メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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運命の舵輪編

“王の力”と“神の業”

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 “トワイライトゾーン”の只中において、蒼太はカイン達と対峙していた、と言ってもそれは時間的にして僅か十数秒の間に過ぎなかったがしかし、それでも。

「いくぞ、メイル!!」

「ええっ!!」

 二人がその体力とエネルギーとを回復させるには十二分な時間だった、何しろここは“妖怪”や“妖精”等がその身をおく、“異界の本拠地”とでも言える世界だ、彼等にしてみればだから、その実力を思う存分発揮できる場所、そう言う風な“認識”でしかなかったのだろう。

 そのため。

「だりゃあああぁぁぁぁぁっ!!!」

 カイン達はその身に宿した妖力を遺憾なく発揮させては蒼太に対して攻撃を仕掛けて来た、先ずは動いたのは二人の内のカインだった、彼は己の体内へと障気を大量に取り入れるとそれを隅々にまで循環させては脳と肉体とを大活性化させる、そしてー。

 そのまま、蒼太へと向けて突貫すると同時に両腕で作った拳を連続して彼へと突き出し、素早い連打を浴びせ掛けて行くモノの、しかし。

「ちっくしょうがあああぁぁぁぁぁーっっっ!!!!!」

 それが蒼太へと届くことは、決して無かった、彼を中心に展開している緩やかで優しい、しかし分厚くて確かな“高次元の光のオーラ”に阻まれてしまい、攻撃そのものが全くと言って良いほど通らなかったし、その上。

「どりゃあああぁぁぁぁっっっ!!!!!」

(はあっ、はあっ、ちくしょうっ!!・・・な、なんだよっ。こりゃあぁぁぁっ!!?)

 と尚も大量に取り入れた妖気で強化した身体能力をフル活用しつつ拳を連発で叩き込み、相手の出方を窺うカインであったがその内に、妙な事に気が付いた、攻撃が光のオーラに当たって弾かれるのはまだ解るのだがそれ以前に。

 そもそもオーラに着弾する以前にその拳の妖気と拳の衝力とが完全に拡散されてしまっており、つまりは弾き飛ばされる以前に攻撃が攻撃として機能していないのだ。

「・・・・・っ!?!?!?」

(な、なにがっ。一体、どうなって・・・っ!!?)

「退きなさい、カインッ!!!」

 不可思議な現象に戸惑いつつも、それでも現状を何とかしようと攻撃を続行し続けるカインであったが、そんな彼を見かねたかのように後方から相棒の声が響き渡る。

 カインが目を向けるとそこには六角形の形に展開している“魔方陣”を顕現させて尚かつ、それを駆使してこれからその己が内に秘めたる“地獄の業火”の、それも最大火力を精製しようとしているメイルの姿があった、しかも。

 その法円もまた、単なる魔術召喚用のそれでは決して無く、その頂点を為す六つの頂きそれぞれに妖力で出来た極火力の、それも小さな球状になるまで集約された異界の炎、即ち“煉獄火焔”を配して火炎系統の呪文に対する火力の解放能力、もっと言ってしまえば“増幅能力”を極限まで高める処置が施されている特注仕様だったのだ。

「メ、メイルお前・・・っ!!!?」

「ほうっ?」

 それを見たカインは驚愕の余りに思わず声を失ってしまい、反対に蒼太は感心したかのように、それでいてやはり、何処か他人事のように落ち着き払った風体のまま、その光景を眺めていた。

(六芒星の魔方陣、“カゴメの紋”を扱えるのか。流石に“真理”を知り、それに精通しているだけの事はあるな・・・)

 と蒼太は思うが洋の東西を問わずに術式の為の方円や方陣、所謂(いわゆる)“セイマン”(五芒星)や“ダヴィデの星”(六芒星)と呼ばれるそれにはそれぞれに、歴(れっき)とした意味が込められているのでありその内、“五芒星”は主に封印や規律、制約を、そして六芒星は反対に解放や自由、放縛を表している、とされていたのだ、そしてそれ故に。

 この場合のメイルはだから、その魔法力の遠慮無い解放の為にも“六芒星”の方円を選択したのであって、そしてそこに更に炎の魔力を付与した事により火炎系魔法に対する威力の底上げーそれも著しい程の増幅を可能とするように組み直していたのだ。

「ミーア・ラ・ベール・フォント・シュディナル・・・(我が身に宿りし怒りの業火よ、その威を持ちて障壁を焼き尽くしたまえ・・・)」

「・・・・・」

 彼女が呪文を精製する間にカインは急いでその場から離れ、蒼太は何をするでも無く、ただただそのまま立ち尽くしていた、やがてー。

 周囲一帯に全てを舐め尽くすかのような凄まじいまでの火炎が渦を巻き始めてしかも、それは対象が燃え尽きても尚、燃やし続けるかのような、一種の執拗さを秘めていた。

 恐らくは練り込まれている“妖気”の仕業であろうがしかし例えば、同じ炎使いであってもメリアリアの扱うサッパリした性格の炎に比べると幾分、無慈悲と言うよりもいっそ残虐さめいた“なにものか”を、感じずには居られないが、しかし。

「・・・・・」

「・・・覚悟しなさい、蒼太」

 名前を与えて命を吹き込み、呪文を完全に顕現させて見せたメイルは改めて青年へと向き直ると続けざまに言い放った、“燃え尽きてもなを、燃え続けるがいいっ!!”と。

「“地獄の業炎”、それを数倍にまで高めた“焼術”っ。死の瞬間まで味わいなさい!!」

 そう叫ぶと最後にメイルは溜めに溜めたその業炎を、バーストセクションで蒼太目掛けて一気に解放して見せるが、それはさながら、“怒り来る炎の大津波”となって地を這いながらも蒼太へと向けて肉薄するモノの、しかしー。

「きゃあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!?」

「うわあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 次の瞬間、それは本当に“瞬間”としか言いようの無い程に、瞬きする程度の僅かな時間の合間の出来事でしかなかったのであるが二人はー。

 “見えない何か”、しかし確かに存在している力の猛烈なまでの迸りによって一気に遙かな後方にまで吹き飛ばされてしまっていた、“それ”が一体なんなのか、と言う事については、二人は当初全く理解できなかった、ただただとにかく、自分達が何某かの衝撃的なエネルギーの怒濤によって弾き飛ばされてしまったのだ、と言う事だけは知覚が出来ていたのであり、そしてそれ故に、飛ばされながらも何とかして体勢を立て直そうと試みる。

「・・・・・っ!!!」

「くうぅぅぅ・・・っ!!!」

 呻きつつも着地をすると直後に早速、自分達の状況を確認して見るモノの果たして、彼等の判断は決して間違ってはいなかった、それが証拠に全身には焼け付くような痛みが走り、見ると所々衣服は破れて彼方此方からの出血も見受けられるが、それでも。

「ぐうううぅぅぅぅぅ・・・・・っっっ!!!!!かはぁっ。ハアッ、ハアッ、ハアッ。ハアァァァ・・・ッ!!」

「はあっ、はあっ、はあぁぁぁ・・・っ!!!て、てめぇっ。今何しやがったっ!?」

「・・・・・」

 かなりのダメージを負ってしまったがしかし、ここはトワイライトゾーンの中である、取り敢えず妖力と身体の回復自体は素早く全自動で行われて行くモノのしかし、今現在においてそれよりなにより、二人の意識が向けられていたのはそこでは無かった。

 目の前にいる(と言うには随分と遠くにまで吹き飛ばされてしまっていたモノの)“蒼太”と言う青年が自分達に対して為したと思われる、何某かの行為に付いての究明が先決でありこれなくしては二人は手も足も出せない状況に陥ってしまっていた。

 現に。

 直前までは確かに、メイルの放った多大なる獄炎の奔流が蒼太を飲み込もうとしていた筈だったのでありしかし、今となってはそれすらも、綺麗さっぱり消え失せてしまっていた。

 当然、蒼太自身は全くの無傷であり静かに、元の位置に陣取ったままで佇むようにして立位を取ったまま、こちらへと向けて対峙していたが、しかし。

「・・・・・っ!!」

「・・・・・っ!!?」

(な、なんだ?あの“構え”は、いつの間に取りやがった!?)

