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第6章
第122話
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「全く……ハーフとはいえエルフがここまで強いなんてな?」
「あぁ……、予想外だった」
拠点にしている西の海岸に着いたセレドニオは紅茶を飲んで休憩し、ライムンドは怪我の回復を終えてのんびりとしていた。
「おいおい! 貴重な研究材料だ。あまり痛めつけるなよ」
「へへ、分かってますよ」
“バキッ!!”“ドカッ!!”
「がっ!?」「うっ!?」
そこには磔になった状態のレイナルドとカルロスがいた。
そして、数人の男たちが代わる代わるサンドバックにして楽しんでいた。
ハーフとはいえ幻のともいえるエルフだが、ほどほどなら良いだろうと仲間を殺られた憂さ晴らしのために、ライムンドが許可を出したのだ。
兵たちが数発殴ると回復師が回復するので、2人へのリンチはなかなか終わることがない。
回復師も貴重なのだが、島の大半を侵略し、東の端の侵略を残すのみなため、余裕を出しているのだろう。
届いた情報によると、東には住居があるらしく、そこに獣人たちが隠れているだろうという話だ。
これまでの戦闘で分かったのは、獣人は多くて60人前後、魔人族の男も1人見受けられたらしい。
結局、エルフはダンジョン内では発見されなかったが、少数の兵が東へ向かう姿を見たといっていたため、まだかすかに望みはあるようだ。
「エルフが見つかると良いな……」
「あぁ、獣人と一緒にいのだろう」
少し離れた場所で、レイナルドたちが殴られる音をBGMにしながら、2人はエルフの捕獲と獣人の抹殺完了の報告が来るのを待つことにしたのだった。
「「っ!?」」
のんびりしているからと言って、警戒を完全に解いたわけではない。
突如異変を感じた2人は、慌てて休憩用のテントから飛び出した。
「「「「「?」」」」」
レイナルドたちをリンチしていた兵たちは、2人が急に動いた理由が分からず、殴る手を止めて首を傾げるしかなかった。
何があったかは分からないが、何か起きたのかもしれないと思い、レイナルドたちをそのままに、ぞろぞろと外へ出て行った。
「やけに周りが静かだと思ったら……」
「魔力を消すのが上手いようだな……」
ハーフエルフを殴るのは順番性にしていたので、殴った者や順番がまだな者は、念のため外で警戒の仕事をしてもらっていたのだが、いつの間にか何の音もしなくなっていた。
そのことでセレドニオとライムンドは気付いたのだが、外の状態を見て冷や汗が流れた。
外にいた兵たちは、いつの間にか一人もいなくなっており、そこに居たのは容姿端麗な耳の長い人間がいるだけだった。
「2人を返してもらおうか?」
みんなを転移させ、何の憂いもなくなったケイは、気配を消して人族兵に見つからないように移動してきた。
この世で1番島を熟知しているケイは、敵に見つからないように移動できるルートくらいは用意しておいた。
簡単に言えば、崖に足場を作っておいただけなのだが。
多くの敵兵は住居のある東側へ集まっていたのもあり、西の海岸近くまでは見つからずに済んだ。
しかし、多くのテントが並ぶ周辺には多くの敵兵が警戒をしているのが見えた。
ここを拠点にしているのだろう。
静かに一人一人殺り、ほとんどの兵を仕留め、山のように積み上げたケイは、セレドニオたちを睨みつけた。
「エ、エルフ……」
「ほ、本当に居たんだ……」
セレドニオとライムンドの2人は、その姿に言葉に詰まる。
耳の長さから、ハーフなどではなく完全なる純血エルフが存在していたからだ。
本当に居たのだと分かり、喜びが爆発しそうだ。
「自分から来てくれるなんて手間が省けたな……」
「大人しく捕まってくれるか?」
分析してみるが、ハーフエルフの2人よりも脅威を感じない。
純血ならハーフと違ってエルフの禁忌を守っているのかと思ったが、彼の足下に転がる味方の兵たちは、皆首の動脈を斬られて事切れているようだ。
それを見ると、ハーフたち並の強さはあるのかもしれない。
2人は完全にケイをレイナルドたちより下だと判断していた。
“フッ!!”
