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エピローグ

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焼け焦げた城下街を歩く。
デリッサと手を繋ぎながら……。幸せな時間だった。

「うわぁすごい。この建物、まだ形を保ってる」

マルキ―は、興味津々と言った様子で、あちらこちらを動き回っていた。しかし、その度に死体を見つけては、顔を歪めるのだった。

死ぬところは好きだが、死んだ後は見たくない。

マルキ―はそう言っていた。何となく理解できる気もするけど、私はきちんと死体を見ないと、自分が為すべきことを達成できたのか心配になるので、きちんと目に入った死体の脈は確認するようにしている。

……が、それも飽きてしまった。息が残っていたところで、もはや時間の問題だろう。
しゃがむ度、デリッサに迷惑をかけるのが嫌だった。今はこの道を、じっくり散歩したい。

「これほどの力とは……。正直、思っていなかったよ」
「そうなんですか?」
「あぁ。これなら……。すぐにでも、僕たち三人だけの世界が実現できる」
「すごいねカリアナ!」
「……えぇ」

二人に賞賛され、一瞬喜びの感情が沸き上がったが、それもすぐに消えて行った。

途方も無い作業だ。人も魔族も、増え続ける。
この世界の広さもわからない。一体、何年かかるのだろうか。

「ところでカリアナ。いつまでその体に閉じこもっているつもりだい?」
「え?」
「ほら」

デリッサが、握っている手を上げた。

「肌に、ヒビが入っているだろう?」

本当だ。腕全体に、ヒビが……。

「なに、これ」
「心配しなくていい」

デリッサが、そのヒビの入った肌を、丁寧に剥がしていく……。
その下から――。元の私の色に近い肌が、姿を現した。

……まさか。

「これはね。仮の姿なんだ。心が魔族になりきり、完全に身体と同化した時――。元の姿に、戻ることができるんだよ」
「……そうなんですね」
「マルキ―も、かつてはもっと、サキュバスをイメージした姿だったんだ」
「ちょっと!それは恥ずかしいからやめて……」

顔を赤らめながら、マルキ―が、皮膚を剥がすのを手伝ってくれた。

そして――。

「……おかえり、カリアナ」

デリッサの貸してくれた鏡で、自分の顔を確認する。
聖女であった時の、私そのものだ。

瞳と髪の色こそ、まだ変わっていないが、徐々に戻っていくらしい。

この姿で、体に傷を負っていない状態を見るのは、一体どれくらいぶりだろうか。

「デリッサ……。ありがとう。私を綺麗にしてくれて」

私はデリッサに抱き着いた。

「こちらこそ。僕の仲間になってくれて、ありがとう」

デリッサが、優しく抱きしめ返してくれた。

「二人とも……。大好き」

そして、マルキ―が、私たちの頭を撫でてくれた。



この三人だけの、平和な世界を作り上げる。

旅はまだ、始まったばかりだ――。
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