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【黒の創造召喚師 ―Closs over the world―】
第053話 巻き込まれて決闘①
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(……さて、ここらで一旦状況を整理しようか)
放課後、ツグナは学院の敷地内にある剣道場で木刀を握り、板張りの床に引かれた白線の前に立ちながら思案する。
(……一体、何だってこんなことになったんだっけか?)
疑問と動揺の感情が彼の心中に渦巻く中、この状況を引き起こした問題の人物が向かいに立つ。
「継那さん、宜しくお願いします!」
千陽も木刀を手に中段に構えてツグナと対峙する。
「やあああああああぁぁぁぁっ!」
ツグナは木刀を手に迫る彼女を捉えながら、昼休みの時のことを思い返していた。
◆◇◆
「……な、なぁアリア。お前さんのツレ、むっちゃ俺のこと見てるんだけど。俺って何かマズイことでもしたのか?」
「えっ……? さ、さぁ……」
アリアがいつも通り昼休みにやって来た際、彼女は「部活の友達」と紹介した千陽を連れ込んだ。
アリアはいそいそと着席して兄特製の弁当を頬張っている一方、共に教室へとやって来た千陽は、ツグナの顔を見るや否や、その表情を驚愕のそれに変化させ、じっと探るような目を彼に向けている。
その若干居心地の悪い視線に耐えかねたツグナは、千陽を連れて来たアリアにヒソヒソと理由を訊ねてみるものの、その答えは得られなかった。
(うーん、そう言えばどっかで見たような……あっ! あの時の!)
最初は分からなかったツグナも、ふと直近の出来事の記憶を掘り返して彼女のことを思い出した。
(思い出したはいいものの……なんでこんなにじっと探るような目つきで見られなきゃならないんだ? 俺、何かしたっけ……?)
自分に突き刺さる千陽からの視線に疑問を持ちつつも、ツグナはみるみる内に空になっていく重箱に遅れをとるまいと浮かんだ疑問を一旦は頭の片隅へと追いやることにした。
(……この継那って人、どうしてかは分からないけど、あの人に似てる気がするのよね)
一方、アリアと共に席に着いた千陽は、ツグナを見た瞬間、その顔が「あの時」自分に声をかけてくれた人に似ていると感じた。
ここに言う「あの時」とは、数日前に千陽がナイトオーガに自らの命を奪われようとした際のことだ。だが、その後に気を失った彼女は、助けてくれた恩人の顔をほんの一瞬しか見ていない。加えて数日とはいえ時間がある程度経過した今では、「一瞬見た顔」がツグナの顔と結びつけられることは彼女にはできなかった。
(記憶にあるのは白い髪と金色の眼なんだけど……やっぱり違うよね。この人は黒髪黒眼だし……)
自分の頭の中で一度はそのように結論づけた千陽だったが――
「おーい、継那。喜べ! またお前に果たし状だ!」
昼食を終えて戻ってきた瑞基が、ひらひらと手にした白い封筒をこれ見よがしに見せつけながらツグナのもとにやってくる。
「……いや、喜べって何でだよ」
「何でって……そりゃあお前、果たし状ってことは対戦だろ? ってことは、だ。賭けができて俺の懐が潤う可能性があるってことじゃねぇか!」
「清々しいほどのクズだなお前はっ!」
くわっと目を見開いて思わず声を荒げるツグナ。その様子を見ていた千陽が、隣に座ってツグナ謹製のから揚げを頬張るアリアに訊ねる。
「……ね、ねぇ。今、私の聞き間違いじゃなければ『果たし状』って聞こえたんだけど?」
「んくっ……そうだよ? 最近は減って来たらしいけど、ツグ兄にはその手の対戦がよく舞い込んでくるんだって。千陽も耳にしたことがあるんじゃない? 普通科クラスの男子生徒の話。あれはツグ兄のことだよ」