「っ!?」
特に、油断の見えるライムンドの方が隙が多い。
それを読み取ったケイは、消えたように地を蹴り、一瞬のうちにライムンドの懐に入る。
あまりの速度に一瞬ケイを見失ったライムンドを、ケイはそのまま短刀で下から斜め上へ振り、首を刈りにいった。
“チッ!!”
「…………、危ねえ……」
ケイのその攻撃に、ライムンドは何とか躱そうと反応する。
なんとか首を斬られはしなかったが、切っ先が僅かに掠り、ライムンドは頬から血を流した。
「こいつっ!!」
それを見たセレドニオは、魔法の指輪から片手剣を出し、ケイにライムンドへの追撃をさせまいと斬りかかった。
その思惑は成功し、ケイはバックステップで距離を取った。
「痛てて……」
「気を付けろ! ハーフの奴と同じくらいの動きだ」
「あぁ!」
動きを見る限り、レイナルドとかいうハーフエルフと同等に見えた。
そのため、セレドニオは警戒心を高めライムンドへ注意を促した。
血を見て意識を変えたのか、返事をしたライムンドも魔法の指輪から槍を取り出し構えた。
「お前ら!! できる限り兵を連れてこい!」
「「「「「りょ、了解しました!!」」」」」
周囲の兵が殺られ、相手をしなくてはならなくなったセレドニオは、さっきまでレイナルドたちを殴っていた者たちに対し、兵をかき集めて来るように指示を出した。
レイナルドの時と同じように戦えば捕まえられるかもしれないが、集団で囲ってしまった方が自分たちは怪我をせずに済むと判断したからだ。
指示を受けた者たちは、捕獲したハーフエルフの見張りを残して周囲へ散開して行った。
“パパパパパンッ!!”
ケイとしては、それをすんなり行かせるわけにはいかない。
数を集められたら不利なのはこちらだからだ。
そのため、ケイは散開して走り出した兵たちに向けて、腰のホルスターから抜いた2丁の銃を連射した。
「伏せろ!!」
「がっ!?」「ぐえっ!?」「ギャッ!?」「べっ!?」「ヒッ……!?」
撃った弾はそれぞれの頭を撃ち抜き、バタバタと倒れて行った。
ほとんどの人間は、頭に穴を開けられたが、ライムンドの声に素直に反応した者が数人、辛うじて銃撃されずに済み、顔を青くしていた。
「この野郎!!」
これ以上仲間を減らされるわけにはいかない。
ライムンドは仲間を集めに行くものを狙えないように、接近して槍での攻撃をケイに始めた。
「俺たちに任せていけ!!」
「「はっ、はい!!」」
ライムンドに合わせるように、セレドニオもケイへの攻撃を開始する。
そして、生き残った者たちへ指示を出し、予知通り仲間の収集へ向かわせた。
「ヤッ!!」「ハッ!!」
穂先の左右が湾曲した刃が伸びる三叉の槍、コルセスカと呼ばれる武器で攻めるライムンド。
両刃の片手剣で刺突よりも斬撃を重視した片手剣。
いわゆるブロードソードと呼ばれる剣で、斬りかかるセレドニオ。
仲間の取集へ向かった兵たちが見えなくなくなるまで、2人の攻撃は続き、その間ケイは冷静に攻撃を躱し続けた。
そして、兵たちがいなくなるとセレドニオたちはケイから距離を取った。
「レイナルドとかいう奴より速いか?」
「そのようだな……」
まだ本気ではないとは言っても、2人同時の攻撃が全く当たる気配がない。
そのことから判断した2人だが、その考えはすぐに間違いだと気付くことになる。
「さっさと本気で来い!! 時間の無駄だ!!」
「「っ!?」」
ケイの纏っていた魔力が一段と膨れ上がり、濃密な殺気を放ってきたからだ。
それを見て唾を飲み込む2人に対し、ケイは両手の拳銃を向けたのだった。
「あぁ……、予想外だった」
拠点にしている西の海岸に着いたセレドニオは紅茶を飲んで休憩し、ライムンドは怪我の回復を終えてのんびりとしていた。
「おいおい! 貴重な研究材料だ。あまり痛めつけるなよ」
「へへ、分かってますよ」
“バキッ!!”“ドカッ!!”
