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258.宴4
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誠一の額に汗が流れていた。
教団に認知された啓示を受けているとは思ってもいなかった。
逆らえば、男の言った通りに敵対者としてアルデット教団に
睨まれることになるのは確実であった。
リーダーの側にいる脂ぎった顔の男が法衣を纏っていた。
あれが司祭クラスの者なのだろうと誠一は法衣から想像した。
天を仰ぎ見て、誠一は思った。それにしれも俗人の欲にまみれた顔だと。
「うむ、そうだ。ガイダロフ殿の言う通りだ。
さっさと、その女を我々に差し出せ」
司祭の言葉を聞いて、誠一はロジェとキャロリーヌが
どうしてあのような状況に陥っていたのかを正確に理解した。
教団と敵対することの愚を犯すまいとした結果なのだろう。
誠一は知識としては理解していたが、
この世界の教団との関りの経験があまりにもなさ過ぎたために
二人の様にはならなかった。
「くだらない啓示で二人を貶めるつもりなら、お相手します!」
周囲はざわついた。当たり前であった。
6神の一柱たるアルデット教を恐れぬその言葉。
啓示を侮辱し、それをしかと司祭が見た以上、
クラン「戦神に集いし英雄」も完全に引けなくなってしまった。
司祭は脂ぎった顔を更にテカテカにさせて、喚き散らした。
「貴様、神への冒涜。その代償は身をもって払ってもらうぞ。
ガイダロフ、奴を捉えろ。拷問にかける」
暗い天井から、ひらりひらりと一枚の紙が舞い落ちて来た。
司祭は大仰に両手を広げて、その紙を受け入れる仕草をした。
「我らが神、アルデット様が懐紙を下賜された。
おおおっ正義は我にあり」
紙を受け取ろうとうろうろする司祭の両手をすり抜けて、
その神は誠一の下に届いた。
『見てて、むかつくから、あの連中、やっちゃってください』
周囲のざわめきは最高潮に達していた。
人の生涯で神の懐紙を受け取るところに
出会う幸運など無いに等しかった。
その奇跡に冒険者たちは興奮していた。
「おおっなんて奇跡が見れたんだ」
「ありえないだろ。暗闇から懐紙が降って来たぞ」
「神よ。神よ」
「なんて幸運なんだ。生涯、語り継げる奇跡だ」
ある者は跪き、天井に向かって祈りを捧げ、
ある者は興奮に震え、ある者は、ジョッキを天井に
向けて掲げていた。
十人十色、さまざまな形でこの奇跡に対して、祈りを捧げていた。
しばらくするとざわめきが収まり、懐紙を受けた誠一に皆が注目した。
流石にそのまま読む訳にはいかないと思い、脚色を施すことにした。
「我が意に沿わぬことをしようとする目の前の敵を倒せ」
大広間は、かつてないほどの熱狂に包まれた。
教団に認知された啓示を受けているとは思ってもいなかった。
逆らえば、男の言った通りに敵対者としてアルデット教団に
睨まれることになるのは確実であった。
リーダーの側にいる脂ぎった顔の男が法衣を纏っていた。
あれが司祭クラスの者なのだろうと誠一は法衣から想像した。
天を仰ぎ見て、誠一は思った。それにしれも俗人の欲にまみれた顔だと。
「うむ、そうだ。ガイダロフ殿の言う通りだ。
さっさと、その女を我々に差し出せ」
司祭の言葉を聞いて、誠一はロジェとキャロリーヌが
どうしてあのような状況に陥っていたのかを正確に理解した。
教団と敵対することの愚を犯すまいとした結果なのだろう。
誠一は知識としては理解していたが、
この世界の教団との関りの経験があまりにもなさ過ぎたために
二人の様にはならなかった。
「くだらない啓示で二人を貶めるつもりなら、お相手します!」
周囲はざわついた。当たり前であった。
6神の一柱たるアルデット教を恐れぬその言葉。
啓示を侮辱し、それをしかと司祭が見た以上、
クラン「戦神に集いし英雄」も完全に引けなくなってしまった。
司祭は脂ぎった顔を更にテカテカにさせて、喚き散らした。
「貴様、神への冒涜。その代償は身をもって払ってもらうぞ。
ガイダロフ、奴を捉えろ。拷問にかける」
暗い天井から、ひらりひらりと一枚の紙が舞い落ちて来た。
司祭は大仰に両手を広げて、その紙を受け入れる仕草をした。
「我らが神、アルデット様が懐紙を下賜された。
おおおっ正義は我にあり」
紙を受け取ろうとうろうろする司祭の両手をすり抜けて、
その神は誠一の下に届いた。
『見てて、むかつくから、あの連中、やっちゃってください』
周囲のざわめきは最高潮に達していた。
人の生涯で神の懐紙を受け取るところに
出会う幸運など無いに等しかった。
その奇跡に冒険者たちは興奮していた。
「おおっなんて奇跡が見れたんだ」
「ありえないだろ。暗闇から懐紙が降って来たぞ」
「神よ。神よ」
「なんて幸運なんだ。生涯、語り継げる奇跡だ」
ある者は跪き、天井に向かって祈りを捧げ、
ある者は興奮に震え、ある者は、ジョッキを天井に
向けて掲げていた。
十人十色、さまざまな形でこの奇跡に対して、祈りを捧げていた。
しばらくするとざわめきが収まり、懐紙を受けた誠一に皆が注目した。
流石にそのまま読む訳にはいかないと思い、脚色を施すことにした。
「我が意に沿わぬことをしようとする目の前の敵を倒せ」
大広間は、かつてないほどの熱狂に包まれた。
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