「へ、へぇ……そうなんだ」
あっけらかんと噂が真実であるとバラすアリアに、紅茶を飲んでいたリーナが口を挟む。
「この前は確か……空手部の方でしたね」
「あー、そうそう。開始早々、ツグ兄が一発KOしたんだっけ」
「えぇ。それで、外野から『もっと盛り上げろ!』ってブーイングが出て、仕方なく一本で終わるところを三本先取にしたのよ。外野の声に応じる兄さんも兄さんだけど、ルールを変えても呆気なく終わったのだから……相手にはもう同情というより可哀想に思えてならなかったわ」
隣で交わされる双子の姉妹の会話を耳にした千陽は、若干顔を引き攣らせながら聞き入る。すると、その二人の会話に新たにソアラと茜が参加した。
「それ、私も見たけど、ホントに『えっ? もう終わったの?』ってぐらいにあっという間だっよね。継那さん……て、何かそういう格闘技系のスポーツってやってるの?」
茜が隣に座るソアラの顔を見ながら訊ねると、サンドイッチを食べ終えた彼女が紅茶の入ったカップを片手に答える。
「あはは。スポーツとしてはやってはないけど、私やアリアの相手もするからね。何だろ……生活の一部って感じかな。それに、ツグナの真骨頂は刀術なんだよ~」
「えっ……?」
ソアラの言葉に驚いた表情を見せた千陽は、その真意を確かめるようにアリアの方に顔を向ける。
「そうだよ。ツグ兄の得意分野は刀術なんだよ。私は剣術だけど、それでもツグ兄の刀術はレベルが高いって思えるよね」
「そうなんだ……」
(もしかしたら……いや、でも違ってたら恥ずかしいし……)
アリアの言葉に、わずかに俯いて逡巡していた千陽は、彼女の少し先で瑞基と騒いでいるツグナへ、意を決した面持ちで声をかける。
「――あ、あのっ!」
「うん?」
「私と手合わせしてくださいっ!」
「……へっ?」
一瞬「何を言われたんだ?」と呆気にとられた表情を見せたツグナに、
「亞里亞から継那さんは刀術が凄いと聞きました。私も剣術部の一員として、自分のレベルアップのためにその凄さを肌で感じたいんです!」
千陽は力強い口調で言葉を発しながら席を立ち、その場で頭を下げて再度申し出たのだった。
放課後、ツグナは学院の敷地内にある剣道場で木刀を握り、板張りの床に引かれた白線の前に立ちながら思案する。
(……一体、何だってこんなことになったんだっけか?)
疑問と動揺の感情が彼の心中に渦巻く中、この状況を引き起こした問題の人物が向かいに立つ。
「継那さん、宜しくお願いします!」
千陽も木刀を手に中段に構えてツグナと対峙する。
「やあああああああぁぁぁぁっ!」
ツグナは木刀を手に迫る彼女を捉えながら、昼休みの時のことを思い返していた。
◆◇◆
「……な、なぁアリア。お前さんのツレ、むっちゃ俺のこと見てるんだけど。俺って何かマズイことでもしたのか?」
「えっ……? さ、さぁ……」
アリアがいつも通り昼休みにやって来た際、彼女は「部活の友達」と紹介した千陽を連れ込んだ。
アリアはいそいそと着席して兄特製の弁当を頬張っている一方、共に教室へとやって来た千陽は、ツグナの顔を見るや否や、その表情を驚愕のそれに変化させ、じっと探るような目を彼に向けている。
その若干居心地の悪い視線に耐えかねたツグナは、千陽を連れて来たアリアにヒソヒソと理由を訊ねてみるものの、その答えは得られなかった。
(うーん、そう言えばどっかで見たような……あっ! あの時の!)
最初は分からなかったツグナも、ふと直近の出来事の記憶を掘り返して彼女のことを思い出した。
(思い出したはいいものの……なんでこんなにじっと探るような目つきで見られなきゃならないんだ? 俺、何かしたっけ……?)