「がっ!?」「うっ!?」
そこには磔になった状態のレイナルドとカルロスがいた。
そして、数人の男たちが代わる代わるサンドバックにして楽しんでいた。
ハーフとはいえ幻のともいえるエルフだが、ほどほどなら良いだろうと仲間を殺られた憂さ晴らしのために、ライムンドが許可を出したのだ。
兵たちが数発殴ると回復師が回復するので、2人へのリンチはなかなか終わることがない。
回復師も貴重なのだが、島の大半を侵略し、東の端の侵略を残すのみなため、余裕を出しているのだろう。
届いた情報によると、東には住居があるらしく、そこに獣人たちが隠れているだろうという話だ。
これまでの戦闘で分かったのは、獣人は多くて60人前後、魔人族の男も1人見受けられたらしい。
結局、エルフはダンジョン内では発見されなかったが、少数の兵が東へ向かう姿を見たといっていたため、まだかすかに望みはあるようだ。
「エルフが見つかると良いな……」
「あぁ、獣人と一緒にいのだろう」
少し離れた場所で、レイナルドたちが殴られる音をBGMにしながら、2人はエルフの捕獲と獣人の抹殺完了の報告が来るのを待つことにしたのだった。
「「っ!?」」
のんびりしているからと言って、警戒を完全に解いたわけではない。
突如異変を感じた2人は、慌てて休憩用のテントから飛び出した。
「「「「「?」」」」」
レイナルドたちをリンチしていた兵たちは、2人が急に動いた理由が分からず、殴る手を止めて首を傾げるしかなかった。
何があったかは分からないが、何か起きたのかもしれないと思い、レイナルドたちをそのままに、ぞろぞろと外へ出て行った。
「やけに周りが静かだと思ったら……」
「魔力を消すのが上手いようだな……」
ハーフエルフを殴るのは順番性にしていたので、殴った者や順番がまだな者は、念のため外で警戒の仕事をしてもらっていたのだが、いつの間にか何の音もしなくなっていた。
そのことでセレドニオとライムンドは気付いたのだが、外の状態を見て冷や汗が流れた。
外にいた兵たちは、いつの間にか一人もいなくなっており、そこに居たのは容姿端麗な耳の長い人間がいるだけだった。
「2人を返してもらおうか?」
みんなを転移させ、何の憂いもなくなったケイは、気配を消して人族兵に見つからないように移動してきた。
この世で1番島を熟知しているケイは、敵に見つからないように移動できるルートくらいは用意しておいた。
簡単に言えば、崖に足場を作っておいただけなのだが。
多くの敵兵は住居のある東側へ集まっていたのもあり、西の海岸近くまでは見つからずに済んだ。
しかし、多くのテントが並ぶ周辺には多くの敵兵が警戒をしているのが見えた。
ここを拠点にしているのだろう。
静かに一人一人殺り、ほとんどの兵を仕留め、山のように積み上げたケイは、セレドニオたちを睨みつけた。
「エ、エルフ……」
「ほ、本当に居たんだ……」
セレドニオとライムンドの2人は、その姿に言葉に詰まる。
耳の長さから、ハーフなどではなく完全なる純血エルフが存在していたからだ。
本当に居たのだと分かり、喜びが爆発しそうだ。
「自分から来てくれるなんて手間が省けたな……」
「大人しく捕まってくれるか?」
分析してみるが、ハーフエルフの2人よりも脅威を感じない。
純血ならハーフと違ってエルフの禁忌を守っているのかと思ったが、彼の足下に転がる味方の兵たちは、皆首の動脈を斬られて事切れているようだ。
それを見ると、ハーフたち並の強さはあるのかもしれない。
2人は完全にケイをレイナルドたちより下だと判断していた。
“フッ!!”
