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崩壊の始まり。
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「会いたかったですわ!リオロ様!」
「うぐぁっ!」
リオロ様に抱き着いたところ、うめき声をあげられてしまった。ちょっと勢いが強すぎたのかもしれない。
「も、申し訳ございません。久々にお顔を拝見できたことが、とても嬉しくて」
「あ、あはは……。僕もだよ」
「本当は、私から出向くつもりだったのですけれど……。どうしても、体調が優れなくて」
「気にしないでいいさ。そういうこともあるよ」
体調が悪い。この言葉は魔法だと思った。わざわざ隣国まで出向かなくても、リオロ様が会いに来てくれる。
最近はどうも歩くのが億劫で、ベッドから立つことすら減ってしまった。それでもこうして、リオロ様の顔を見ることができるのだから、やっぱりナンナの体は素晴らしいと思った。
「これは、遠征の土産だよ」
「まぁ!なんですか?」
「開けてみてくれ」
小さめの箱を、リオロ様から受け取った。ゆっくりと開封していく。
……中には、指輪が入っていた。
何だ。食べ物じゃないのか。私はがっかりしたが、それを顔に出さないよう努めた。
「素敵!ありがとうございます!」
「喜んでくれて、ありがとう。……ナンナの体調が、まだ優れないって聞いたから、聖女様に、祈りを込めて、作っていただいたんだ。それを嵌めてくれれば、きっとすぐに良くなるはずだよ」
私はさっそく、指輪をはめようとした。
……指が太すぎて、はまらなかった。
「……あ、あはは」
リオロ様の苦笑いが、胸に刺さった。ここまで太っていただなんて……。
「ごめんなさい。私……」
情けなくて、涙が出てしまう。
そんな私の肩に、リオロ様が、そっと手を添えてくれた。
「泣かないでいいんだよ?体調を崩して、満足に動くことができないのだから、多少体系が変わってしまうのは、仕方のないことだよ。僕の配慮が足らなかったんだ。すぐに、サイズを変更したものを用意してもらうことにするよ」
「リオロ様……」
リオロ様は、指輪を回収すると、私に申し訳なさそうな顔を向けた。
……レーンの体のままだったら、肥えるたびにメイドのカレンに小言を言われていた。
ナンナの体になった途端、肥えたというのに、慰めてもらえるだなんて。
――なんて、楽な体だろう。
「ありがとうございます。きっと、すぐに元気になって、また前のように戻りますから……」
「うん。じゃあ……。今日はこれで」
リオロ様が、帰ってしまった。もっと構ってほしかったけど、気まずい空気になったので、仕方がない。
「……お嬢様。いかがでしたか?」
フェンシアが、入れ替わるようにして、部屋に入って来た。
「えぇ。リオロ様はお変わりない様子だったわよ」
「その、お嬢様の容姿については、何も?」
「……そうね。気が付かない程度の変化なのよ。フェンシアが気にしすぎなんじゃない?」
「……」
フェンシアは、泣きそうな表情で、部屋を出て行った。
……なによ。あの態度。そんなに私が醜いの?
クビにしてやろうかしら。最近すごく口うるさくなったし。あれじゃまるで、カレンと変わらないものね。
今日の夜にも、お父様に話そう。メイドなんて、代わりはいくらでもいるのだから。
「うぐぁっ!」
リオロ様に抱き着いたところ、うめき声をあげられてしまった。ちょっと勢いが強すぎたのかもしれない。
「も、申し訳ございません。久々にお顔を拝見できたことが、とても嬉しくて」
「あ、あはは……。僕もだよ」
「本当は、私から出向くつもりだったのですけれど……。どうしても、体調が優れなくて」
「気にしないでいいさ。そういうこともあるよ」
体調が悪い。この言葉は魔法だと思った。わざわざ隣国まで出向かなくても、リオロ様が会いに来てくれる。
最近はどうも歩くのが億劫で、ベッドから立つことすら減ってしまった。それでもこうして、リオロ様の顔を見ることができるのだから、やっぱりナンナの体は素晴らしいと思った。
「これは、遠征の土産だよ」
「まぁ!なんですか?」
「開けてみてくれ」
小さめの箱を、リオロ様から受け取った。ゆっくりと開封していく。
……中には、指輪が入っていた。
何だ。食べ物じゃないのか。私はがっかりしたが、それを顔に出さないよう努めた。
「素敵!ありがとうございます!」
「喜んでくれて、ありがとう。……ナンナの体調が、まだ優れないって聞いたから、聖女様に、祈りを込めて、作っていただいたんだ。それを嵌めてくれれば、きっとすぐに良くなるはずだよ」
私はさっそく、指輪をはめようとした。
……指が太すぎて、はまらなかった。
「……あ、あはは」
リオロ様の苦笑いが、胸に刺さった。ここまで太っていただなんて……。
「ごめんなさい。私……」
情けなくて、涙が出てしまう。
そんな私の肩に、リオロ様が、そっと手を添えてくれた。
「泣かないでいいんだよ?体調を崩して、満足に動くことができないのだから、多少体系が変わってしまうのは、仕方のないことだよ。僕の配慮が足らなかったんだ。すぐに、サイズを変更したものを用意してもらうことにするよ」
「リオロ様……」
リオロ様は、指輪を回収すると、私に申し訳なさそうな顔を向けた。
……レーンの体のままだったら、肥えるたびにメイドのカレンに小言を言われていた。
ナンナの体になった途端、肥えたというのに、慰めてもらえるだなんて。
――なんて、楽な体だろう。
「ありがとうございます。きっと、すぐに元気になって、また前のように戻りますから……」
「うん。じゃあ……。今日はこれで」
リオロ様が、帰ってしまった。もっと構ってほしかったけど、気まずい空気になったので、仕方がない。
「……お嬢様。いかがでしたか?」
フェンシアが、入れ替わるようにして、部屋に入って来た。
「えぇ。リオロ様はお変わりない様子だったわよ」
「その、お嬢様の容姿については、何も?」
「……そうね。気が付かない程度の変化なのよ。フェンシアが気にしすぎなんじゃない?」
「……」
フェンシアは、泣きそうな表情で、部屋を出て行った。
……なによ。あの態度。そんなに私が醜いの?
クビにしてやろうかしら。最近すごく口うるさくなったし。あれじゃまるで、カレンと変わらないものね。
今日の夜にも、お父様に話そう。メイドなんて、代わりはいくらでもいるのだから。
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