 蒼太を何とか視認しつつも二人は思うがその時の彼はやや踏ん張りを効かせるようにして両脚を左右にしっかりと開き、両手を胸の前で合わせ、合掌するかのようなポーズを取っていた、さっきまでは確かに佇むように平然として、その場で立位を取っていた、と言うのにだ。

「な、なんなんだよ。ありゃぁ・・・っ!!」

「チャイニーズのカンフー使いが行うポーズに似ているわね・・・っ!!」

 そう言い合うと二人はそれでも、再び蒼太へと向けてゆっくりと距離を詰め始めて行くモノの、兎にも角にも近付かない事には攻撃も何も出来たモノでは無い上にこのままでいれば、またあの“何か”によってこちらが一方的にダメージを負わされる結果となってしまう訳であり、それだけは何としてでも避けなければならなかった。

「・・・・・っ!!」

「・・・・・」

(ちくしょうっ。何だってんだよ、この連中は・・・っ!!)

(用心に越した事は無いけれど・・・。正直あんまり関わりたく無いわね・・・)

 歩を進めつつも二人が思うがさっきまでの相手だったメリアリアとか言う小娘も大概だったのであるモノの今、目の前で対峙している蒼太とか言うガキのそれは遥かに度を超えて難解だった、何しろ“圧倒的なまでの光のエネルギー”と言う事意外に相手の力の正体も、その具体的な性質に至る一切が謎のままであり、それどころか思考も所作も反応も、全く知覚する事が出来ないでいたのだ。

 極め付けはあの、彼の全身から放たれている光のオーラそのものであったがそれはこの、トワイライトゾーンの中に充満している怨念、憎悪、絶望、落胆。

 そしてそれらの思念が入り交じった、“歪みと捻れのエネルギー”一切を押し退けてしまうのであり、そしてそれが、そう言った所謂(いわゆる)“負の感情の醸し出す波動”そのものを力の源にしている二人の感性をも弾き返して余計に彼等に、蒼太の行う細かい動作や心理の移り変わり等を、認識出来なくさせていたのだ。

「・・・・・」

「・・・・・っ!!」

(“トワイライトゾーンの波長”が、アイツに纏わり付いていてくれるのならば、それを通して向こうの心理や身体の状況なんかも、キチンと感じ取る事が出来るのだけれど・・・)

(あの“光のバリアー”に邪魔されちまってるんじゃあ、それも出来ねぇ。こっちはさっきのダメージがまだ、回復し切れて無いってのに・・・っ!!)

 そう思って歯軋りするモノの確かに、彼にやられた全身の傷や火傷は治癒が遅くて未だに全快していなかった、それだけではない、心なしかエネルギーの復調そのものも通常のそれよりも大分時間が掛かっている様子であり、本来であれば漲っている筈の力がまだ、完全に戻ってはいなかったのだ。

(おかしいっ、一体何が起きてるってんだ!?“オーベロン”と“タイターニア”の妖力をもらった俺達は、この中では“無敵”になれる筈じゃあ無かったのか!?)

 尚も戸惑う二人であったがそれでも、ある程度以上にまでは妖気が戻って来てはおり、何とかこのまま戦闘続行は可能なようである、互いに目配せするようにしてその事を確認し合うと二人は蒼太へと向けて接近すると同時に再び、体内で妖力を練り上げて行き、彼に対する敵愾心を隠すこと無く滲ませるが、しかし。

「・・・・・」

 それに対して蒼太は何一つ、反応する事はしなかった、ただひたすらに瞳を閉じて両手を胸の前で合わせたままで、何事かを呟くかのような仕草をして見せただけだったのだがそれが二人の“かん”に障った、特に“何をブツブツ言っていやがる!!”と、蒼太に対する一種の“恐れ”も加わってカインがまず先に動き、そしてそれに釣られる形でメイルもまた、突進を開始するモノのそれがー。

 あと僅かで光のオーラの先端と言うか、トワイライトゾーンの醸し出す“波動”との境界面にまで届こうかと言う時に再び。

 “それ”は起こった。

「があああぁぁぁぁぁーっっっ!!!!?」

「ぎゃあああぁぁぁぁぁーっっっ!!!!!」

 またもや駆け抜ける“何か”によって二人は遙か後方にまで吹き飛ばされてしまったのであり、そして“それ”に飲まれた彼等の身体は以前の時とは比べ物にならない位に消耗して傷付いてもいた、全身には思いっ切り殴られたかのような衝撃と痛みが走り、彼方此方が焼け爛れている。

 身体への余りの負担の為だろう、暫くの間は息をする事も侭ならなくなってしまい、衣服は破れて其処此処から血が流れ出している。

「ぐうぅぅぅぅぅううううう・・・っっっ!!!!?」

「あぁぁぁぁぁあああああ~・・・・・っっっ!!!!!」

 強烈すぎるダメージのお陰で今度は着地をする事も叶わずにそれでも、何とか受け身だけはとってそのまま地面に転がり落ちるが、“まただ”と思わずカインは唸った、前回の時と同様に、今回もまた攻撃を全く知覚出来なかったのでありそれどころかその前兆も、技を精製してゆく感覚も、それを解き放つ瞬間すらも、何もかも認識する事が出来なかったのである。

「・・・・・くあぁぁぁっ!?ハアッ、ハアッ、ハアッ。ハアァァァ・・・ッ!!」

「ゼェッ、ゼェッ、はあっ、はあ・・・っ!!く、くそぅっ。一体何が・・・っ!!」

 宙を仰いで寝転ぶだけしか出来ないでいる相方に対して、まだ僅かながら身動きの取れる余力が残っていたカインは首から上だけを何とか動かして、蒼太の立っている方向を見るモノのそこにはもう、彼の姿も形も無くて、その気配すらも一瞬、確実に飛んでしまっていた、その直後ー。

「はあっ、はあっ。はあぁぁぁ・・・っ!!?」

「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハア・・・ッ!!!」

 彼等から見てちょうど足下方向の先、2、3メートルの付近に突然にして蒼太が出現したのであり、思わず“瞬間移動でもしたのか!?”と、カインは己が目を疑うモノの、しかし。

「・・・・・」

「ハアッ、ハアッ、ハアッ。ハアァァァ・・・ッ!!」

「はあっ、はあ・・・っ!!く、く・・・っ!!」

 現実問題として確かに、蒼太はその場に顕現していたのであり、それは決して見間違えようの無い事実であった。

「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアァァァ・・・ッ!!」

「はあっ、はあ・・・っ。く、くそっ!!」

 “ちくしょうっ!!”とカインは呻くが正直に言って、自分達が蒼太と言う青年一人に対して手も足も出せない事は事実であり、その事がカインをして心底悔しがらせると同時に一種の恐怖を掻き立てさせる。

「なんなんだ・・・!!」

 “てめえは一体、なんなんだ!!”とカインは告げるが蒼太は別段、それに応える様子も無くてただただそのままそこに静かに立ち続けていたのであり、何事か憂いを秘めたような瞳で黙って彼等を見つめ続けているだけだった、しかし。

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!?」

 少しの時間が経過した時に、蒼太は突然、腰から剣を抜き放つと次の瞬間、それを地面へと向けて突き刺して見せたが実はこの時、カインは奥の手として取っておいた、反応式トラップ呪術“奈落の砂地獄”を発動させようとしていたのであり、もしこれが上手く行った暁にはこの世界の物質全てが砂へと変換されると同時に、時空間上に開け放たれている、巨大なる虚無への入り口“常闇の穴”へと向けて吸い込まれて行く仕組みとなっていたのであり、そしてそうなれば当然、彼等自身は勿論の事、同じ世界に存在している蒼太も、そしてその恋人であるメリアリアも、何もかも全てが失われてしまう事態となっていたのである、それをー。