「っ!?」
特に、油断の見えるライムンドの方が隙が多い。
それを読み取ったケイは、消えたように地を蹴り、一瞬のうちにライムンドの懐に入る。
あまりの速度に一瞬ケイを見失ったライムンドを、ケイはそのまま短刀で下から斜め上へ振り、首を刈りにいった。
“チッ!!”
「…………、危ねえ……」
ケイのその攻撃に、ライムンドは何とか躱そうと反応する。
なんとか首を斬られはしなかったが、切っ先が僅かに掠り、ライムンドは頬から血を流した。
「こいつっ!!」
それを見たセレドニオは、魔法の指輪から片手剣を出し、ケイにライムンドへの追撃をさせまいと斬りかかった。
その思惑は成功し、ケイはバックステップで距離を取った。
「痛てて……」
「気を付けろ! ハーフの奴と同じくらいの動きだ」
「あぁ!」
動きを見る限り、レイナルドとかいうハーフエルフと同等に見えた。
そのため、セレドニオは警戒心を高めライムンドへ注意を促した。
血を見て意識を変えたのか、返事をしたライムンドも魔法の指輪から槍を取り出し構えた。
「お前ら!! できる限り兵を連れてこい!」
「「「「「りょ、了解しました!!」」」」」
周囲の兵が殺られ、相手をしなくてはならなくなったセレドニオは、さっきまでレイナルドたちを殴っていた者たちに対し、兵をかき集めて来るように指示を出した。
レイナルドの時と同じように戦えば捕まえられるかもしれないが、集団で囲ってしまった方が自分たちは怪我をせずに済むと判断したからだ。
指示を受けた者たちは、捕獲したハーフエルフの見張りを残して周囲へ散開して行った。
“パパパパパンッ!!”
ケイとしては、それをすんなり行かせるわけにはいかない。
数を集められたら不利なのはこちらだからだ。
そのため、ケイは散開して走り出した兵たちに向けて、腰のホルスターから抜いた2丁の銃を連射した。
「伏せろ!!」
「がっ!?」「ぐえっ!?」「ギャッ!?」「べっ!?」「ヒッ……!?」
撃った弾はそれぞれの頭を撃ち抜き、バタバタと倒れて行った。
ほとんどの人間は、頭に穴を開けられたが、ライムンドの声に素直に反応した者が数人、辛うじて銃撃されずに済み、顔を青くしていた。
「この野郎!!」
これ以上仲間を減らされるわけにはいかない。
ライムンドは仲間を集めに行くものを狙えないように、接近して槍での攻撃をケイに始めた。
「俺たちに任せていけ!!」
「「はっ、はい!!」」
ライムンドに合わせるように、セレドニオもケイへの攻撃を開始する。
そして、生き残った者たちへ指示を出し、予知通り仲間の収集へ向かわせた。
「ヤッ!!」「ハッ!!」
穂先の左右が湾曲した刃が伸びる三叉の槍、コルセスカと呼ばれる武器で攻めるライムンド。
両刃の片手剣で刺突よりも斬撃を重視した片手剣。
いわゆるブロードソードと呼ばれる剣で、斬りかかるセレドニオ。
仲間の取集へ向かった兵たちが見えなくなくなるまで、2人の攻撃は続き、その間ケイは冷静に攻撃を躱し続けた。
そして、兵たちがいなくなるとセレドニオたちはケイから距離を取った。
「レイナルドとかいう奴より速いか?」
「そのようだな……」
まだ本気ではないとは言っても、2人同時の攻撃が全く当たる気配がない。
そのことから判断した2人だが、その考えはすぐに間違いだと気付くことになる。
「さっさと本気で来い!! 時間の無駄だ!!」
「「っ!?」」
ケイの纏っていた魔力が一段と膨れ上がり、濃密な殺気を放ってきたからだ。
それを見て唾を飲み込む2人に対し、ケイは両手の拳銃を向けたのだった。
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