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553.大会戦25

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「くそっ、先生を相手にしている時のようだ!」

「アルっ!加勢するぞ。
一対一の決闘をしている訳じゃないだろう。いいよな」
ヴェルがハルバートを大きく頭上で振り回して
その勢いのままガズンスに振り下ろした。
しかし、ガズンスはそれを容易にいなした。

速度と言う点において、誠一やヴェルは明らかに
ガズンスより速かった。
しかし、時間が経つにつれて、追い込まれていくのは二人であった。

「アルー。一体、どういうことだ、これ!
見た目とろいのになんかおかしいぞ」
どうにもガズンスの湾刀の攻撃を
捌ききれなくなってきたヴェルが叫んだ。

「くそ、奴が応じきれない速度と力で叩き潰すしかない」
誠一は意を決してコールバーサークを唱えようとした。
その瞬間、頭に殴られたような痛みを感じた。

「シエンナ!後々のことを考えている場合じゃないって」
振り向く余裕のない誠一はその場で絶叫した。

「アルフレート君、焦り過ぎじゃ。
と言っても流石にこの無謀な状況では仕方あるまいか」

聞き覚えのある声であったが、あり得ないという驚きで
誠一は咄嗟に振り向いてしまった。

「学院長」

「ふむ、まだまだ修行が必要じゃのう。
眼前の強敵から目を離すとはのう。
それは死を意味すると君は理解しているはずなのだがのう」
温厚な表情にほんわかした声、しかし右手に持つ魔術杖は、天体球戯の杖。
ファウスティノの纏う雰囲気は、まさに戦場を翔ける魔術師であった。

「目の前の男は、オニヤ先生やフリッツと同じ高みにいる者だのう。
何故、ダンブル如きに付き従っているのか興味は尽きぬのう。
そんなことよりアレはまだ、アルフレート君には少々荷が重い。
周りに注意しながら、魔術師の戦い方を学びなさい。
ヴェルナー君、君もだ。
魔導槍兵を極めたいならば、ヴェルナー君にも少しは役に立つかもしれん」

戦場にいるにも関わらず、誠一とヴェルは自然と笑みが
零れてしまった。そして、二人の身体から疲れが消え、軽くなった。

「司祭、エヴァニア司祭もここに!ありがとうございます」
誠一は身体が軽くなった理由を即座に理解し、礼を伝えた。
ヴェルもすぐさま誠一に倣って礼を述べた。

「やんちゃが過ぎるというレベルの話じゃないな。
いくらダンブル派に柔弱者が多いとはいえあまりにも侮り過ぎだ。
反省なさい。アルフレート君、君の目指すところは犬死ではないでしょう」

2人の出現は、ダンブル本陣の混乱に更に拍車をかけた。
四方八方へ逃げ纏う者、裏切りに走る者で混乱の極致となった。

「話が違う。あいつらは今度の戦には出ない筈だった」

「無理だ。勝てる訳がない。
捕まれば、拷問に継ぐ拷問でファウスティノに殺されるぞ」

「ファウスティノ殿、どうかお目通りを!
私が忠誠を誓うのは僭称者ダンブルでなく、ヴェルトール王国です」

そんな中でバリーは叫んだ。
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