仕事を解雇されたら、愛する彼女に監禁されました

れん

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走りながら、走るのに支障がない程度に衣服を整える。整えすぎると怪しまれるので、慌てて逃げてきたように見せるのが重要だ。

かけられたら汚汁も拭き取りたかったがあえてそのままにして、事前に確認しておいた交番に向かって走る。

ホテル街にはトラブルが付き物だから、交番がすぐ近くにあるのはありがたい。

「た、助けてください!」
「ど、どうされたんですか!?」

常駐していた2人の男性警察官が驚きながら対応してくれた。

衣服の乱れた女性が駆け込んできたら、普通驚くよね、うん。

「上司に、お酒で酔わされて……わた、私……」
「……もう大丈夫です。早く中へ。すぐに女性警官を呼びます」

駆け込んで、涙ながらに酔わされてホテルに連れ込まれたと訴えると、私の対応をしていない警察官がどこかに連絡し、それからそれほど待たずに女性警察官が着てくれた

「すみません、お待たせしました……これは、酷い……怖かったですよね。もう大丈夫ですから。ゆっくりで大丈夫なので、お話、聞かせて貰って良いですか?」

誰になにをされたのかなど、質問されたことを話をして、汚汁のかかった服や下着の写真を撮られる。

「この写真は捜査以外には絶対に使用しませんので」
「……はい。それと、これも……」

スマホのデータと、偶然持っていたボイスレコーダーで録音した音声データを提出し、被害届を提出。

「あの人、他の人にも手を出していたみたいで……それだけじゃなく、私の恋人をパワハラで追いつめて、彼は精神を病んで……」

余罪があることも忘れずに伝える。

「なんて非道な……解りました。絶対捕まえて、裁きを受けてもらいます!」


警察の心証は最悪になり、取り調べるために職場にも来るだろう。

これであの男は職場にいられない。折角築いた社会的信頼も、立場も、明るい未来も、ぜーんぶ潰してやった。

私の最愛を追いつめて、酒で酔わせて部下の恋人を寝取ろうとする強姦ゲス野郎には豚箱がお似合いだ。

いや、それは豚に失礼か。豚は鳴き声以外は食べたり肥料にしたりと有効利用できる。あの男は百害あって一利なし。煙草のように一時の快楽も与えてくれない、害しかないのだから。

「その、汚された衣類なんですが、証拠物として提出していただきたいのですが……今は着替えなんて持っていませんよね。後日で良いので、提出していただけませんか?」

「はい……わかり、ました」

「長々お話してすみません。疲れましたよね? 遅い時間なので、家まで送ります。何かありましたら、遠慮なく連絡してください。こちらからもなにかあれば連絡しますので……その、職場の方にもお話がいくかもしれませんが、ご了承を」

家まで送ってくれるというので、それに甘えて車に乗り込む……パトカーとか乗りたくないと言ったら、覆面パトカーに乗せられた。

たしかに、見た目は普通車だけどさ……。

「疲れた……」

早くツムに会いたい。癒してほしい。頑張ったって、褒めてほしい。

重い体を引きずってドアの前で深呼吸。
気持ちを切り替えてドアを開けると彼のニオイがする……ああ、やっと帰ってこれた。

「ごめんねー、ツムたん……遅くなっちゃった~」
「ああ、お帰り」

酔った振りして明るく振る舞う。

知られないならそれに越したことはない。
汚物の処理は目に見えない場所で。汚いものをわざわざ見せる必要性も知らせる必要もない。

彼は鎖で繋いでいるから、玄関までは来てくれないけど、お帰りと言ってくれる相手がいるのは嬉しい。

「今日も、飲んできたんだ」
「うん……ごめんね、職場の人がどうしてもっていうから」
「大丈夫だよ。付き合いも大事だから」

作り笑いでも、笑顔で迎えてくれた。
そんな彼の胸にダイブする。

「ツムたん……アヤメ、疲れちゃった……」
「ああ……お疲れ様。今日もいっぱい、頑張ったね」

なにも聞かず頭を撫でて、私を労ってくれる。

「んんー、ツムの手、気持ちいい……撫で撫で、落ち着く。ニオイも好き……ああ、癒されるー」

思いっきり彼のニオイを吸い込みながら顔をこすりつけて甘える。ああ、幸せ……このために、頑張ったんだ。ツムとあの男。生物学上は同じ男なのに、どうしてこんなに違うのだろう。

安心して気が緩んだ私はウトウトしてしまい、それを察した彼にベッドに横にされた。

いつものように、ツムが私を着替えさせるために服を脱がしていくと、「え、これ……」という声が聞こえた……ああ、そういえば、あれに汚汁、かけられたんだっけ。

「なんだ、これ……」

彼が狼狽えていると、私のスマホが震えた。

あの男がメッセージを飛ばしてきたのだろうか……ブロックすると怪しまれて行動がエスカレートすることもあるからと警官に言われ、そのままにしていたっけ。

寝たふりをしながら様子をうかがうと、彼は震えながら私のスマホを手に取った。

最近あの男が盗み見しようとするからロックしてあるんだけど……パスワード、解けるかな?

すごい唸ってる……解除するのを躊躇しているのか、単純に解らないからか……あ、解除できたみたい。やっぱり、ツムの誕生日じゃ解りやすかったかな。少し嬉しそう。

さぁ、あの男のメッセージを見て、ツムはなにを感じて、どう動くんだろう。怒りと嫉妬で犯されて、服従させようとするかな? それはそれでありかもしれないけど、首輪をつけられて飼われるような人だからなぁー。

「アヤメ……」

いろいろと確認を終えた彼が私を呼んだ。

「なぁーに、ツムたん?」
「…………え?」

呼ばれたから起きたのに、彼は驚いた顔でこちらを見ている。

「なんでツムたんがアヤメのスマホを持ってるのかなー? ロックも解除してるし、勝手に中まで見ちゃって……いけないなーー」
「いや、これは、」

にやにや笑いが止まらない。

慌ててるのと、怒られると思って顔を青くしてるツムたん……いい。すごくいい。可愛い。

「最近アヤメの帰りが遅かったり、飲んで帰ってくる回数が多くなったのが心配になっちゃった? 相手が男だったらとか、嫉妬してくれてる? 嫉妬は嬉しいんだけど、アヤメはツム一筋なのに……疑われるのは悲しいなー。それと、悪いことしたツムにはお仕置きをしないとね」

ああ、壊したいほど可愛い。

本当はもう少し落ち着いた時にするつもりだったけど……ドッキリ作戦、今からヤっちゃおっか。

「お仕、置き?」

「そう……えーっと、たしか……あ、あったあった。これを今から、ツムにつけちゃいます!」

大型犬がつけるような革製の首輪と、散歩用のリードを見せる。

「これをつけて、これから夜のお散歩に出ようと思います! もちろん、お仕置きだから拒否権はないよ?」

顔をひきつらせて逃げたそうにしているのに、逃げようとしない。従順で、可愛い。

「うん、似合うよツムたん……ああ、なんだか凄くグッとくる。良いね、すごく良い」

年上の恋人が首輪着けられて俯いているの、スゴクイイ。

あの男に汚されて、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすためにこのまま可愛がってあげたいけど、ぐっと我慢する。

時刻は日付が変わる少し前。
あまりハードなことは自重しなきゃ。
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