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13章

実は一役買っていた

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 ん……んん? おなかと背中が温かい……
 目を開けると、視界いっぱいジルのドアップの寝顔で息を呑んだ。
 状況を確認すると……ジルと私が手を繋いで寝ちゃったから、モルトさんがジルを、コルトさんが私を抱えて眠ってくれたらしい。
 私が起きたせいでくっ付いて寝ていた三人も起こしてしまった。
 モルトさんとコルトさんは元々朝に強くないけど、今日は特に眠いみたい。

「大丈夫?」
「……おにぎり」
「え?」
「……おにぎり食べたい」

 大丈夫なのか聞いたのに、コルトさんから返ってきたのは朝食のリクエストだった。
 コルトさんからのリクエストは珍しい。
 ジルは機嫌がよさそうだけど、クラオルやグレウスまで眠そう。

「私寝落ちしちゃったけど、みんな遅かったの?」
《うーんとね、ガルド達はこれからの話をしてて、クラオルとグレウスはガルド達が気になって起きてたの。みんな眠ったのは朝方ね》
「そっか。私のためにガイにぃがここに呼んでくれたんだもんね」

 それなら今日はおにぎりリクエストされたし、お味噌汁でいいかな? ジュードさんも寝てるから作っちゃっていいよね!

 ジルにラゴーネさんへの伝言を頼み、私は作業開始。
 メインは普通のおにぎりと焼きおにぎり。後はお味噌汁と……お肉はどうしようか?
 おにぎりは一応作り置きはしてあるけど、数が不安だから精霊達にも手伝ってもらわないと。
 戻ってきたジルにも協力してもらって、おにぎりを量産。お肉はジルの希望で生姜焼きになった。

「みんな起きて~! ご飯だよ~!」

 なかなか起きないガルドさんをペチペチと叩いていると、焦れたエルミスが首に氷を当てて無理矢理目覚めさせた。
 飛び起きたガルドさんは不服そうだけど、文句はないみたい。率先して他のメンバーにも氷を当てて起こしていく。
 モルトさんとコルトさんも頭をカクカクさせて船を漕いでたからガルドさんの餌食になった。

「うぅー……もー普通に起こしてくれればいいのにー」
「俺だってそれで起こされたんだ」
「……起きてたのに」
「寝てただろうが」

 口を尖らせるジュードさんとコルトさんに道連れ発言をするガルドさん。
 なるほど……自分だけは嫌だったのね。

「ご飯食べよ? コルトさんがおにぎりがいいって言ってたから、おにぎりと焼きおにぎりだよ~」
「おぉ、助かる」

 あくびを噛み殺しながら食べるみんなのスピードはいつもよりかなり遅い。
 それでも食べてるうちに覚醒したみたいで、作ったご飯は食べ尽くされた。

「ふぅ……あれ? 疲れが取れた気がします」
「ふふっ。それはよかった!」
「お前さん……メシになんか変なもん入れたんじゃないだろうな?」
「ムッ! 変なのなんか入れてないもん。お味噌汁にポーション入れただけだもん」
「んな!?」

 目を丸くして驚いたガルドさんはお礼を言いながら頭を撫でてくれた。
 本当は生姜焼きのタレにもすりおろしたアポの実を使ったんだけどね!
 お皿を片付けていると、出発の準備をしていたガルドさんに思い出したように呼ばれた。

「あぁ、そうだ。なぁ、セナ。ポーションもらってもいいか?」
「ココナタスライムのあれもお願いしたいです」
「それならも欲しいー」
「ヨーグルトだよ。ヨーグルト。全部大丈夫だけどどれくらい?」

 ジュードさんの発音を注意して、ポーション、ナタデココ、ヨーグルトと希望分を渡してあげる。
 珍しいみんなからのリクエストにちょうどいいと、作り置きしていたもやし料理もプレゼントしておいた。

「んじゃ、グレンによろしくな。ジルベルト、頼んだぞ」
「はい」

 ガルドさん達にガシガシと頭を撫でられたジルは恥ずかしそうに微笑んでいる。
 うん。兄弟愛って感じ。いいね、いいね!
 ガルドさん達に手を振ると、タイミングよくガイにぃに送られていった。

 さてさて、私達はどうしようかね?
 みんなに聞いてみたけど特にやりたいことはないらしい。
 ケチャップの残量がそろそろ危ないこともあり、コテージの畑に行くことにした。

 ショユの実とミソの実は前にフンを撒いていたからか大量に実っていて、アセロラとブルーベリーもたくさん採取できた。

「梅干しは……まだできてないかぁ……残念。でもつるは伸びてるからそのうち実りそうだね」
『あ!』
「ん?」

 聞き慣れない声が聞こえた方に顔を向けると、真っ黒なチンチラがいた。
 そういえばチンチラのとこの空間繋げたんだっけ。

「久しぶりだね~」
『お前……!』
『キキッ』
「あ! カイザーコングのお猿さん! お猿さんも久しぶり~」

 お猿さんはクルッと宙返りして私達に挨拶。

「今日はどうしたの?」
『お前……お前の畑の世話しに来てやってるんだぞ! お礼を言え! オイラを敬え!』
――シュンッ!
『ヒッ!』

 叫ぶように言うチンチラの真横にジルがナイフを投げたせいで、チンチラが縮こまってしまった。

「ジル!?」
「あぁ、手が滑りました」

 えぇ!? 絶対狙ったでしょ!?
 ジルは謝る気はないらしく、チンチラを胡散臭そうな目で睨んでいる。
 ジルがこれ以上攻撃しないうちに話を進めようとお猿さんに聞いてみる。
 クラオルに通訳してもらうと、この二人はおばあちゃんに言われて暇なときに畑のお世話をしてくれていたらしい。

「セナ様の温情があってこそです。その態度を改めないようなら、イグニス様に報告致しましょう」
「まぁまぁ。それくらいで報告しなくても……ほら、ちゃんと畑見ててくれたみたいだし……ね? それより、ケチャップのアヒルさんの小屋ってドコにあるかわかる?」
『キキッ!』
『付いて来てって』
「案内してくれるの? ありがとう!」

 お猿さんの先導でアヒルの小屋に向かう。
 小屋は目立たないように木の影に建てられていて、近くにいたアヒル達が『グワッ』と挨拶してくれた。
 アヒルのフリフリするお尻って可愛いよね~。
 小屋の中には真っ赤な卵がまとめられていたので、アヒル達に断ってから全部ゲット。

 お猿さんとチンチラ、アヒル達にお礼のパンをあげると大喜びで、あまりのフィーバー具合にクラオルの軍曹が降臨。
 ビビったチンチラはお猿さんを盾にしながらちょいちょい文句を言い、それがまたクラオル達の神経を逆撫でしている。
 見た目は可愛いだけにすご~く残念なんだよねぇ……
 最終的にクラオルが草魔法のムチでパシン! バシン! と地面を叩き、喝を入れて黙らせた。
 一応チンチラは神使だし、お猿さんもおばあちゃんの関係者なんだけど……クラオルさん強い……

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