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14章

街道を外れてみる

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 平地の移動はひたすら作り置き料理を量産。その間グレンはずっと大人しく御者をしてくれていた。
 まぁ、そのご褒美として毎日焼き芋作るハメになって、大量に買っていたハズの黄スイト芋はほとんどなくなっちゃったんだけどね。

 岩山に差し掛かったとグレンから念話が届いた私は御者席にお邪魔してグリネロに指示を出す。
 途中までは街道を進み、お目当ての場所に着いたところで馬車を降りた。

「この道ですか?」
「そそ。ここから少し旧道を進む予定なの。ここはまだ面影が残ってるけど、道が荒れてそうだから馬車はここまでかな」
「なるほど。ではここからは背に乗せてもらいましょう」

 馬車をしまってグレンと一緒にグリネロに跨った。
 グレンが背中を支えてくれているから、安定感が素晴らしい。
 ジルを乗せているクーヴェやグリネロはパカパカと余裕で駆けてくれているけど、地面は石や岩がちょこちょこ転がっている。こりゃ、乗り換えて正解だったね。
 街道として使われていたころの名残か、ところどころに魔物避けの草が生えていて、魔物は離れた場所にチラホラ気配を感じる程度だ。

 旧道を進んだ先に見えてきたのは打ち捨てられた廃村だった。
 軽く見た限りでは総じて劣化が激しいけど、岩山が崩れたみたいで、大きな岩に押しつぶされている家屋がいくつかあった。
 本来なら旧道が続いていただろう場所もゴロゴロとした岩石で塞がれている。

「なるほど。だからこの道は使われなくなったのね……グリネロ、これ越えられる?」
『問題ない』

 そう断言したグリネロはヒョイヒョイっと大きめな岩を足場にして登り、三メートルはありそうな高さをいとも簡単に乗り越えてしまった。

「おぉ! グリネロすごーい」
『そうか!』
〈これくらいネラース達でも余裕ではないか〉

 いや、まぁそうなんだけどさ……上げた先から落とさなくても……蹄で崩れた岩を登るなんて充分すごくないかい?
 一応フォローはしたけど、気落ちしたままだから夜ご飯はグリネロお気に入りのお好み焼きを作ってあげよう。

 廃村を越えてから少し進むと、魔物避けの草も減ってたまに生えている程度。先ほどより近く感じる。

「そろそろかな?」
〈ん?〉
「美味しかったからダチョウ狩ろうかと思って」
〈おぉ! 怪鳥か!〉

 暇そうにアクビをしまくっていたグレンは途端に目を輝かせた。
 人目があるせいで呼んでいなかったネラース達を呼んで伝えると、こちらも大喜びだった。
 みんな戦うの好きだよね。

 グリネロに指示を出し、街道を外れて岩山を登ってもらう。
 大変そうだったら降りようかと思ってたんだけど、グリネロもクーヴェも足場を見つけるのが上手くて驚かされた。

『ギャギャー!』
「げ!」

 怪鳥の巣を目指していた私達の前に躍り出てきたのはいい思い出のない【オラジー猿】。
 猿のせいじゃないのはわかってるけど……あのときは踏んだり蹴ったりだった。
 しかもここは平地じゃない。地形でいえばあちらの方が有利な気がする。
 突っ込んで行ったネラース達の戦闘音を聞きつけたのか、さほど離れていない場所に散らばっていた気配がこちらに向かってきている。

〈セナはグリネロから降りるな。ジルベルト! セナを守れ!〉
「はい!」

 さらに〈少し離れていろ〉とグリネロに口早く告げてから、グレンは羽根を出して猿に向かって行った。

あるじよ、わしらがいる。そんな不安そうな顔をするな》
《そうよ。すぐに終わるわ》
「うん。ありがとう」

 身を固くしていた私を安心させるようにエルミスとプルトンが頭を撫でてくれた。

《前は消し飛んだが、今回はちゃんと加減しているようだな。あれなら素材も採れるだろう》
《そうねぇ。ねぇ、ジルベルト。あれって食べられるの?》
「オラジー猿は筋肉質で肉が硬いため、あまり食用には向いておりませんが……毒は含んでいないので食べられなくはないですね。貧しい村などではわりと食べられていると思います」
「マジか……」

 カエルもそうだけど、猿ってだけで食べたくないと思うのは日本人だからかね? まぁ、美味しいって言われたら一口くらいは食べてみたい気が……しないでもない……かな? いや、でも猿……
 いざ美味しいと言われる猿肉が目の前に現れたら自分はどうするんだろうか? なんて考えていたらグレンに呼ばれた。

〈セーナー! 終わったー!〉
「はーい! ありがとう!!」

 少し暴れたからかグレンはスッキリしたみたい。顔に返り血が飛んでいるのにニカッと笑いかけてくる。
 そんなグレンに【クリーン】と【ヒール】をかけると、機嫌よく再び私の背中側に跨った。

『主様、そろそろ泊まる場所を探さないと。流石にここは暗くなってからじゃ危ないわ』
「そうだね」

 ルフスに偵察を頼むと、すぐに戻ってきた。
 指示通りに進むと、人工的な洞窟がポッカリと口を開けていた。
 グリネロも入れるくらいの広さがあり、壁には何か道具で削ったような跡が残っている。

「あぁ……ここ坑道だったんだね」

 壁に鑑定をかけると鉄鉱石を採掘していた場所だったことがわかった。
 ネラース達に見てきてもらうと、崩落している箇所があって奥深くには入れなかったらしい。
 ただ、広場があったので、今日はここでお泊まり決定!

 ネラース達は坑道内にいいものを見つけたらしく、揃って採りに行った。
 奥には行けないけど風は通ってるみたいだから、グレンに焚き火をお願いして私はテーブルやコンロを出していく。
 いざ作り始めようと思ったら、私達が入ってきた方とは別の通路からプルトンが戻ってきた。

《セナちゃん、セナちゃん。あっちに何かあるわよ》
「ん? どこ?」
《こっちよ。何か変なのはわかるんだけど、私もエルミスもよくわからないのよ』

 グレンには串打ち、ジルにはキャベツの千切りを頼んでプルトンに付いていく。
 案内されたのは続き部屋の小さく開けた空間だった。布みたいな物が敷かれているから、休憩スペースだったのかもしれない。

《ここなんだけど、セナちゃんは何かわかる?》

 プルトンに言われた壁に鑑定をかけると、どうやら隠し部屋があるらしい。


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