 その時も蒼太は一瞬、早くに察知してカインの動くより先に、剣の持つ神力で呪術を浄化、殲滅してしまい結果として、カインはこれで何もかも全て、打つ手と言う打つ手が完全に無くなってしまったのだ。

「・・・何者だ?」

 事ここに至ってようやくカインは目の前の青年が、只者では無いことを認めざるを得なくなったがその声は恐怖と言うよりもむしろ、畏怖と驚愕とに震えて霞んでしまっており、鈍色(にびいろ)の眼を彼へと向けて開け開いたまま、必死になって問い掛け続けた。

「お前は一体、何者だ?何でこっちのやる事なす事が、一々事前に解るんだ!?」

 “応えろっ!!”とカインは叫ぶモノのしかし、それでも蒼太は何一つとして言葉を発する事無く、ただただひたすら沈黙したまま両者を黙って見つめ続けているだけだったが実は、蒼太にはカインやメイルの行う動作や反応の全てが前もって見えていたのだ。

 と言うのは“高次元的な存在(例えば霊人や神々のような)の住まう世界”と我々のそれとでは時間のあり方そのものがそもそも大きく異なってしまっており、例えばこの三次元的世界においてはそれはあくまで、“過去から未来”へと向かって一直線に流れて行く、とされているモノの、それに対して高次元においてはどうかと言えばそれは例えば“今、この瞬間を認識している自分自身”を起点として、それに関わる様々な“過去、現在、未来”の姿、世界線の全てが一緒くたになって存在している訳であり、つまりはそこに住まう意識体(即ち神々や天使等)は居ながらにしてそれらを、“ある程度までは”知覚、認識する事が出来るのである。

 ちなみに感じ取る事が出来る範囲はそれぞれの、存在のレベルによって異なって来るモノの当然、“神人”と化している蒼太もまた、そのような能力を働かせたり、モノの見方をする事が可能なのであって、現に彼は“今、この瞬間”を起点とした1分~2分程度先の未来と過去とを同時に感じ取る事が出来たのだ。

 そしてそれ故に、カイン達のやろうとしている事が解ったり、また本来であれば、現実世界と隔離されている筈の異世界やら異次元、果ては平行世界の異変や変動などもキャッチ、分析する事が出来たのであって、そしてそんな蒼太にとって現状、一番の気掛かりなのが実はカイン達のそれであった。

 勿論、蒼太は油断や手抜かり等は微塵たりともしてはいなかったし、そしてその上でハッキリと言わせてもらえるのならば自分やメリアリアの身の安全が堅実なモノである事は、様々な見地から見てまず間違いなく、現に彼が感じ取る過去にも現在にも未来にも、危ういビジョンは見受けられなかったモノの、しかし一方で。

 カイン達に関しては全く以て別だった、このまま事態が進めば恐らく、“彼等はそうなってしまう”可能性が極めて高く、現に蒼太の第六感(のみならず第七感、第八感もだが)が“このままでは不味いぞ”とハッキリとした警鐘を鳴らし続けていたのだ、しかし。

「・・・くそうぅぅっ。くそ、くそっ!!」

「・・・もうよせ、カイン」

 それでもなおも拳を作り、それで地面を叩きながらも更に“トワイライトゾーン”の妖力を取り入れようとしていたカインに対して蒼太は初めて口を開いた。

「お前は、いや“お前達”はこの“トワイライトゾーン”と呼ばれる空間の正体を、些かも認識してはいないようだな」

「なんだとっ!?」

 “聞け”と、自らの言葉になおも激昂を露わにする難敵に向かって神人と化した蒼太はそれでも静かに語り掛けるがそもそも、この“トワイライトゾーン”に充満している妖気と言うか、障気の正体と言うモノは人々の切り捨てられた夢の残滓、形を為すことが出来なかった思いの欠片、そしてなによりかによりー。

 それらのなれの果ての凝縮体がエネルギー化したモノなのであり、それは例えるならば絶望、欲望、暴虐、不満、不信、怨念、憤怒、嫉妬、憎悪、反感、寂寥、悲哀、無念さ、口惜しさー。

 そう言ったいわば“憎しみと悔恨、或いは誹謗と悶絶の残留思念”そのものであって、そしてそれらが“狭間の世界”とでも言うべき虚無が支配していた空間へと溜まりに溜まって力場と化し、そこへ更に意識が宿り、遂には形を成したモノこそが“妖怪”や“魔物”と呼ばれる存在となるのであるが、しかし。

「・・・まあ、もっと正確に言ってしまうと。“妖怪”と呼ばれているモノの中には“自然界の精霊”も含まれている場合があるから、彼等に関しては必ずしもこの分類にカテゴライズされる訳では無いけれど。“魔物”に関しては間違いなく当たっている。彼等の内、大部分はこうやって、人々の歪んだ欲望や、行き過ぎた残虐さ。要するに強烈なまでの“負の感情”から生み出されるモノなのだ」

 “そしてそれらが”と蒼太が続けるモノの、この世界に存在し続ける事により、その低俗で不浄のエネルギーは更にその濃度、強さを増して行く。

 元々がそう言った思念の集合体である彼等は常にその身に横暴かつ貪欲なまでの、荒々しい波動のオーラを纏わり付かせているわけであり、そしてそれらがこの“トワイライトゾーン”に続々と流入し続けている、人々の“負の感情のエネルギー”と混じり合う事で生み出されているのがこの世界に充満している妖気であり、障気である、と言う事だった。

「彼等の中には元々は、れっきとした存在だった者達もいる」

「・・・・・」

「・・・・・」

「ところがそう言った者達の内でも時折、自分自身を見失ってしまう者達がいるのだ、それが」

 “時として魔物や妖怪へと、零落してしまう場合もある”と蒼太は続けるモノの例えば、我を忘れる程の怒り、憎しみに限界を超えてそれでも尚も身を焦がし続けた者達や、歪んだ性癖や異常な衝動に端を発する底無しの欲望に塗れてそれに溺れ続ける内に遂にはその事しか考えられなくなってしまった連中の、なれの果ての姿がそれであり、そしてそう言った存在は早い話、宇宙に対してある宣言を、それをずっとし続けるのと同じ事を自分でしている事に気が付かないでいるのだ、と言う。

 人間を例に取ると、それは早い話がつまり、“私は人間である事を止めます”と言うそれであって、しかもそれを人間自身が言う、と言うことは即ち、“私は貴方(宇宙)から与えられている、最高の愛の形を捨てます”と言うのと全くの同義語なのである。

 何故ならば人間というのは本来、持って生まれた高い霊性を活かして自分自身を進化させたり、またはそれを顕現させて、世の中に知らしめる事を目的として創造された存在であり、そしてその為に最も相応しい愛の形、バランスに調整されて生み出された結果、今の姿形になったのであって、その霊性を捨て去る、と言うことは即ち、そう言う事以外の何物でも無いからだ。

「それが人々の欲望から生み落とされたモノにせよ、または人であった者が零落した姿にせよ、“魔物”と言うのは基本的には“愛を忘れてしまった存在”、もしくは“そう言った存在のなれの果ての姿”なんだよ。さっきも言ったけれども“トワイライトゾーン”から生成された者と言うのは基本的には“切り捨てられた夢の残滓”であり“形を為せなかった思いの欠片”。要するに“否定と諦観”、“不満と絶望”、そしてなにより“拒絶と恐怖”、それらのもたらす結末の、“事象エネルギー”としての波動思念の集合体。所謂(いわゆる)“無念さと渇望の象徴”みたいなモノだからね」

