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608. 鍛冶師11
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「少し稽古をつけてやろう。
これでもS級の冒険者。いい機会だろう」
まずロジェが名乗りを上げた。
「本気を出しても問題ないか?」
「ああ、問題ない。全力を以て撃ってこい。
それと一つ、ヒントを言おう。この技には致命的な弱点がある。
ヴェルの様な眼を持たずとも対処は可能だ」
ロジェがにやりと笑った。
「ああそれは、ありがたい」
技を容易に真似られて、呆然としていたラッセルだったが、
ロジェがツヴァイヘンダーを抜くと即座に理性が目に宿った。
「バスターソードですか。
魔術の刻印などがされていない様ですが、
良い出来の剣ですね。
私の鍛錬用の細剣などまともに刃を交わせば、
折れてしまいます」
ゆらゆら揺らぐ剣と腕を前にロジェは微動だにしなかった。
ロジェが振り子のように規則的に動くそれらに合わせて、
ツヴァイヘンダーを振り上げた。
「そこだ。もらった」
揺らぐ剣に向けて、ロジェが剣を力任せに振り下ろした。
ロジェの一撃が細剣を捉えた様に見えた瞬間、
細剣が不規則に動き躱した。
「剣の規則性に合わせて、動いたか。なかなか良いと思う」
マリアンヌの細剣はロジェの喉元にあった。
「アルフレート様、あの方は一体、どういう方なんですか?」
長きに渡り時間の許す限り工夫と研鑽を凝らした
ラッセルの技はマリアンヌによって更なる可能性を示された。
悔しさより驚きがラッセルの胸の内を占めた。
「S級の冒険者ですよ。
『莉々』という名で活動していましたが、
事情あってその通り名を今は名乗っていません」
「いやいやいや、アルフレート様には驚かされます。
経緯はどうであれ、S級の冒険者がお仲間とは。
あなたを見定めた私の目は間違ってませんでした」
ロジェは下がり、次にキャロリーヌが
マリアンヌと相対していた。
キャロリーヌの得物は、弓であった。
キャロリーヌは開始直後、即座に距離を取ったが、
マリアンヌは距離を詰めようとせずにその場で先ほどと
同じように揺ら揺らと剣と腕で幻惑していた。
「全く、新参者が生意気よね。
稽古という名の下で序列を
ハッキリとさせたいだけでしょ」
「ふっそんなつもりは毛頭ない。
それよりもあの莉々矢すら一目置く
弓神に愛されし娘の技、実際に拝見したいと
思っていたのだよ」
誠一は新たなる戦闘民族が加わったような気分に
なってしまった。
まったくどいつもこいつも血の気が多過ぎると思いながら、
キャロリーヌとマリアンヌの稽古を見ていた。
いつの間にかヴェルとアミラも戻って、
2人の稽古を注視していた。
「姉貴が距離を取ったか。あの距離ならマリの攻撃が
届くことはないな」
「そうです。それに矢を乱射されれば、マリの防戦一方に
なるです。キャロリーヌさんほどの弓の使い手の矢を掻い潜って
どう距離を詰めるつもりですかね」
2人の会話に耳を傾けながら、誠一はなるほどその通りだと
思った。
これでもS級の冒険者。いい機会だろう」
まずロジェが名乗りを上げた。
「本気を出しても問題ないか?」
「ああ、問題ない。全力を以て撃ってこい。
それと一つ、ヒントを言おう。この技には致命的な弱点がある。
ヴェルの様な眼を持たずとも対処は可能だ」
ロジェがにやりと笑った。
「ああそれは、ありがたい」
技を容易に真似られて、呆然としていたラッセルだったが、
ロジェがツヴァイヘンダーを抜くと即座に理性が目に宿った。
「バスターソードですか。
魔術の刻印などがされていない様ですが、
良い出来の剣ですね。
私の鍛錬用の細剣などまともに刃を交わせば、
折れてしまいます」
ゆらゆら揺らぐ剣と腕を前にロジェは微動だにしなかった。
ロジェが振り子のように規則的に動くそれらに合わせて、
ツヴァイヘンダーを振り上げた。
「そこだ。もらった」
揺らぐ剣に向けて、ロジェが剣を力任せに振り下ろした。
ロジェの一撃が細剣を捉えた様に見えた瞬間、
細剣が不規則に動き躱した。
「剣の規則性に合わせて、動いたか。なかなか良いと思う」
マリアンヌの細剣はロジェの喉元にあった。
「アルフレート様、あの方は一体、どういう方なんですか?」
長きに渡り時間の許す限り工夫と研鑽を凝らした
ラッセルの技はマリアンヌによって更なる可能性を示された。
悔しさより驚きがラッセルの胸の内を占めた。
「S級の冒険者ですよ。
『莉々』という名で活動していましたが、
事情あってその通り名を今は名乗っていません」
「いやいやいや、アルフレート様には驚かされます。
経緯はどうであれ、S級の冒険者がお仲間とは。
あなたを見定めた私の目は間違ってませんでした」
ロジェは下がり、次にキャロリーヌが
マリアンヌと相対していた。
キャロリーヌの得物は、弓であった。
キャロリーヌは開始直後、即座に距離を取ったが、
マリアンヌは距離を詰めようとせずにその場で先ほどと
同じように揺ら揺らと剣と腕で幻惑していた。
「全く、新参者が生意気よね。
稽古という名の下で序列を
ハッキリとさせたいだけでしょ」
「ふっそんなつもりは毛頭ない。
それよりもあの莉々矢すら一目置く
弓神に愛されし娘の技、実際に拝見したいと
思っていたのだよ」
誠一は新たなる戦闘民族が加わったような気分に
なってしまった。
まったくどいつもこいつも血の気が多過ぎると思いながら、
キャロリーヌとマリアンヌの稽古を見ていた。
いつの間にかヴェルとアミラも戻って、
2人の稽古を注視していた。
「姉貴が距離を取ったか。あの距離ならマリの攻撃が
届くことはないな」
「そうです。それに矢を乱射されれば、マリの防戦一方に
なるです。キャロリーヌさんほどの弓の使い手の矢を掻い潜って
どう距離を詰めるつもりですかね」
2人の会話に耳を傾けながら、誠一はなるほどその通りだと
思った。
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