悪役令嬢の妹の罠で、体を奪われました。だけど私は、諦めません……!

冬吹せいら

文字の大きさ
8 / 13

崩壊の始まり。

しおりを挟む
「会いたかったですわ!リオロ様!」
「うぐぁっ!」

リオロ様に抱き着いたところ、うめき声をあげられてしまった。ちょっと勢いが強すぎたのかもしれない。

「も、申し訳ございません。久々にお顔を拝見できたことが、とても嬉しくて」
「あ、あはは……。僕もだよ」
「本当は、私から出向くつもりだったのですけれど……。どうしても、体調が優れなくて」
「気にしないでいいさ。そういうこともあるよ」

体調が悪い。この言葉は魔法だと思った。わざわざ隣国まで出向かなくても、リオロ様が会いに来てくれる。
最近はどうも歩くのが億劫で、ベッドから立つことすら減ってしまった。それでもこうして、リオロ様の顔を見ることができるのだから、やっぱりナンナの体は素晴らしいと思った。

「これは、遠征の土産だよ」
「まぁ!なんですか?」
「開けてみてくれ」

小さめの箱を、リオロ様から受け取った。ゆっくりと開封していく。

……中には、指輪が入っていた。

何だ。食べ物じゃないのか。私はがっかりしたが、それを顔に出さないよう努めた。

「素敵!ありがとうございます!」
「喜んでくれて、ありがとう。……ナンナの体調が、まだ優れないって聞いたから、聖女様に、祈りを込めて、作っていただいたんだ。それを嵌めてくれれば、きっとすぐに良くなるはずだよ」


私はさっそく、指輪をはめようとした。

……指が太すぎて、はまらなかった。

「……あ、あはは」

リオロ様の苦笑いが、胸に刺さった。ここまで太っていただなんて……。

「ごめんなさい。私……」

情けなくて、涙が出てしまう。
そんな私の肩に、リオロ様が、そっと手を添えてくれた。

「泣かないでいいんだよ?体調を崩して、満足に動くことができないのだから、多少体系が変わってしまうのは、仕方のないことだよ。僕の配慮が足らなかったんだ。すぐに、サイズを変更したものを用意してもらうことにするよ」
「リオロ様……」

リオロ様は、指輪を回収すると、私に申し訳なさそうな顔を向けた。

……レーンの体のままだったら、肥えるたびにメイドのカレンに小言を言われていた。
ナンナの体になった途端、肥えたというのに、慰めてもらえるだなんて。

――なんて、楽な体だろう。

「ありがとうございます。きっと、すぐに元気になって、また前のように戻りますから……」
「うん。じゃあ……。今日はこれで」

リオロ様が、帰ってしまった。もっと構ってほしかったけど、気まずい空気になったので、仕方がない。

「……お嬢様。いかがでしたか?」

フェンシアが、入れ替わるようにして、部屋に入って来た。

「えぇ。リオロ様はお変わりない様子だったわよ」
「その、お嬢様の容姿については、何も?」
「……そうね。気が付かない程度の変化なのよ。フェンシアが気にしすぎなんじゃない?」
「……」

フェンシアは、泣きそうな表情で、部屋を出て行った。

……なによ。あの態度。そんなに私が醜いの?
クビにしてやろうかしら。最近すごく口うるさくなったし。あれじゃまるで、カレンと変わらないものね。

今日の夜にも、お父様に話そう。メイドなんて、代わりはいくらでもいるのだから。
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

才能が開花した瞬間、婚約を破棄されました。ついでに実家も追放されました。

キョウキョウ
恋愛
ヴァーレンティア子爵家の令嬢エリアナは、一般人の半分以下という致命的な魔力不足に悩んでいた。伯爵家の跡取りである婚約者ヴィクターからは日々厳しく責められ、自分の価値を見出せずにいた。 そんな彼女が、厳しい指導を乗り越えて伝説の「古代魔法」の習得に成功した。100年以上前から使い手が現れていない、全ての魔法の根源とされる究極の力。喜び勇んで婚約者に報告しようとしたその瞬間―― 「君との婚約を破棄することが決まった」 皮肉にも、人生最高の瞬間が人生最悪の瞬間と重なってしまう。さらに実家からは除籍処分を言い渡され、身一つで屋敷から追い出される。すべてを失ったエリアナ。 だけど、彼女には頼れる師匠がいた。世界最高峰の魔法使いソリウスと共に旅立つことにしたエリアナは、古代魔法の力で次々と困難を解決し、やがて大きな名声を獲得していく。 一方、エリアナを捨てた元婚約者ヴィクターと実家は、不運が重なる厳しい現実に直面する。エリアナの大活躍を知った時には、すべてが手遅れだった。 真の実力と愛を手に入れたエリアナは、もう振り返る理由はない。 これは、自分の価値を理解してくれない者たちを結果的に見返し、厳しい時期に寄り添ってくれた人と幸せを掴む物語。

「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。 広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。 「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」 震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。 「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」 「無……属性?」

病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』 メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。

(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。

ちゃむふー
恋愛
この国の全ての女性を虜にする程の美貌を備えた『華の騎士』との愛称を持つ、 アイロワニー伯爵令息のラウル様に一目惚れした私の妹ジュリーは両親に頼み込み、ラウル様の婚約者となった。 しかしその後程なくして、何者かに狙われた皇子を護り、ラウル様が大怪我をおってしまった。 一命は取り留めたものの顔に傷を受けてしまい、その上武器に毒を塗っていたのか、顔の半分が変色してしまい、大きな傷跡が残ってしまった。 今まで華の騎士とラウル様を讃えていた女性達も掌を返したようにラウル様を悪く言った。 "醜草の騎士"と…。 その女性の中には、婚約者であるはずの妹も含まれていた…。 そして妹は言うのだった。 「やっぱりあんな醜い恐ろしい奴の元へ嫁ぐのは嫌よ!代わりにお姉様が嫁げば良いわ!!」 ※醜草とは、華との対照に使った言葉であり深い意味はありません。 ※ご都合主義、あるかもしれません。 ※ゆるふわ設定、お許しください。

「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。

ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。 しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。 こんな謎運命、回避するしかない! 「そうだ、結婚しよう」 断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや

私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます

・めぐめぐ・
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。 気が付くと闇の世界にいた。 そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。 この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。 そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを―― 全てを知った彼女は決意した。 「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」 ※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪ ※よくある悪役令嬢設定です。 ※頭空っぽにして読んでね! ※ご都合主義です。 ※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。 王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!! ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。 この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。 孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。 なんちゃって異世界のお話です。 時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。 HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24) 数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。 *国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。

処理中です...