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248.出陣8

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アーロンの一振りは、槍を異常にしならせていたが、
決して折れることはなかった。

「フハハハハハ。槍が歪んで見える。大した大道芸だ」
魔人は腹を抱えて爆笑していた。

大振りのアーロンの攻撃を難なくかわす魔人は
飽きたのか、距離を取り魔術を唱え始めた。
「いい加減、飽きた。力に振り回されるカスが!
次の生では、もう少しマシな技を繰り出すんだな」

アーロンは馬から飛び降りた。
全身が弓の様にしなり、槍ごと弧を描かずに
一直線に魔人に向かって跳躍した。
人に非ざる跳躍だった。

「跳槍直破」

魔人の右肩から鎖骨部に大穴が空いていた。

後方で腕組みをして、戦いの行方を見つめる魔人は
感心したような表情だった。
方や岩の上に座る魔人は、楽しそうに笑っていた。

「かはっ、こふ」
流石の魔人も苦しんでいた。
咄嗟に後方に距離を取り、魔人は戦闘中にも関わらず、
アーロンから一瞬、目を離してしまった。
そして、後ろの二人を怒鳴りつけた。
「かふかふ、さっさと回復させろ。ギャアギャア」

アーロンはそのような隙を見逃すはずもなく、
槍を振り下ろした。魔人の右腕は、切り落とされた。

「今だ、行くぞ!」
魔人とアーロンの戦いを遠巻きに見ていた冒険者たちが
彼らの戦いに割って入った。

掛け声とは裏腹に冒険者たちは、悲壮な表情であった。

冒険者たちは息も絶え絶えの魔人を攻撃した。
誠一の眼には、B級もしくはC級の実力を
持つ冒険者のパーティしか映らなかった。
魔人の生命力は強く、彼等の攻撃を受けても
中々、死ななかった。

アーロンは少し離れて、彼等のしたいようにさせていた。

「早く死ねよ、死んでくれ!」

「くそっくそう、何でこんなことに」

「やるしかないだろっー」
彼等は魔人の強さと恐怖を十分に認識しているようであった。
後ろに二人も控えているにも関わらず、彼等は攻撃を加えていた。

「命令違反だが、これは醜いな。少しだけ助けてやるか」
直立不動の魔人は、瀕死の魔人に向かって、
攻撃魔術を放った。
直撃を受けた魔人は、身体を震わせ、口から泡を
際限なく吹いていた。噴き出した泡はそのまま魔人を覆った。

ぼこぼこ、魔人を覆った泡が割れていた。

ぼこぼこ、泡の中を何かが絶え間なく蠢いていた。

それは、泡の中から立ち上がった。
そこには、魔人でなく、貧相なゴブリンが立っていた。

虚ろな目に知性は感じられず、口は半開きで
涎が絶えず流れていた。

誠一は鑑定眼で魔人の称号を見た。

クラスSSR、土魔術・魔力回復・魔術耐性・素早さ上昇(森)
・隠密行動(洞窟)・精神汚染・残虐・毒塗布・麻痺塗布
・怪力・反逆・知恵者・威圧・上位魔人etc.

以前の魔人ほどの称号は持っていなかったが、
多くの強力な称号を持っていた。

誠一は、魔人と戦う冒険者たちでは対抗するのは
難しいであろうと感じた。

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