「・・・・・」

「・・・・・」

「先程から見ていると・・・。お前達はずっとそんなエネルギーを取り込み続けているようだが。そんな事を繰り返していれば、やがてどうなるかは少し考えれば解るだろう」

 蒼太の話を、黙ってずっと聞いていた二人の内で、先に口を開いた者がメイルだった、流石に呪術師であり、尚かつカインよりは頭の回転も感性も鋭い彼女は事態の重さに気が付いた様子である。

「“歪みの頂点”、“悲しみと憎しみの終わりの無い輪舞曲(ロンド)”。そして・・・」

「・・・・・?」

「・・・・・」

 “究極の自己否定”と力無く告げる相棒を、カインは怪訝そうな顔で見つめていたモノの、蒼太の話を総合するとこの世界に充満しているのは要するに、夢破れた人間の放つ、絶望だったり不満だったり、悲しみだったり恐怖だったり。

 そしてなにより、そう言った者達の迎えてしまった結末の“事象としてのエネルギー”、即ち“失敗してしまった”と言う現実世界での軌跡、或いは思念そのものが波動化されてミックスされているわけであり、そしてー。

 更に言うならばそこには、事を為せなかった、至らなかった自分自身への憎しみや後悔、己が運命に対する強い憤怒や苛立ちと言った、要するに“自分自身に対する深い悲しみ、不信、攻撃の怨念”そのものが含まれている訳であって、そしてそう言ったモノの行き着く先は、いつもただ一つの答えに集約される、即ちー。

 “自分自身を許せない”と言う、自分という名の愛の結晶に対する拒絶と否定、それであった。

「自分自身の、否定・・・っ!!!」

「そうだ」

 その言葉に蒼太が改めて頷くモノの確かに、人間時には“己自身を省みる”、と言うことは間違いなく必要な事ではあるのだがしかし、一方では実際問題として余りにも自分自身を苛ませること、所謂(いわゆる)“強すぎる自責の念”と言うモノはなにより、その人自身の運命を歪めて不幸のドン底へと叩き込む一番の“特効薬”なのであって、要するにその人の持っている魂の煌めき(霊性の波動)を下げてしまう働きをするのだ。

「そこへ持ってきて“行き過ぎた異常性癖者”が抱え込んでいる、汚らしい獣欲や鬱屈した妄想、浅ましい衝動と言ったモノまでが一挙にプラスされてしまう訳だから尚のこと余計に性質(たち)が悪い。特に彼等のような、堕落した精神の持ち主の放つ波動と言うモノは素直さの欠片も無い、それでいて面倒臭いまでの粘り気の含んでいる、本当にどうしようも無いモノなのだ。しかもそれが自分自身への信頼が揺らいでいる時期と言うか、所謂(いわゆる)自暴自棄になっている所へやって来るわけだから一層、“真実なる己”と言ったモノを見失ってしまうんだよ、感覚が欲望一色に染められて麻痺して行ってしまうんだな。そしてその結果として“このままでいいのか”だとか“自分は一体、何者か”と言った、本来であれば“進化の為の気付き”や“自分自身の行動、思考の反省、是正”と言った、一連の行為のために必要な、最低限度の疑問自体が湧かなくなってしまうのだ。それが一体、どう言った事に繋がるのか、と言うとつまりは“このままではいけない”だとか“自分で自分を救ってやろう”と言った意志そのものがなくなってしまう、と言う事を意味するんだよ」

「・・・・・」

「・・・・・」

(・・・どうやら解ってもらえたようだな)

 と蒼太が思うがその証拠に目の前の二人からは戦意が喪失されて行く様がハッキリと見て取れた上に、その意識も外側に、と言うよりもむしろ、内側に向けて働き出しているようだ、恐らくは自分達の人生に対する“葛藤”と言ったモノがようやく芽生え出して来たのだろう。

(それでももう、遅すぎるな)

 と、敢えて口には出さなかったが蒼太は内心で感じるモノの、恐らくはこの二人が今まで奪ってきた人やエルフの命と言うモノは、100を下らないだろうし、踏み躙ってきた数は更にその何十倍にも達する筈である、仮に今から本気で償いの道を歩んだとしても果たして、彼等の一生が終わるまでに為せるかどうか、疑問である。

 しかし間違いなく二人は今、“真っ当な人間”(と言うよりもエルフ)としての第一歩を踏み出したのであり、なによりかによりこれ以上の罪や過ちを繰り返す事は無いだろう事が伺える。

「・・・・・」

 “まあいい”と、それでも蒼太はそう考えるが少なくとも相手を殺してしまうよりも救ってやる事の方が、教え導く事の方が比べ物にならない位に難しい事なのであり、そして取り敢えず、とは言えどもそれが為せた、と言うことは即ち、“神人化”した意味があった、と見做されるべきである、満足すべき結果であろうと見て良いのではなかろうか。

 しかし。

(今回も、終わったかな・・・)

 そんな事を考えていた、その矢先にしかし、蒼太は直ぐさま頭を振っては悲しみに、無念さに暮れる事になった。

「間に合わなかった、か・・・」

「・・・・・?」

「え・・・?」

 その言葉に一瞬、キョトンとした表情を浮かべて彼を見上げる二人であったがそんな彼等を尻目に蒼太は一気に、その場からかなり後方にまで大掛かりな跳躍を行って距離を取るモノの、するとその直後にー。

 “異変”は起こった。

「うわあああぁぁぁぁぁっ!!?」

「きゃあああぁぁぁぁぁっ!!!」

 突如としてカインとメイルから悲鳴が響き渡ると同時に、二人の体からはそれまでに無いほどの強さで障気が一気に噴出し始め、それが彼等自身へと向けて、渦を巻いて纏わり付いて行くモノの、するとその内にー。

 彼等の身体が徐々に異形のモノへと変化して行き、それはもはや完全に、人の姿では無くなっていってしまった、やがて一連の事象がなりを潜め、妖気の奔流が収まった時に蒼太の目の前に現れたのは歪で不気味な雰囲気を放つ、二匹の巨大な鬼蜘蛛であり、元の二人の見る影等は微塵も残されてはいなかった。

「・・・・・っ!!?」

(な、なんなのっ!?あれは・・・っ!!!)

 その光景を、蒼太よりも更に遙かな後方から眺めていたメリアリアも思わず驚愕してしまうモノのその時、彼女が見たモノは全長が二十メートル近くはあろうかと言う8本足の化け物であり、その頭と思しき部分に付いている、真っ赤に光る多数の目が一層の恐怖と悍ましさとを、彼女をして引き立たせていた。

 その一方で。

「ギチギチギチ、ギチーッ!!?」

(・・・う、嘘だ嘘だっ!!)

「ギシギシギシッ、ギシギシ・・・ッ!!!」

(い、嫌あぁぁっ。こんなの嫌だあああぁぁぁぁぁっ!!!)

 “彼等”は必死に言葉を話そうとするモノのしかし、それがそれまでのような、“言語のリズム”を刻むことは決して無かった、ただただ前方に向けて開け放たれた巨大な口と牙の織りなす、歯軋りのような音だけが連続して響き渡り、それが辛うじて、彼等が何かを訴えようとしているのだ、と言う意思表示である事を、見る者が見れば見て取れるだけに過ぎなかったがしかし、この時ー。

 皮肉な事に、と言うべきか、彼等の最大の難敵にして障害であった筈の蒼太だけが唯一、変わり果ててしまった二人の意思を、その悲痛なまでの嘆きの波動をしっかりと聞き届けていた、“神人化”する際に受けさせられた修業の成果で高次元の存在や己自身をも含めた人やエルフ、果ては動植物や鉱物と言った、万物に宿る霊性を正しく感じて認識する事が出来るようになっていた蒼太にはだから、彼等の放つ慟哭が、必死なまでの訴状の願意が頭の中へと直接に伝わって来るモノの、これこそがあの日、あの雨に濡れていた新宿の街中において、その姿形を波長ごと異国の少女のそれへと変えられてしまっていたメリアリアを、それでも蒼太が感じ取って見付ける事の出来た要因であった。

 勿論そこには連綿と続く輪廻転生の只中において、繰り返し繰り返し、彼女との間に織り成して来た強い“霊性の絆”があった事は否めないモノの、そう言った幾重にも重なり合った確かな軌跡が根源同士の共鳴を引き起こさせたのであり、そしてそれを蒼太の顕在意識は見逃さなかった、“自身の本質”たる神の部分との間にしっかりとした繋がりを確保していた蒼太は人間のままでもある程度ならば、“直感”と言う形でそれらを受け取る事が出来たのであり、つまりは彼は己自身の“魂”でもって彼女の“それ”をしっかりと見極めたのであって、そしてその結果として、無事にその後の運命を紡がせる事が出来たのである。

「・・・・・」

(やむを得ないな・・・!!)

