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453.再会1

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誠一たちは、二つの晒された生首の前に立っていた。
「いやはや最後の試験までもこうも
あさっりと合格するとは。
流石はバッシュ様が注目するだけはあります」
目の前の男は盗賊団を率いていた頭領であった。

案内されている街の一角に誠一たちはいた。
人々は二極化していた。
ぎらぎらと目を光らせる者と諦めきったような表情の者であった。

 二人の生首を見て、マスタークラスの暗殺者は
この場から逃げようと画策した。
「ぴきょきょきょ」
生首はそんな言葉を残して、胴体と切り離された頭が地面を転がった。

強張る顔の誠一たちを前に頭領が笑った。
「こいつらはバッシュ様と教皇を両天秤にかけていた輩です。
案の定、教皇派に情報を流していました。煩わしいので始末しました」

「称号といいましてもその入手方法は様々ですから、
金の力がありましたら、ある程度の事はどうとでもなります」
誠一たちは歩き始めた頭領の後に続いた。

 巨大な街であったが、城や城壁らしき建物が
目に入ることはなかった。
建物に統一感はなく、多くの国の建築様式が
使われているようであった。
よく言えば多様性がある。悪く言えば雑多であった。

「ここに国はありません。あるのは有力者による合議だけです。
出自もランクも関係ありません。必要なのは何かしらの力だけです」
頭領の説明に誠一たちは頷いた。
国を追われた者たちの街、野盗、盗賊、犯罪者の集まる街、
その割に秩序は保たれている様に誠一は感じた。

王国様式の巨大な屋敷に案内された誠一たちは一室に通された。
厚く大きいガラスの窓より夕日が覗いていた。
部屋には窓の外に設置されている分厚い鉄格子の影が誠一たちを
突き刺していた。

誠一の心臓は先ほどから高鳴っていた。
鳴りやまぬ心臓の音、動悸は異常なほど早かった。
知りたいことは、多々あったが、自分がバッシュのプレーヤーと
悟られぬようにしなければならなかった。
最悪、都合の良い天啓を言わされた後に
拘束されて生きる屍とさるかもしれなかった。

 頭領が再び現れて、誠一たちを別の部屋に案内した。
内部は簡素な造りで迷うような造りになっていなかった。
 通された部屋には豪華絢爛な料理が並べられていた。
それらは、街並みの建物と同様に様々な国の料理であった。
 ホストたるバッシュの姿はなく、代わりに頭領が
その役をこなしていた。
誠一は鑑定眼で料理や飲み物を確認して、仲間に向けて軽く頷いた。
誠一たちは料理を口にした。

王国由来の料理以外に頭領が一々、説明を加えていた。
シエンナはその説明へ興味深げに耳を傾けていたが、
ヴェルはお構いなしに様々な料理を手にした。
頭領は説明がついに追いつかなくなると、始めて表情が変わった。
不快そうにヴェルを一瞥すると、彼を無視することに決めたらしく、
ヴェルに向けての説明を止めてしまった。

 食事が終わり、食器が下げられてもバッシュは姿を現さなかった。
提供された飲み物を前に誠一たちは、不信感を露わにした。
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