!
おうおう、踏み倒すとか舐めたことが
許されるとオモウナヨ』
オニヤの周りで屈強な男どもがイキっていた。

『いやいや、これはないでしょ。
この価格はないでござる。憲兵を呼ぶなり』

オニヤがそう言った瞬間、男の1人が頬を殴りつけた。

『ぐえぅ」
悲鳴を上げてソファーから転がるオニヤであった。
そして、床で叫び、転げ回っていた。

この醜態を目の当たりにして、清涼は、
この男が本当にオニヤか疑い始めてしまった。
そもそもそんなに都合よく佐藤のチームに
参加するだろうか。
噂は所詮、噂であって、実像はもしかして、
大したことがないのだろうか。
オニヤという存在に懐疑的になる清涼であった。
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