 そんな彼にしてもしかし、目の前の“それ”を相手にするのは中々に厄介だった、別段“殺してしまえばいい”と言うのであれば、あの程度の存在ならば幾らでも何とかする事は出来るモノの、しかしこれが“救う”となるとそう容易くは行かなくなる。

 彼等はこの世に肉体を持って活動している、れっきとしたダークエルフ達なのである、それが変貌を遂げてしまった、と言う事は即ち、肉体を構成している原子の性質やあり方、そしてその身に宿した遺伝子の持つ配列情報等が全て軒並み、入れ替わってしまっていることを物語っているのであって、これを元に戻すことは不可能では無いにせよ、容易な事では決して無かった。

「・・・・・」

(これが例えば、霊魂や精霊と言った存在ならば対応はまだ楽なんだ、何しろ彼等にはその存在の本質たる“中核”はあっても“実体”が無い。だからその内側に溜まりに溜まってしまった負の感情を、罪穢れのエネルギーを浄化、中和してやれば解決は付く。直ぐに元の“光”に戻る事が出来るのだけれど・・・)

 これが“肉体”やら“実体”を持っている相手となると、中々にそうは行かなくなるのだが元々、肉体と言うモノは、早々に急激な変化と言うモノを起こせないようになっており(もっと言ってしまえば一度に変化を起こせる領域に“限界”が設定されているのであり)、例えば“筋肉トレーニング”を行うにせよ、“ダイエット”を行うにせよ、そう簡単には結果を出すことが出来ないのである。

 それは少しずつ少しずつ、長い年月を掛けて鍛えられたり、また或いは蓄えられてしまった脂肪を磨り減らしたりして行くしかないのであるが、それでもへこたれずに努力を続けて刺激を与え続けているとある領域を境として突然、爆発的な変化や進化、所謂(いわゆる)“ブレイクスルー”を引き起こす事があるのであり、そしてそこまで達した者のみが筋力の大幅なパワーアップや、もしくは元の清々しい姿を取り戻す事が出来るのだ。

「・・・・・」

(正直に言って肉体は確かに、この世で生きて行くためにはとても貴重で有り難い反面、その維持や成長、変化等が必要な場面で中々に、面倒臭い所があるのは事実だけれども・・・。だけど一方でそれは、“下手な変質”やら“意図した訳では無い異常状態への変貌”等から“保護”されている、と言う一面もある。これは特に一般の若い人なんかに強く表れる傾向だけれども、人間と言うのは未熟で無知で蒙昧な部分を多く含んでいる生き物だから気が付かない内に自分の意識や肉体を、変な風に弄くり回してしまう事がある。現にあの二人はそれをやってしまった)

 蒼太は思うが恐らくは、彼等の身体は取り込まれ続ける妖力に対して必死の抵抗を続けていたのであろうモノのしかし、それがある一定のレベルを超えた瞬間、遂に限界が訪れてしまった、もはや二人はその姿形を魔道のそれへと堕としてしまったのであり、そしてこうなってしまったからにはもう、後は“時間の問題”でしかない。

(“肉体が変貌を遂げた”、と言う事は即ち、“頭の中身や意識の状態もまた変質してしまった”と言う事だ)

 蒼太はそう判断するモノの確かに、今はまだダークエルフとしての自我が残されているだろう二人であったがそれでも、そう遠くない未来には全てが“魔物のそれ”へと乗っ取られて行く事になるのであり、そしてそうなった瞬間、二人は本当にダークエルフでもなんでも無くなっていってしまうだろう。

 即ち、“自分自身の本当の姿を忘れ”、“自分が何者であったのかも思い出せなくなり”、“その夢も愛も希望も慟哭すらも”、何もかも全てを失い尽くしてしまうのである、そしてその代わりにー。

 手に入れるのが醜悪な姿と飽くことなき貪欲さ、そしてー。

 ダークエルフだった時には手に入れる事が出来なかった、多種多様な能力や力である、もっともそれは変異した後の肉体や妖力の為せる技であり、そして彼等は“それ”を取り込めば取り込んだ分だけ、ドンドンその強さを(もっと言ってしまえば妖力を)増して行く事が出来るのであるが、しかし。

(・・・それは同時に、“歪みと捻れ”とを強大化させて行く、と言うことだ。ますます“愛から遠ざかって行く”と言うことだ!!)

 蒼太は思うがそれも考えてみれば当たり前の話であって、“魔物化”が進めば進むほど、ソイツはソイツでいられなくなって行く、何故ならば魔物の力の源と言うのは人々の発する絶望、拒絶、憎悪、欲望の思念、それらが滅茶苦茶に混ざり合って凝縮された“負のエネルギー”そのものであって、そして強すぎるそれらと言うのは人に、自分自身を見失わせると同時にますます、そう言った低俗でドス黒い波長の世界へと溺れさせ、一体化させて行く事になるのだ。

 そんな事を繰り返していれば、いつの日にかその者は完全に自分が自分であることを忘れ果ててしまうのであり、そしてそれは=で“自分が自分でいられなくなること”を意味するのであって、つまりはそれこそが“魔物が魔物としてパワーアップを果たす”と言う事の、真の姿なのである。

(そうなってしまえばもう、救うことはどうやっても出来ない、下手をすれば根源の中枢たる魂そのものが消滅させられてしまう。その前に・・・!!)

 蒼太は思った、“虚無と穢れに満ちた運命の呪縛から解き放ってやろう!!”と。
ーーーーーーーーーーーーーー
 読者の皆様こんにちは、ハイパーキャノンと申します。

 今日は(と言うよりも、もっと正確に申し上げさせていただきますのならば“今回もまた”と言い換えさせていただいた方が良いのかも知れませんが)皆様方に、少しだけお話ししたいことが御座います、どうか少しだけ、お付き合い下さいませ。

 まず一つ目なのですが、作中でチョロッと出て参りますけれども、“魔物が魔物としてパワーアップを果たして行く”、その真の姿と言いますか、行き着く先と言う場所がどこにあるのか、御存知ですか?

