メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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夫婦の絆と子供への思い

夫婦の絆と子供への思い 3

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 カッシーニ邸の三階部分にある、蒼太達一家の為に与えられた部屋の内の一室で。

 白のバスローブに身を包んだ青年は真夜中に一人、ロウソクの薄灯りを頼りに酒を嗜んでいた、それまで一頻り、愛妻淑女メリアリアの夜の相手をしていた彼はセックスの疲労から彼女が眠りに就いた後で自らも無意識の領域へと精神を落とし込んで行ったモノの、それから暫く経ってから喉の渇きを覚えて起き出し、書斎へとやって来たのである。

 今回は“シーバスリーガル”の中でも特に、スモーキーさを抑えて優しい甘味の広がる“ミズナラ・ブランド”の、それも60年モノが手に入ったので早速、ウィスキーをロックで体内へと流し込んでいたのだ。

 ちなみにロックに使われている氷は勿論、エルヴスヘイム製の純氷であり、それはグラスの中で青い輝きを放っていて、それが溶ける音と言うのがまた神秘的であり、尚且つ味わいも抜群に良かった。

「・・・・・」

 蒼太がグラスを揺らす度に“カラン、カラン・・・!!!”と音を立ててロック・アイスが中で蠢く。

 ウィスキーの琥珀色と純氷の蒼光色が混ざり合い、しかもそれがロウソクの薄灯りに照らし出されて非常に幻想的な世界を形作っていたのである。

「・・・・・」

(外は、雨か。いいな、雨の滴る日と言うのもたまには風情があって・・・!!!)

 窓ガラス越しに響き渡って来る雨音に耳を傾けつつも、青年が再びウィスキーを口に運ぼうとした、その時だ。

 不意に廊下から近付いてくる人の気配を感じて外へと続く出入り口のドアを注視しているとー。

「あ、やっぱりここだったのね・・・?」

「メリー・・・」

 重厚な二枚扉の内、片方だけが“ギイィィ・・・ッ!!!”と押し開かれて行き、そこには彼の最愛の妻であるメリアリアの姿があった、彼女もまた蒼太とお揃いの白のバスローブ姿で心無しかホッとしたような表情を浮かべている。

「お酒を、飲んでいるの・・・?」

「ああ。“シーバスリーガル”の“ミズナラ”、その60年モノさ。一緒に飲むかい?」

「飲みたいわ・・・!!!」

 夫の言葉に頷くとメリアリアは真っ直ぐに彼の元へとやって来た、そしてー。

 その逞しい肉体に撓垂れかかるようにして抱き着いては自らの肢体を彼に預ける、そう言う時のメリアリアは本当に嬉しそうな、それでいて心安らいだ面持ちをしており、またそう言う雰囲気を全身からも醸し出していたのだ。

 その体からは不要な力みが抜けて芯からリラックスしており、如何に彼女が蒼太に心を許しているのかがハッキリと窺えた。

「・・・飲める?」

「ううん。あなた、飲ませて・・・?」

 普段は凜としたメリアリアだったがしかし、二人きりになると途端に蒼太に良く甘えて来た、その仕草と言うのがまた可愛らしくて両の瞳を閉じて青年の頬に自らのそれを摺り立て、またその身を彼の肉体に強く擦り付けるようにする。

 そうして静かな、しかしトロンとした声色で蒼太の耳元で囁くのであるモノの、そんな彼女の糖蜜のような真愛の発露と抱擁とに、蒼太もまた満更でもないと様子で応えた、自らの口に酒を含むとそれを口移しで彼女に飲ませる。

 そのままー。

“んむ、はむっ。んちゅ、じゅるっ。じゅぷぷぷ、じゅるじゅるっ。じゅぞぞぞぞぞぞ~っ♪♪♪♪♪ぷふううぅぅぅっ!!?ぷふぅーっ、ぷふぅーっ、ぷふぅーっ。ぷふううぅぅぅ・・・っ❤❤❤ん、んちゅっ。じゅぷじゅぷっ、ぢゅるるるるるる~っ♪♪♪♪♪レロ、クチュ。レロレロレロレロ、クチュクチュクチュクチュ・・・ッ!!!ちゅ、ちゅぱっ。じゅるじゅるじゅるじゅるっ、じゅるるるっ。じゅるるるるるるるるるるるる~・・・・・っっっ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤”

“ん、んむっ。はむっ、んぷっ。ちゅるちゅるちゅるちゅるっ、じゅるるるっ。じゅぞぞぞっ!!!じゅるじゅる、じゅぷじゅぷっ。レロレロ、クチュクチュクチュクチュッ。ちゅ、ちゅぱっ!!!じゅるじゅるじゅるじゅるっ、じゅるるるっ。じゅるるるるるるっ!!!!!”

