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213.輜重隊出征2

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カルバーは共の騎士にストラッツェール家の
ご子息様について、尋ねた。

説明を受けたカルバーは、素朴な疑問を口にした。
「魔術学院の所属だと?騎士学園でなく?
確かストラッツェール家は、代々、二男三男であろうとも
騎士学園に入學してなかったか?」

「さあ、その辺りの事情は分かりかねます。
噂では、嫡男のご意向で騎士学園を中退後、
魔術院に入學し直したとか」

「他のご子息様のように騎士たる称号を
得ることができなかったとか、色々な憶測が
あるようです」

話を聞きながら、留まることのない
ご子息の演説でこれ以上、行軍を止める訳にいかず、
カルバーは、ご子息の方に向かった。

「これは、カルバー隊長」
ファブリッツィオは、近づくカルバーに
騎士として敬礼をした。そして、場を譲った。

ほう、礼儀と軍律をきっちりと弁えているな。
カルバーのファブリッツィオへの心証は、
好ましいものになっていた。

「学生諸君、私の言いたいことは粗方、
ファブリッツィオが申した通りだ。
諸君、ここに学生の気分でいてもらっても困る。
今後は軍律に照らし、それなりの対応をする」
学生たちの顔に緊張が走ったのが、
カルバーにもわかった。
そして、今の言葉が彼らの反発に繋がることを危惧した。

「さて、ここで軍の在り様について、
ファブリッツィオより話を続けて貰うことも
大切であるが、流石に行軍をこれ以上、
止めるのも流石にまずい。私が処罰されてしまう。
今日のところは、各員、持ち場に戻りなさい。
行軍を再開する」
ファブリッツィオを囲む学生たちは、
笑いを堪えて、持ち場に散った。

学生たちの姿が見えなくなると、
カルバーと共の騎士たちは、ファブリッツィオに
頭を下げた。
「ファブリッツィオ様、申し訳ございません。
しかしあの場を収めるには、あのような形が良いと思い、
ファブリッツィオ様に少々、不快な思いを
させてしまいました。どうかお許しを」

「いや、気にしなくていい。
私も同期や先輩の態度を不愉快に思っていたしな。
君らの立場では、叱責をしなければならない。
しかし、彼等の両親の立場を考えれば、
中々、強気にでるのは難しいだろうと思い、
あのような愚挙に出てしまったのだ。
私の方こそ、要らぬ気遣いをさせてしまったようだな」
ファブリッツィオは鷹揚に答えた。

カルバーたちは、ファブリッツィオの尊大な態度に
反発を感じず、彼の行動に感銘を受けていた。
この行動こそ、王国の将来を担う大貴族の態度であると、
納得していた。
カルバーに至っては、彼の将器に心酔してしまい、
遥か年下のファブリッツィオを仰ぎ見る様であった。
ファブリッツィオは、彼らの仰ぎ見る眼差しを
当たり前のように受け止め、最後に一兵卒たる者の責務を
果たしますと宣誓し、持ち場に戻っていった。

カルバーたちはその後姿に敬礼をすると、
軍を動かすべく、指示を飛ばした。
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