 それは“消滅”と呼ばれている現象なのですが、これは早い話がこの世もあの世も含めたこの、宇宙全体から完全に抹殺されてしまう、と言うことです(存在の根源生命体たる魂を消されてしまう、と言うことです)。

 理由は至って簡単で(これは作中でも説明させていただきましたが)、“魔物が魔物としてパワーアップをする”、と言う事は=でますます“自分が自分であることを忘れて行く”、と言う事なんです。

 彼等がパワーアップを果たすためには“障気”、“妖気”と呼ばれるモノを吸収しなければなりませんが、その正体や、そう言った行動の意味する所はもう説明させていただいた通りです、即ちそれこそが、“歪みや捻れのエネルギーを自分の中に取り入れる”と言う事であり、そしてそんな事を繰り返していれば、繰り返す度に“自分が自分でいられなくなって行く”、と言う事であり、そしてそれはもっと言ってしまえば“自分で自分の存在を、際限なく否定してゆく”と言う事と同義語なんです(要するに同じ事なんです)。

 その行き着く先がなんなのか、皆様方にはもうお解りだろうと思います。

 二つ目に移りたいと思いますが、この“王の力と神の業”と言う話において、蒼太君は自らの奥底に眠っている“永久なる神秘の輝き”、即ち“神の部分”と直結することで“神人化”を果たす訳ですが、実はこのパワーアップにはどうしても、彼を神人化させなければならなかった理由と同時に、その方法自体についても“元ネタ”となったある話がございます。

 まずはその理由から説明させていただきますけれども、それは“蒼太君が波長と姿を変えられてしまったメリアリアちゃんを、それでもキチンと感じ取る事が出来たのは彼女の本質生命体である魂自体を見極める事が出来たから”と言う、二人が再会を果たした際の(もっと言ってしまえば“運命の糸”が用意してくれた、“再会”と言う名の奇跡をどうして蒼太君がモノにする事が出来たのか、と言う事への)、皆様方への説明責任を果たすための処置でした(つまりはこの“神人化”についてはあの時から考えておりました)。

 そしてもう一つの、パワーアップ方法の“元ネタ”になったお話に付いてなのですが、申し訳御座いませんがこちらは少しだけ長いものとなります、どうか最後までお付き合い下さいませ。

 一応、最初にお断りさせていただいておきますが、これからするお話はある呪い師の方から(もっとハッキリと言ってしまえば“陰陽師”の方から)知人が聞かせてもらった話を、又聞きさせていただいたモノです(なので記憶が少し曖昧な所も御座いますが、それでも話の大筋は覚えております)、その前提でお聞き下さい。

 皆様は“太平洋戦争”を御存知ですか(と言うよりも最近は世に言う“艦これブーム”等があった為に名前くらいは知っている、と言う方が多いと思われますが)?

 そうです、今から凡そ75年程前に、当時の日本国であった“大日本帝国”と“アメリカ合衆国”との間で行われた、三年八ヶ月にも及ぶ戦争の事です。

 今でこそ、“大事な同盟国”であり“仲の良い盟友”なこの二カ国も当時は血で血を洗う、敵意と憎しみを向け合う間柄でした。

 そして話はもはや日本の“敗戦”が、ハッキリとした形を成して迫っていた、1945年の7月から始まりますがこの時、日本の軍部は来るべき“本土決戦における具体的な行動計画”、要するに作戦に付いて頭を悩ませておりました。

 “事件”が起きたのは、そんな最中の事でしたがその日、(もうこの時は首相を辞任していたそうですが)“東条英機”と言う人が、当時の天皇陛下であらせられた“昭和天皇陛下”を、その宮城(現在の“皇居”)に訪ねられました。

 そして開口一番にこう言ったそうです。

「陛下お願いで御座います、どうかお力をお貸し下さい」と。

 どう言う事かと申しますとこの時、アメリカは日本に対して決定的な打撃を与え、尚かつその首脳部を討ち滅ぼす為に、ある兵器を主体とした空爆作戦を実行しようとしていたのですが、その“最初の”ターゲットとなっていたのが天皇陛下のお住まいのある(そして軍首脳部や政治家達の詰めている、日本の事実上の中枢部でもあった)帝都、“東京”でした。

 当時東京は度重なる空襲において、市街地自体は既に壊滅状態へと追いやられていましたが、それでも尚もアメリカ軍は“その兵器”を、東京へと投下させるつもりだったのです。

 その“兵器”とはなんなのか、もうお解りの方もいらっしゃられるかも知れませんがそうです、“原子爆弾”、所謂(いわゆる)“原爆”です。

 実は当初、アメリカ軍は日本を“無条件降伏”に追いやるための処置として“3発の原爆”を用意していたらしいのです(この事からもお解りかとは思いますが実際は、“無条件降伏”等と言う生易しいモノでは無かったと思います。即ち日本国そのものの完全なる破壊と日本人の殲滅自体を目的としていたのでしょう。だから本来であれば避けるべき、政治軍事の中枢たる東京を破壊し尽くし、首脳部を含む住人達全てを皆殺しにしても一向に構わなかった、と言う訳です)。

 そしてその、最初の第一弾として東京が狙われる日が刻一刻と近付いて来ていました、もはや猶予はありません。

 ちなみにこの時、もはや日本軍にそれを防ぐ余力は残ってはいませんでした、開戦から三年八ヶ月の間に陸軍は戦力を磨り減らし、海上を防御すべき“連合艦隊”も壊滅しており、そしてその航空兵力すらも首都上空を、満足に守れる威を失い尽くしておりました(要するに“制空権”も“制海権”も全く失われてしまっており、日々上空を、好きなように乱舞するアメリカ軍機に対して為す術も無かったのです)。

 この様な状況下において、頼みの綱はたった一つだけしか残されてはいなかったと言います、それこそが天皇陛下であり、もっと言ってしまえば陛下がお持ちになっておられる、高い霊力そのものに他ならなかったのです。

 最初(東条英機元首相から詳しい話を聞かされる前の事でしたが)、陛下はお耳を傾けられたり、首を縦に振ることはなさならなかったそうです。

 と言うのは陛下はお怒りだったそうです「私はお前達に“出来る限り開戦は避けて和平の道を探るように”と言った筈だ、それを今更何なのか」と、しかし。

 東条英機元首相はそこで初めて事の重大なるを奏上申し上げたそうです、即ち“もうすぐ原爆を搭載したアメリカ軍機(要するに“B29”です)が東京へと向けてやって来る、そうなれば無辜の民が皆殺しにされてしまう”と。

「陛下お願いします、どうかB29を“消して”下さい」と。

 話を聞いた陛下は少し逡巡されましたが、結局は頷かれて、皇居において(と言ってもこの時の皇居は既に空襲で焼かれてしまっており、厳密にはそれとは別に地下に作られていた“御書庫”と呼ばれている仮住まいの一室において)祈りを捧げられたそうです、それもただ漠然と祈った訳ではありません。

 “聖徳太子”(この方も正体に諸説あるのですが)のお顕(あらわ)しになられた“秘密の呪(まじな)いの真言”の書かれている巻物をお持ちになられ、それを精神を極限にまで集中させた状態のままで何時間も何時間も、ただただひたすら読み上げられ、唱え続けられたそうです、その結果。

 “あること”が起きたのだと言いますが、その時ちょうど、その最初の原爆を搭載したB29はマリアナ諸島のサイパン(かテニアンか、どちらかだったと思いますが。うろ覚えで申し訳御座いません)の飛行場を発進して一路、東京へと向かっておりました。

 その周囲には、日本軍機に間違っても手出しをさせないようにと、相当な数の“P51マスタング”(アメリカ軍の誇る、太平洋戦争時における世界最優秀戦闘機。これに太刀打ち出来るモノは、日本軍においては陸軍の“疾風”か海軍の“紫電改”しか存在しなかった)が直衛に付いており、とてもでは無いですが迎撃は不可能だったそうです、ところが。

 編隊がもう少しで小笠原諸島上空を通過する、と言うタイミングでそれは起きました、なんと編隊の中核たる、“B29”がまるで霞が消え失せるかのようにして突然、その腹に抱えた原爆もろとも姿を消してしまったのだそうです。

 当然、編隊は大混乱となりしかし、肝心要の爆撃機(と原爆)を失ってしまった事と、戦闘機隊の残存燃料等の問題等から結局は、基地へと帰投する事となった訳でしてその結果、兎にも角にも東京への原爆投下は何とか防ぐ事が出来た、と言われています。

 所で皆様はどうして東条英機元首相が、天皇陛下の元へと懇願しに行ったのか、疑問に思われはしませんか(例えばこれが高野山の密教僧だった、とかならばまだ話は解るのですが)?

