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321.竜公国1

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誠一たち一行は、竜公国へ向かいながら、
街道沿いの村や町で魔物の討伐依頼をこなしていた。

「なんつうか、もうちょっと骨のある魔物を倒したいよな。
ゴブリンにコボルドばかりでもう飽き飽きだよ。
アル、そう思うだろ!」
ヴェルが町の宿で夕食を取っている時に愚痴を言い始めた。

「確かにゴブリンやコボルドの素材や魔石ばかりが揃っていてもね。
集客を考えるといまいちだから、何か目玉商品が欲しいな」
ヴェルとは違った観点から、誠一も他の魔物を討伐することに賛成した。

誠一たちは、ここまでいくつかの初級迷宮で崩壊するまで
宝物を搾取して、魔具や武具、防具もそれなりに揃えていた。
しかし、それらは、ありふれた物ばかりであり、
一級品や二級品のようなものは皆無であった。

「素材、魔石に武具、装飾品か。
ある品目に特化せずに色々と取り揃えるなら、
鉱石や薬草辺りも集めながら進むべきだが、
アルフレート君、どうする?」
ロジェの意見に誠一はスープを啜りながら、思案していた。
所詮は商人に扮するだけとも思ったが、そこへ様々な人の出入りがあれば、
有用な噂を掴めるかもしれない。
しかし、商品を取り揃えるのに多大な時間をかけるのも
違うような気がしていた。

「私は広く浅くで品目を充実させる方に賛成かな。
現実、路銀も稼がないとまずいだろうし。
品目が多ければ、冒険者ギルドの依頼をその場で完了させることも
できるかもしれないしね。
報酬に依頼達成で冒険者としての昇格の一助になるから、それがお得よ」

シエンナの意見を誠一はリシェーヌと既に実施していた。
その有効さも実感していたために賛成した。

「ちょい待て。それは貴族様たちが楽して冒険者ランクを
上げる時にやる姑息な方法だろ。
俺はそんなことに加担したくねーぞ。アル、お前らしくないぞ」
誠一も当時は同じことを感じたため、リシェーヌが言ったことを
そのままヴェルに言った。

「ヴェル、手抜きって言うのは、貴族様が市場で購入してから、
持ち込むことだよ。僕らは、手際が良いって言うんだ」
誠一が胸を張ってヴェルに伝えた。

「うーんうーん、何か上手くはぐらかされたようなそうでないような。
まっ、いいか。明日から薬草とかも集める訳ね。
あーまったく巨大な蜂巣でもあればなー」
ヴェルも一先ず納得したようだった。誠一とシエンナは懐かしそうに笑った。

そんな取り留めない話をしながら竜公国への旅は続いた。
旅の合間に剣豪の残した指南書に則って、訓練も誠一たち行っていた。
竜公国への旅路はそれなりに日々が忙しく過ぎていった。
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