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215.輜重隊出征4

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カリバーは、額の汗を何度も拭っていた。
4度ほど全滅、半壊した輜重隊は、
何処より現れた魔物の大軍にのみ込まれていた。
カリバーはその内の一回に遭遇したが、
運よく助かった。
5つの機影が上空に現れたとき、
地上では、予想しなかった魔物の大軍に
蹂躙されてしまった。
 都度、増員・対策はするがどうにも
上手くいかなかった。

いつだいつだ、次に現れたら、竜騎兵は無視だ。
地上に現れる魔物の群れに攻撃魔術を打ち込んでやる。
それで終いだ。そう思い、日々神経をとがらせて、
タイミングを計っていた。

 竜騎兵が矢玉や魔術の届く範囲まで
近づいて来た。焦るなあれは囮だ。
近接戦闘に備え、矢の準備は一切していない。
魔術くらい放って、牽制するか。
カリバーの脳は焼けそうなくらいに
フル回転していたが、当初の予定を崩さなかった。

「シエンナ、ヴェル。
可能な限り全力で輜重の上に水球を展開だー」

「らじゃー、ううおおぅーウオーターボール」

「もう、急すぎるって。ウオーターボール」

誠一が叫ぶと、二人は躊躇なく、魔術を展開した。
そして、それを見た他の魔術師も指示があったと思い、
慌てて、同じように展開した。
誠一の叫びとほぼ同じ、否、一瞬だが、
早くに竜騎士たちから輜重に目がけて、炎の塊が飛来した。

5つの炎の塊は、輜重を焼き尽くすに
十分な大きさであったが、魔術院の学生の
展開したウオーターボールの前に役目を
終える事無く消化されてしまった。

 5つの騎影は、優雅に方向を転換し、
5つの黒点が次第に小さくなり、空の彼方に
消えていった。

輜重隊は、全くの損失を出さずに行軍を再開した。

その夜、誠一は、カリバーの宿所に召集を受けた。
戦場での独断専行を恐らく叱責されるのだろう。
そう予想していた。緊張した面持ちでカリバーへ挨拶をした。

「魔術学院中等部2年、
アルフレート・フォン・エスターライヒ、
只今、参りました」

カリバーを中心に4,5人の騎士と
ファブリッツィオが卓を囲んでいた。

「いや、楽にしてくれ。今日は助かった。
礼を言うが、以後は気を付けてくれ。
何か進言があれば、ファブリッツィオを
通して貰うと助かる」

「はっ、以後、そのように心得ました」
カリバーを含む騎士たちが自己紹介を始め、
誠一も卓を囲むように言われたため、
地図の置かれた卓に近づいた。

「そうだ、まず、聞きたい。
今日のアレは、予想していたのかな?
それとも咄嗟のことかな」
カリバーは、何気ない表情を保っていた。
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