 実はこれにはれっきとした理由があるのですがそもそも、天皇家と言うのは古来より天と地、即ち神と人との間に立ってその両者を結ぶ者、或いは天神地祇に祈りを捧げ、国家と人々の安らかなるを願う者として存在し続けていました。

 要するに天皇家とは、古来においては非常に優れたシャーマンであり、そう言った霊力、感性を併せ持っていた一族であったと考えられます(更に言わせていただきますと、それらを駆使した上で為すことが出来る、とされる“神々と繋がることの出来る秘密の儀式、教え”を受け継いでいた一族だったそうです)。

 これは歴史書研究家の中にも、仰られている方がいらっしゃられる訳ですけれども元々、日本人という人種は素朴でお人好しな所もありましたけれども、それでも基本的には非常に信心深くて感受性が高く、また“アニミズム”即ち“万物に神が宿る”という考え方、感性を持っていました。

 争いよりも協調、協力を(ようするに“和”を)根本において昔から自然と共存し合い、お互い支え合って生きる、そして“物事を活かし切る”、そう言うことが当たり前のように出来る民族だったようなのですが、一方でそんな彼等を(即ち、私達のご先祖様方を)率いていく為には、或いは彼等から信頼されてその支持を集めるためには優れた指導力、軍事力と並んで高い霊力を保持している事が絶対条件だったと思われます(万物に宿りし神の声を聞き、そう言った存在に祈りを捧げる、要するに彼等と繋がり合える事が、上に立つ人間としての絶対条件だった筈なのです)。

 繰り返しますが日本人は非常に信心深くて感性の鋭い民族です(少なくとも元々はそうでした)、そんな彼等が信用したのはやはり(もしくは信用を得るためには)、“神によって選ばれた存在”、或いは“神によって認められ、神と一体となることが出来る存在”、それはもっと言ってしまえば即ち“神に受け入れられた存在”でなければならなかった筈なのです。

 それも一般人からだけではありません、古代においては大小様々な豪族達の支持を得なければなりませんでしたがそう言った連中を黙らせて、従わせる為にも(要するに彼等に認めさせる為にも)高い霊能力と言うのは必須だった筈なのです。

 何故なのか、と申しますと同じく人々を束ねる存在であった彼等だってそれを持っていたかも知れませんし、仮に本人に顕現はしていなかったにしても、それでもそう言った血筋や能力、要するに“素養”を受け継いでいる人物は多かったのでは無いでしょうか。

 その理由と致しましては節目節目で行われて参りました“お祭り”の存在がございますが、古代においての“お祭り”とは恐らくは、現代のそれとは比較にならないほどに厳かで大切なモノだったと思われます(何故ならばそれは神々様やご先祖様を初めとして、自然に宿る様々な精霊達の話を聞いたり、あるいは彼等と一体化する為の、そしてその結果として五穀豊穣や国家安寧を願う為の、重要な儀式であったと思うからです)。

 そのため、豪族の当主本人か、そうでは無かったとしてもやはり一族の誰かが中心となってそれらは執り行われていた、と考えられるからです(そしてその為にもやはり、豪族の家系そのものに“霊的な能力のなにか”、要するにシャーマンとしての才覚が求められていたと思われます)。

 そしてそう言った豪族達の側には、ある意味では彼等よりも遥かに“そう言った事柄”に対する理解と感性、そして霊的能力の備わっている協力者(要するに“呪術者”です)がいた筈であり、つまりは古代の天皇家の当主(当時は“大王”ですとか、もっと前には“スメラミコト”と呼ばれておられましたが)に求められていたモノと言うのは、そう言った連中を凌ぐ、またはそこまでいかなかったとしてもやはり、彼等をして“この人ならば信じられる”、“この人ならば安心だ”と言う、要するに彼等に“認めさせるだけの”霊的な素養や人格を持っている事だった、と思うのです(単に武力的なそれだけではなくて)。

 繰り返しますがそうでなければ“古代日本人”の心理上、そしてまた性格上の問題からも、安心して己の全てを委ねたり、下に付いたりする事は絶対に出来ないでしょうし、そしてだからこそ、天皇家と言うのはそう言った霊的な能力や感性をその血筋に秘めている、と思われるのです(実はこれについては前々から、複数の霊能者であったり、占い師の人々からも聞かされた事があるのです)、しかし。

 それだけではまだ、“大王”、“スメラミコト”には足りません、それに加えてもう一つの、重要なるエッセンスが存在しているのですが、それこそが蒼太君の“神人化”と言うパワーアップの元ネタになったお話の、中核をなすモノなのです。

 それは所謂(いわゆる)“現人神”と呼ばれている存在、及びその存在の意味する所の“呪術的な重要さ”そのものなのですが、ここで一度、皆様方に少しお聞きしたいのですけれども、皆様方は“現人神”と言われる言葉を聞いた事は御座いませんか?

 実はこれこそが、その高い霊能力とならんで“本来の意味で”天皇陛下を天皇陛下たらしめていた、大切な要因(ファクター)だったのですが、ちょっと考えてみていただきたいのですけれども高い霊力と霊格を誇り、尚かつ良識と良心とを持ち合わせている“存在”が自分自身を“神である”と認識、自覚した時。

 その根源に宿りたる霊力と言うのはまさしく、遺憾なく発揮される筈であり、そしてその状態で古より伝わりし、“秘密の呪いの真言”を(本当に威力のある呪文を)正しく唱えられた時、何がおこるのか、と言うことです。

 そうです、もう皆様方はお気付きでしょうが、“現人神”と言うのは単なる、権力者の権力基盤を盤石なモノにするための政治システム等では無いのです、あれはまさに、霊力を保持している人間が神と一体となり、そしてその結果として、その持って生まれた霊力を(もっと言ってしまえば“神力”を)120%発揮して、国難やら天変地異やらが襲い掛かって来た時に、それを収める為の“呪術的システム”そのものであったのです。

 東条英機元首相は、その事を知っており、そしてだからこそ、最後の頼みの綱として昭和天皇陛下の元に、急いで馳せ参じたのでしょう(これは別に、難しい話ではありません。何故ならば権力者達の元には様々な情報が入ってきますし、特にそれが重要なモノであればあるほど、前任者からのキチンとした引き継ぎが為されている筈だからです。それに彼等には必ずと言って良いほどそれぞれを裏から支えたり、守って導く神官、僧侶、修験者、陰陽師の様な存在が付いていて、そう言った人々からも“天皇家についての真実”と言う事を、密かに教わっていたのだと思われます)。

 しかし、と皆様方は疑問に思われるかも知れませんが、“どうして東京を守り抜かれたのならば、陛下はその後の広島と長崎はお守りにならなかったか?”と。

 答えは“これだけの呪いを発動するのに心根込めて祈り続けてしまった為に、その精神力をすっかり使い果たされてしまわれていたから”だそうですが確かに(これは私も現実的に“祈り”を捧げた事があるので解るのですが)本当に集中して祈りを捧げると精神や体力と言ったモノを相当に消耗してしまいます、それは皆様方に解りやすくお伝えするのならば、“テスト前の勉強を思いっ切り集中して、しかもそれを自分にかなり無理をさせて、普段よりも大分長時間やってしまった”時と同じ感覚とでも申し上げさせていただければ宜しいでしょうか?とにもかくにも、つまりは祈りを捧げるのにも限度、限界と言うモノがあるのです。

 現にこの時の陛下はクタクタになられてしまい10日間程は満足に御公務を行われる事も出来ない有様だったそうです、そしてそうしている内に(要するに陛下が御回復なされる前に)広島と長崎がやられてしまった、と言う事らしいのです。

