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350.交流5

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「おい、この小娘を屋敷に連れてけ。
礼儀ってもんを親に代わって教えてやるぞ。
それと治療費の稼ぎ方も仕込んでやりな」
集団の中心にいる女が下品な笑い声を上げていた。

少女は震えながらも何とか逃れようとしていた。
それが男の嗜虐心を誘っただろう。
にやにやしながら、腰に手を回し身体を密着させていた。
「げはははっ。逃げれねえって」

何というベタな状況、流石にこれは見てみぬふりはできなかった。
誠一が立ち上がるより前にヴェルが動き出していた。

「おい、その手を離せよ。嫌がってるだろ」
つかつかと歩き、ヴェルは少女を掴んでいる男の胸ぐらを掴んだ。

遅れて、誠一もヴェルの後に続いた。
「流石に言いがかりが過ぎますよ」

「ああっ、おいおい、おまえら俺らが誰だか分かってんのかよ。
仲裁とか舐めたことする気なら、おまえらも、げふうっ」
腹の辺りを抑えて、男が膝を地面についていた。

「ちっ余所者か。手―出したことを後悔すんじゃないよ。
この二人の可愛い坊やたちも連れていきな。
これだけ容姿が整っていれば、パーティでも引く手あまただろ」
女がそう指示をだすと、4人の男どもが獲物を抜いて構えた。
少女は女に取り押さえられた。

「ヴェル、どうする?」

「アルが俺に聞くなんて珍しいな。
さてどうするって!倒すしかないだろ」
流石にハルバートを振り回しての大立ち回りを
する気がないようで、護身用にと準備していていた木の棒を
素早く誠一から受け取った。

「おいおい、アル。メイスを振り回すつもりかよ。
よっぽど俺より過激じゃね」

7面メイスを両手に構える誠一に驚くヴェルであった。

「加減次第でどうにでもなるさ」

二人のやり取りを聞き飽きた男どもは唸り声を上げて、
誠一とヴェルに襲いかかった。

周囲では遠巻きに眺めるだけで積極的止めようとする者いなかった。
かと言って騒ぎになるでもなかった。
この場所でのこの程度の諍いは、日常の一風景であった。

「なめてんじゃねえぞ」

「ガキが調子に乗ってんじぁねえ、泣いて後悔するんだな」

「くおりぁ!あとでたっぷりと教育してやんよ」

柄が悪い男たちの攻撃は空を斬るだけで二人に触れることはなかった。

「アル、これどうすんの?」
余裕綽々で対応するヴェルにアルが叱責した。
「ヴェル、油断しない。不測の事態で怪我することもあり得るから」
以前、リシェーヌに同じようなことを注意された事を
誠一は思い出していた。2年ほど前の話が随分と遠い昔のように感じられた。

「おいおい、アル!何を黄昏てんだよ。おまこそ、油断するな」

うっわっ、ヴェルに言われるとはと内心忸怩たる思いであった。
心に湧き上がる思いを振り切って、誠一は、一撃の下に瞬く間に
二人の男を叩き倒した。
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