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410.方針5
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「ふむ、頃合いか。魔物の群れでもう少し削りたかったが、仕方なし。
まずは新参者たちにその実力を示して貰おうか」
空の盃にガズンスが酒を注いだ。
黄色く濁った目の焦点は定まらず、注がれ酒のみが映っていた。
「デルガドが未だに調略を独断専行で行っているようす。
いかがしましょうか?」
シャービスは、デルガドの謀略自体は有効だと判断していたが、
デルガドが行っていることに否定的であった。
「よい、好きにさておけ。
ヴェルトール王国がそやつの謀略で無用に処罰を重ねるなら、
疑心暗鬼に陥って、勝手に自壊するだけだ。
最もその男に振り回されるようなら、その国もその人物も
大したことあるまい」
シャービスにはダンブルが何を考えているのか
全くわからなかった。
皇帝を名乗り、大陸を制覇しようとするような覇気は
全く感じられることはなかった。
存分に才を振るう機会を与えられ、大陸を平らげようと
十全の力と知略を以て仕えていたが、破滅への路へ
引きこまれているのではと不安に駆られることがあった。
「シャービスよ。
多少魔道に長けているような小物の行動など
一々、気にする必要はない。適当に遊ばせておけ。
それよりいい歳して英雄願望の強い竜公国の王様に
相応しい舞台の準備は進んでいるな」
シャービスは心の奥底を除かれたような気がして、どきりとした。
そして、あの濁った目で人心を見透かすことなどできるのだろうか
などと不謹慎なことを思っていた。
「ははっ。竜公国への仕込みは着々と進んでおります。
あの者がこの舞台で踊り狂う様、しかとご覧ください」
シャービスは内心の動揺を悟られないように
できる限り努力したが、声が強張るのはどうにもできなかった。
「よかろう。シャービス、おまえの描いた台本、楽しみにしているぞ」
ダンブルは、酒を飲み干すと、二人に下るように命じた。
1人になったダンブルは自ら酒を盃に注ぎ、呑み始めた。
上質の水の様に透明の酒には、ダンブルの顔が映っていた。
盃を揺らすとその顔は歪んだ。
爵位を継いだ時から、代々の継承する苗字であるダンブルと呼ばれ、
皇帝を名乗った時から、陛下と呼ばれていた。
誰も名を呼ばぬ。誰も己を見ぬ。本人すらも名を忘れそうになった。
誰も己の本質を見る者はいなかった。
高名な吟遊詩人ですら、俺の肩書を詠っていた。
名など単なる言葉だ、くだらぬ気にする必要も無し。
そう思いながらもせめて俺の名を歴史に刻んでくれると
夢見ていた。
どんよりとまどろんでいたダンブルは夢と現実の狭間で
とりとめもなく考えていた。
まずは新参者たちにその実力を示して貰おうか」
空の盃にガズンスが酒を注いだ。
黄色く濁った目の焦点は定まらず、注がれ酒のみが映っていた。
「デルガドが未だに調略を独断専行で行っているようす。
いかがしましょうか?」
シャービスは、デルガドの謀略自体は有効だと判断していたが、
デルガドが行っていることに否定的であった。
「よい、好きにさておけ。
ヴェルトール王国がそやつの謀略で無用に処罰を重ねるなら、
疑心暗鬼に陥って、勝手に自壊するだけだ。
最もその男に振り回されるようなら、その国もその人物も
大したことあるまい」
シャービスにはダンブルが何を考えているのか
全くわからなかった。
皇帝を名乗り、大陸を制覇しようとするような覇気は
全く感じられることはなかった。
存分に才を振るう機会を与えられ、大陸を平らげようと
十全の力と知略を以て仕えていたが、破滅への路へ
引きこまれているのではと不安に駆られることがあった。
「シャービスよ。
多少魔道に長けているような小物の行動など
一々、気にする必要はない。適当に遊ばせておけ。
それよりいい歳して英雄願望の強い竜公国の王様に
相応しい舞台の準備は進んでいるな」
シャービスは心の奥底を除かれたような気がして、どきりとした。
そして、あの濁った目で人心を見透かすことなどできるのだろうか
などと不謹慎なことを思っていた。
「ははっ。竜公国への仕込みは着々と進んでおります。
あの者がこの舞台で踊り狂う様、しかとご覧ください」
シャービスは内心の動揺を悟られないように
できる限り努力したが、声が強張るのはどうにもできなかった。
「よかろう。シャービス、おまえの描いた台本、楽しみにしているぞ」
ダンブルは、酒を飲み干すと、二人に下るように命じた。
1人になったダンブルは自ら酒を盃に注ぎ、呑み始めた。
上質の水の様に透明の酒には、ダンブルの顔が映っていた。
盃を揺らすとその顔は歪んだ。
爵位を継いだ時から、代々の継承する苗字であるダンブルと呼ばれ、
皇帝を名乗った時から、陛下と呼ばれていた。
誰も名を呼ばぬ。誰も己を見ぬ。本人すらも名を忘れそうになった。
誰も己の本質を見る者はいなかった。
高名な吟遊詩人ですら、俺の肩書を詠っていた。
名など単なる言葉だ、くだらぬ気にする必要も無し。
そう思いながらもせめて俺の名を歴史に刻んでくれると
夢見ていた。
どんよりとまどろんでいたダンブルは夢と現実の狭間で
とりとめもなく考えていた。
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