 余談ですがちなみに、どうして広島と長崎が狙われたのか、と申しますとそれには幾つかの理由がございました。

 まず広島の方から見て行きますが、こちらは主に二つありましてその一つが“西軍大本営”の存在だったのです。

 と言うのは当時、日本陸軍はその全軍を(いずれやって来るであろうアメリカ軍との決戦において、全軍を効率的に運用する為に)東日本を防衛するための主体となる“東軍”と、主に西日本の防衛を担当する“西軍”とに分けてそれぞれを統括させており、そして西軍の本部即ち“大本営”が置かれていた場所こそが広島だったそうなのです。

 そして更に言わせていただきますと当時、広島には市街地にある工場で兵器の開発、製造に欠かせない“酸化鉄”(済みません、うろ覚えで申し訳ないのですが、兎に角何らかの“酸化された物質”)を製造、発送していたそうでして、それ故に狙われたのだ、と言う事でした(ちなみに長崎の方は海軍の“潜水艦艦隊”の基地があって、その為だったそうです)。

 話を元に戻しますが、要するに現人神とはそう言う呪術的な制度だったそうで早速に、それを物語に取り入れてみたのです。

 それもただ、聞いた話を取り入れただけではありません、実は私もある理由から“祈り”や“瞑想”と言った物事を実際に自分で何度も行って、それなりに体験致しました、つまり蒼太君の“神人化”と言うのはその体験に基づく現象、考察である訳です(より具体的に言いますとそれは“水子霊達に対するお詫びの祈り”であったり“神々に対する光と救済の祈り”であったり。はたまたは“神々やご先祖様方、そしてなにより“自分自身”に対する“感謝の祈り”であったりしますけれども、今回はその中でも特に、“神々やご先祖様方に対する感謝の祈り”と言うモノを元にして解説、お話を進めさせていただきたいと思います)。

 その事をまずはお断りさせていただきたいのですが所謂(いわゆる)、“祈り”、“瞑想”と言ったモノに集中して行きますと、ある現象が生じていきますけれどもそれは“不思議な恍惚感”とでも申しましょうか、とにかく集中すれば集中した分だけ、とても“暖かな何か”に包まれた感覚になるのです、そして精神や心は落ち着いているのに頭は凄くスッキリとしてきて、何だかとても嬉しくて有り難い気持ちになるのです。

 それを更に続けて行きますと、それは形容が難しいのですけれども言うなれば、“物凄いまでの心地好い確かさのある、力強い安らぎ”に包まれるのです(だけど心や体には活力が漲る、と申しますかとにかく気力、要するに“やる気”に溢れて行きます)、また時折、それに対するイメージが降ってくると言いますか、心の内側から実感を伴って湧いて来たりするのですけれども、それは例えるならば上は己の中心から宇宙の根源まで伸びており、反対は下は地球の中心までをも貫いている、巨大でしっかりとした“光の柱”とでも申しましょうか、とにかくその中に自分がいて溶けている、宇宙や地球の中心と繋がっている感覚を覚えるのです。

 そしてその状態になりますと“もっと、もっと”と感謝すること、その事自体が気持ち良くて心地好くて堪らなくなり、それを更に己自身に求める状態になるのです。

 その結果、何が起きるのかと申しますと本当に、意識が“それ”だけに集中して行くのです(理由、理屈等は関係ありません、ただただひたすら、光の中に溶けるイメージと言いますか、兎にも角にも有難くて有難くて仕方が無くなり、それを無意識の内に繰り返すようになって行くのです)がこの時、意識の状態なのですが本当にクリアでして、実に心地好いのです(本当に“感謝”、“光”に集中し尽くすために余計な雑念が生まれないのです)、先に述べさせていただきましたが本当に、自分自身がそれと一体化して行くような、溶けて行くような物凄い恍惚感、安心感と同時にしかし、体には活力が漲っているような状態になります(もう一つ、“体感的な時間と言うモノが物凄く早く過ぎ去って行く”のです、私は“感謝を捧げる祈り”を神々やご先祖様方に対して行うときは、基本的に“一時間”をその一区切りとしているのですがそれが“もう一時間経ってしまったのか”と思うことが何度かあったのです)。

 そしてとても、身体全体がポカポカとして暖かくなるのですが残念ながら、私が体験出来たのはここまでです、しかし

 この先の事は、自分の体現を元にした想像ですとか、もっと上手の方々から聞かせていただきました話を参考にして書かせていただきますけれどもそれによると自意識、即ち“顕在意識”が安らいでとても静かな、それこそ“眠りに近い状態”になると言われていますがこの時、自分は意識の全て、感覚の全てで“それだけを”、即ち“根源なる光”、“無限の暖かさ、安らぎ”と言ったモノを感じ、認識するようになるらしいのです(要するに意識や感覚、そして心と言ったモノが全て残らずそれらに向けて“集中し尽くして行く”訳です)。

 それはまさに、“万物との一体感”であり“自分が愛に包まれている”、“愛そのものなんだ”と言う事を自覚するに至る瞬間らしいのですが(要するにそれら全てが神の愛の結晶、エネルギーそのものなのだ、と言う認識、実感が生まれるらしいのですが)この時、それと一体化している“己の心の内側”にすらも、それを感じる事が出来るようになる、と言われています。

 それはどう言うことかと申しますと即ち、己自身が神の愛の顕現であり、神に包まれている、神そのものなのだ、と言う認識を得ることが出来るようになるわけであり、そしてその結果、自らを“神である”と自覚する事が出来るようになる、との事でした。

 人間は元々、誰しもがその身に神々の分御霊(わけみたま)、即ち分身である“神霊”を宿している、と言われています、これを自覚する事が出来るかどうかが、そしてそこに繋がる事が出来るかどうかが“神人化”における最大のポイントなのです。

 天皇家の方というのは本来、これが出来ていたらしくて、そう言うことも相俟って、その身に宿す霊力を遺憾なく発揮する事が出来ていたらしいのです。

 申し訳御座いません、話が長くなりすぎましたので一旦、ここで切らせていただきますが、これにはまだ、続きがあるのです(読者の皆様方の中には“セイレーン編”においてチラッと出て参りました、“合衆国(ステイツ)”の創り出した“AIエンペラー”と呼ばれる最新兵器があったのを記憶されておられる方もいらっしゃられるかも知れませんが、要するにその正体に関係している事なのです)。

 その事に付きましては後日また、お話しさせていただこうかと思いますけれどもその前に、最後に一つだけ付け加えさせていただきたいのですけれども、こんな話をしておいてなんなのですが、私は宗教と言うモノは、非常に危険である、と考えております。

 これは実際に、霊能者の方から聞かせていただいた話なのですが、宗教と言うのは、あれは絶対に良くないそうです。

 どうしてか、と申しますと、あれは人間を霊的に隷属させて束縛し、堕落させる特効薬のようなモノらしいのです(その究極的に行き着くところは自分で物事を考えようとせずに“神様がこうしろとおっしゃったから”ですとか“神様の為にこれをやるのだ”となってしまうからだそうでして要するに、自分の内側にでは無くて、外に他所の神様を求めてしまう、悪い意味で自己の中心が自分では無くなってしまう、と言うことでした。そしてそれは=で、はまり込んで行けば行くほど“自分自身を見失ってしまう”と言うことに繋がるとの事でした)。

 何か問題が起きた場合でも自分で全力でそれに取り組もうとせずに、もしくは乗り越えようとしたりせずに“神様助けて”となってしまうからだそうですが、こうなってしまいますとその存在がちっとも進化、成長をしなくなる上に自分自身の能力を磨いたり活かしたりと言った、要するに自分自身の中に宿っている霊性の誇る、真なる力や輝きを発揮する事が出来なくなり(そう言った事をしなくなり)、それは=で“自分自身の否定”に繋がってしまうからだそうです(自分で自分が光り輝くのを止めてしまっている事になるからだそうです、つまりはその人間がその人間として与えられている人生を、自分の力で一生懸命に生きる、と言う事をしなくなってしまうからだそうです)。

 神様は仰られたそうです、“我々は人間の崇拝など望んではいないよ”と、“そんな事をされても困ってしまうよ”と。
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