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7章

オカンの心配

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 いつもの時間にパッと目が覚めると、またもやグレンとジルベルト君に挟まれて寝ていた。
 お昼ご飯も井戸の中だと食欲が湧かなくてパンを少しかじっただけで、夜ご飯も食べていないからおなかはペッコペコ。

『主様、起きたの? もう大丈夫なの?』
『んん……あるじぃ……』

 クラオルは起きるなり心配してくれて、グレウスは寝ぼけながら擦り寄ってきてくれる。
 ん~! 可愛い! 私の癒し!

「なんともないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
『今日は休まなきゃダメよ? 主様ったら、すぐに無理するんだから』
《そうよ! 休まなくちゃ!》

 心配性なクラオルとグレウスにプルトンとエルミスにまで賛同されてしまい、今日は強制的に休日に決まってしまった。
 今日一日、魔力使用を禁止されてしまいゆっくりするにもコテージにも行けていない。

「ねぇ、コテージもダメなの?」
『ダメよ! また何か思い付いて作業に没頭したり、キッチンで何かを作ることになりそうだもの! 今日は大人しく休むのよ!』

 そりゃあ、思い付いたら作りたくなっちゃうじゃん? 実験面白いし……

あるじは僕達とゆっくりするのは嫌ですか?』
「そんなことないよ!」

 うるうるとグレウスに見つめられ、私はあっけなく陥落した。
 そんな可愛く聞かれちゃったら「喜んで!」と言いたくなってしまう。
 お昼ご飯もラゴーネさんに頼んだらしく、私は本当に何もしなくていいらしい。

 ネラース達も呼んでベッドでモフモフ。こう何もしないと眠くなってくる。日本にいたときのグータラ寝休みみたい。
 モフモフに包まれてウトウト、本を読んではウトウト。完全に活動スイッチはオフになり、グータラスイッチがオンになってしまった休日だった。



 翌日、活動許可が下りたので朝ごはんを食べた後ノロノロと動き出した。
 一度スイッチが切れると、どうもスイッチが入りにくい。このまま引きこもりたくなる。

 お買い物しようと一階に降りると、ラゴーネさんにも大丈夫か聞かれてしまい、「お買い物の代行もしております!」と言われてしまった。ものすごく心配してくれていたらしい。
 大丈夫だと説明すると「お気をつけて」と見送ってくれた。

 オフモードが抜けきらない私はボーッとしながら歩いて二回ほどつまづいてしまい、問答無用でグレンの腕の中に抱えられてしまった。
 申し訳ない。気を付けます。

 この街は野菜が少なめでピリクの街より少し高い。やはりお土地柄なのかもしれない。
 その代わりと言っていいのか……お肉の種類が多く、私達が狩ったマーモットタイプとは別に蛇肉や熊肉もあった。兎肉もラビ・ホーンラビ・ランドラビ……と数種類あって、微妙に味や肉質が違っているらしい。

 グレンがマッサージを受けた際に仕入れてきたネタの植物は、サボテンとアロエだった。これもがっつり大量購入して店員さんに驚かれた。
 ラゴーネさんに教えてもらった商会にも行ってみたけど、こちらは特に欲しいものがなかった。



 次の日、教会でパパ達に街を出る挨拶をして、手紙を送ろうと冒険者ギルドを訪ねた。

「もう、お体の方は大丈夫なのでしょうか?」
「へ?」
「一昨日宿り木亭に伺いましたら、臥せっておられるとお聞きしたのです」
「大丈夫ですけど、何か用があったんですか?」
「それが……ご領主様がセナ様に会いたいと仰られておりまして」

 え……なんで領主? もしかして井戸の件?
 私が不思議がっているのがわかったのか、ギルマスが慌てて説明してくれた。

 領主が私を呼び出そうと宿に使用人を向かわせたけど、ラゴーネさんに取り次いでもらえなかったらしい。それでギルマスなら私を呼び出せるんじゃないかとギルマスに頼んだけど、私が休んでいると言われたと。

「そもそもなんの用があっての呼び出しなんですか?」
「井戸の件だと思うのですが、詳しいことはこちらも知らないのです。申し訳ございません」

 よくわからないことは関わりたくない。
 領主からの使いも毅然と断っちゃうラゴーネさんが素敵すぎる!
 領主に会うつもりはないとギルマスに伝えて、用件を済ませてギルドを後にした。

 領主の呼び出しがあったのなら、ちゃっちゃと街を出た方がいいかもしれない。領主が権力を使ってラゴーネさんを脅さないとも限らない。
 午後はご飯の作りだめをするつもりだったけど、買い物も終わってるし今出たところで問題はない。
 一度宿に戻ってラゴーネさんにお礼と街を出る挨拶をすると、「道中にお召し上がりください」と大量のパンとおかずをくれた。
 ラゴーネさんはそのまま街の入り口までお見送りしてくれて、兵士の人達と一緒に私達が遠く離れるまで手を振ってくれていた。

「ラゴーネさんがいい人で良かったねー」
『そうねぇ』
「領主がラゴーネさんに変なことしないといいんだけど……」
『大丈夫だと思うわ。主様が街を出たことが問題になるなら、ギルマスも関わってくるもの。さすがに冒険者ギルドにケンカは売らないと思うわ』
《それにセナちゃん、王様への手紙で宿屋のことベタ褒めしてたじゃない。何かあって、そのことが王様にバレたら王様が怒ると思うわっ!》

 確かにベタ褒めって言えるくらい絶賛する内容の手紙を送ったけど、アーロンさんがそこまでしてくれるかな? ただ私が気に入った宿なだけなのに。


〈王都に向かうんだろ?〉
「うん。アプリークム国に向かうにはちょっと大回りになっちゃうけど、王家の許可が必要なダンジョンも気になるし、顔だけでも出しておいた方がいいかなって」
〈ダンジョンの地図が見たい〉

 国境の兵士さんにもらった地図をグレンに渡して、私は頭の中にマップを開いて馬車を引いてくれているニヴェスに指示を出した。

〈ふむ。昔と少し変わってるな。われが入ったことのあるダンジョンが載ってない〉
「そんなことあるの?」
〈ダンジョンコアが破壊されればダンジョンは消滅するが……ダンジョンは冒険者にとっても貴重な収入源だから、そんなことをするやつはいないと思うが……わからん〉

 今度パパ達に聞いてみよう。
 グレンが行きたかったダンジョンなのかと思ったら、そうではないらしい。ただ単に思い出しただけだそうで、思い出の場所がなくなったワケじゃなくて安心した。

 お昼ご飯のときにニヴェスとジルベルト君にはシャーベットを出して、私達は普通にカットフルーツ。
 グレンは〈ズルい〉ってぶぅたれていたけど「グレンだけ降りて馬車と並走してもいいよ」と言うと、変わり身が早かった。

 午後、私はコテージでパラソル作り。
 日本でビニール傘にお世話になっていたとはいえ、構造がわからず悪戦苦闘することになった。

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