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602. 鍛冶屋5

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 誠一たちはロジェとサリナに合流するため、
商業ギルドへ向かった。
美男美女の一団に街の人々は歩みを止めて、
ある者は無遠慮にある者は覗くように様々な視線を
彼らに送った。

「まったく莉々とアミラが増えた分、
余計に注目されるわね」
キャロリーヌが愚痴を零した。

「そうか少ない位だと思うがな」
マリアンヌは不思議そうな顔であった。
このレベルの美女が6人で街中を歩いていれば、
今の状況の比ではなかったことは誠一たちにも
容易に想像できた。
マリアンヌを除いて、誠一たちは笑ってしまった。

「そうだアル。マリがクランに入るぞ。問題ないな」

ヴェルの言葉に誠一は笑いながら頸を傾げた。
「マリって誰?」

「おいおいって、悪い説明が足りなかったな。
莉々の本当の名前は、マリアンヌって言うんだ。
マリって呼べばいいってよ」

誠一は恐る恐るキャロリーヌを見るが、
特に反対しているような素振りもなかったので承諾した。

「莉々の名は、女神様としてのあるまじき行いを
正せた時、再び拝命されたら名乗るかもしれない。
抗い逆らった以上、その名を名乗る訳にもいかないだろう。
莉々の名は称号のようなものだよ。既に消失している。
クランで新たに拝命された者がいるだろう」
昔を懐かしむ様な憂いを帯びた表情で
さびしそうにマリアンヌは笑った。

 ロジェたちと合流した誠一は鍛冶屋と
マリアンヌの件を二人に話した。
二人とも異存はないようだったが、
サリナの表情は芳しくなかった。
『赤薔薇の園』との戦い以降、
どうも会って間もない頃のサリナに
戻ってしまったような印象を誠一は感じていた。

「市場での売買許可書も取れた。
手持ちの素材や魔石の相場も確認できたし、
さて、アルフレート君、今回はどうする?」
ヴェルとアミラは市場で売る気満々のようであった。
素材や魔石はそれなりにあったが、客の気を引くような物は
はなかった。

「アルフレート、モーニングスターと魔杖を
店に出せばそれなりに客引きできるのではないか」
マリアンヌの意見は誠一も考慮に入れていた。
しかし、時遅く剣豪がそれらを持ってどこかへ行ってしまっていた。

「いやそれ無理じゃね。
先生がどっかで酒代を得るために
売り払っているだろ」
マリアンヌを除いた全員がヴェルの意見に頷いていた。

「ではどうでしょう。
ヨーク印の上物の武器を店に並べるというのは?」
ロジェ、キャロリーヌそしてサリナは突然、
会話に割って入って来た男に警戒の目を向けた。

ひょろ長いようでがっしりとした体躯、
細マッチョという言葉がしっくりする男が立っていた。
「いやまさか。ヴェル、もしかして」

「いやそのまさかだろ。ラッセルさんだよな」
2人の上擦った声で誠一とヴェルの掛け合いが炸裂した。
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