自分に突き刺さる千陽からの視線に疑問を持ちつつも、ツグナはみるみる内に空になっていく重箱に遅れをとるまいと浮かんだ疑問を一旦は頭の片隅へと追いやることにした。
(……この継那って人、どうしてかは分からないけど、あの人に似てる気がするのよね)
一方、アリアと共に席に着いた千陽は、ツグナを見た瞬間、その顔が「あの時」自分に声をかけてくれた人に似ていると感じた。
ここに言う「あの時」とは、数日前に千陽がナイトオーガに自らの命を奪われようとした際のことだ。だが、その後に気を失った彼女は、助けてくれた恩人の顔をほんの一瞬しか見ていない。加えて数日とはいえ時間がある程度経過した今では、「一瞬見た顔」がツグナの顔と結びつけられることは彼女にはできなかった。
(記憶にあるのは白い髪と金色の眼なんだけど……やっぱり違うよね。この人は黒髪黒眼だし……)
自分の頭の中で一度はそのように結論づけた千陽だったが――
「おーい、継那。喜べ! またお前に果たし状だ!」
昼食を終えて戻ってきた瑞基が、ひらひらと手にした白い封筒をこれ見よがしに見せつけながらツグナのもとにやってくる。
「……いや、喜べって何でだよ」
「何でって……そりゃあお前、果たし状ってことは対戦だろ? ってことは、だ。賭けができて俺の懐が潤う可能性があるってことじゃねぇか!」
「清々しいほどのクズだなお前はっ!」
くわっと目を見開いて思わず声を荒げるツグナ。その様子を見ていた千陽が、隣に座ってツグナ謹製のから揚げを頬張るアリアに訊ねる。
「……ね、ねぇ。今、私の聞き間違いじゃなければ『果たし状』って聞こえたんだけど?」
「んくっ……そうだよ? 最近は減って来たらしいけど、ツグ兄にはその手の対戦がよく舞い込んでくるんだって。千陽も耳にしたことがあるんじゃない? 普通科クラスの男子生徒の話。あれはツグ兄のことだよ」
「へ、へぇ……そうなんだ」
あっけらかんと噂が真実であるとバラすアリアに、紅茶を飲んでいたリーナが口を挟む。
「この前は確か……空手部の方でしたね」
「あー、そうそう。開始早々、ツグ兄が一発KOしたんだっけ」
「えぇ。それで、外野から『もっと盛り上げろ!』ってブーイングが出て、仕方なく一本で終わるところを三本先取にしたのよ。外野の声に応じる兄さんも兄さんだけど、ルールを変えても呆気なく終わったのだから……相手にはもう同情というより可哀想に思えてならなかったわ」
隣で交わされる双子の姉妹の会話を耳にした千陽は、若干顔を引き攣らせながら聞き入る。すると、その二人の会話に新たにソアラと茜が参加した。
「それ、私も見たけど、ホントに『えっ? もう終わったの?』ってぐらいにあっという間だっよね。継那さん……て、何かそういう格闘技系のスポーツってやってるの?」
茜が隣に座るソアラの顔を見ながら訊ねると、サンドイッチを食べ終えた彼女が紅茶の入ったカップを片手に答える。
「あはは。スポーツとしてはやってはないけど、私やアリアの相手もするからね。何だろ……生活の一部って感じかな。それに、ツグナの真骨頂は刀術なんだよ~」
「えっ……?」
ソアラの言葉に驚いた表情を見せた千陽は、その真意を確かめるようにアリアの方に顔を向ける。
「そうだよ。ツグ兄の得意分野は刀術なんだよ。私は剣術だけど、それでもツグ兄の刀術はレベルが高いって思えるよね」
「そうなんだ……」
(もしかしたら……いや、でも違ってたら恥ずかしいし……)
アリアの言葉に、わずかに俯いて逡巡していた千陽は、彼女の少し先で瑞基と騒いでいるツグナへ、意を決した面持ちで声をかける。
「――あ、あのっ!」
「うん?」
「私と手合わせしてくださいっ!」
「……へっ?」
一瞬「何を言われたんだ?」と呆気にとられた表情を見せたツグナに、
「亞里亞から継那さんは刀術が凄いと聞きました。私も剣術部の一員として、自分のレベルアップのためにその凄さを肌で感じたいんです!」
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