 二人は濃厚な口付けを開始して酒共々唾液を啜り合う。

 特にメリアリアのそれは執拗で激しく、まるで青年の分泌液を一滴残らず吸い尽くそうとするかのようにゴクゴクと音を立てて飲み干していった。

 途中からは鼻呼吸すら疎かになってしまい、彼にしがみ付いたままで思わず大きく気吹くモノの、そんな彼女の自分に対する気持ちと情熱が嬉しい蒼太は段々とキステクの本領を発揮させて愛妻淑女を感じさせ、かつ蕩けさせていったのである。

「んむっ、はむっ。んぷぷぷっ、じゅるじゅる、じゅぞぞぞぞぞぞ~っ♪♪♪♪♪ぷはああぁぁぁっ!!?はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ。はああぁぁぁ・・・っ❤❤❤も、もうあなたったら。激し過ぎぃ・・・っ♪♪♪♪♪」

「あはははっ。ごめんごめん、メリーが可愛くなっちゃってさ・・・!!!」

「もうっ、本当に・・・っ!!!ちゅ、ちゅるっ。ちゅぱっ、じゅるじゅるっ。じゅるるるるるる~っ♪♪♪♪♪」

 堪りかねて一旦、唇を離したメリアリアであったが、既に胸の奥に火が点いてしまっていた彼女は蒼太の事が愛しくて愛しくてどうにもならなくなってしまっており、すぐに自身から再びとなる接吻を再開させてはまたもや夫を貪りに掛かるが、そうやって暫くの間、合間合間に酒を入れつつも夫婦でキスを堪能していた二人はやがてどちらともなく口付けを解いて真正面から見つめ合う。

「ねえ蒼太・・・」

「ん・・・?」

「有り難う・・・。アシルとレナの事」

「ああ・・・」

 “良いんだよ、そんな事”と、少し照れたように顔を赤らめながら感謝の言葉を口にする愛妻淑女に対して青年はあっけらかんと言い放った。

「僕だって、あの子達の父親だもんね。たまには君や子供達の役に立たなきゃな・・・」

「たまにはだなんて、そんなこと・・・!!!」

 “そんなこと、ない・・・”とメリアリアは呟いた、“私、見ていたの・・・”とそう告げて。

「あなたがアシルとレナに、私から借りていったエンゲージ・リングを手渡すのを。そしてあの子達にキチンと愛を伝えてくれた事も・・・!!!」

「・・・・・」

 “投影伝達魔法を使ったの・・・”と彼女は続けるが、これは本来ならば遠く離れた場所で起こっている出来事や情景等を、法力の込もった水晶玉か何かを媒体にして映し出し、それを更に壁などに投影させて観察する為の魔法であった。

 メリアリアはこれをダーヴィデ夫妻から受け継いで修得して以降、時折夫や子供達の動向や状態を知る為に、また彼等を見守る為に密かに心を配り、用い続けていたのである。

「そうか。どうりで時々、誰かに見られているような感じがした訳だね。相手に悪意が無かったから見て見ぬ振りをしておいたんだけど・・・。君だったのか」

「あなたから“エンゲージ・リングを貸してくれ”と言われた時にはビックリしたけれど・・・。でもまさか、あの二人の為にこんな使い方をするなんて・・・」

 “思ってもみなかったわ・・・?”と結ぶメリアリアの左手の薬指にはあの、金でも銀でも無い不思議な鉱物で出来ている、エンゲージ・リングが光っていた。

「ねえあなた・・・」

「ん・・・?なにさ、メリー」

「どうしてこんなに格好良くなっちゃったの・・・?」

 そう囁くメリアリアであったがこの時の彼女は理屈抜きに感動し、また感心していた、蒼太の我が子に対する接し方や理解力、そして問題を解決する導き手としての底力に、である。

 “蒼太は凄いな”と心の底からそう思い、かつまた“自分の夫はなんて頼もしい人なんだろう”、“なんて優しくて暖かみのある人なんだろう”と誇らしくもなったが、あのお陰でアシルとレナは“自分達もちゃんと愛されていたんだ!!!”、“ちゃんとお父さんとお母さんに見向いてもらえていたんだ!!!”と言う事を言葉では無くて心で実感し、そしてそれ故にささくれ立った精神が癒され、立ち直って行ったのだ。

「蒼太は凄いわ?私もちゃんとお母さん、しなきゃ・・・!!!」

「・・・・・?君だってちゃんとお母さん、してるじゃないか」

「・・・ううん。私、全然ちゃんと出来て無かった。あの子達の苦しみを、解ってあげられて無かったもの」

 “それに・・・”と彼女は尚も言葉を綴った、“私が頑張れているのはあなたの存在があったからだわ?”とそう言って。

「あなたがいたから、頑張れたの。やって来れたの!!!あなたはいつも私の事を支えてくれたし、助けてくれたわ?それが凄く嬉しかったの、安心できたの。あなたは凄く立派だったわ、頼もしかったわ?だからね?私もあなたに“負けないように”って、“置いて行かれないように”って、そう思って・・・。だけど私、私・・・!!!」

「・・・だけどあの子達を最終的に救ったのも君だよ?君はずっとあの子達の事を、愛し続けていたじゃないか。思い続けていたじゃないか、心を砕き続けていたじゃないか!!!その君の愛情が彼等にダイレクトに伝わったんだよ?だからあの子達を救う事が出来たんだ。・・・正直に言って僕だけの力ではとてもの事、あの子達を救ってあげる事は出来なかった。間違いなく君のお陰だよ」

「あなた・・・」

 “胸を張って良いよ?”と応じて告げる蒼太の言葉に少しだけ、胸の内が軽くなるのを感じたメリアリアはまた再び、蒼太にソッと寄り添った。

「有り難う、あなた・・・!!!」

 本心からの感謝を述べると青年に抱擁されたまま愛妻淑女メリアリアはその腕の中でもう一度、“格好良いよ、蒼太・・・”とウットリとした顔付きのままにそう呟いた。
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