『二時間通勤でも、青瀬町に移住した理由』

『二時間通勤でも、青瀬町に移住した理由』
​ 地方都市の会社に勤める、ごく普通の「俺」。
 三十代で念願の注文住宅を建て、三十五年のローンを背負い、家族三人の安定した未来を予約したはずだった。だが、完璧なはずの日常が、静かに俺の精神を削っていく。朝が来るのが怖くなり、積み上げたはずの「城」が、自分を閉じ込める檻のように見え始めた。
​ そんな時、ふとしたきっかけで訪れたのが、深い霧と清流の町――青瀬町だった。
 ただ、川の流れを見つめていたかった。けれど、俺には全てを捨て去る勇気はなかった。
​「一年間だけ、試させてほしい」
​ 建てたばかりの家を売る決断もできず、退職する勇気もない。出した答えは、職場まで片道二時間、往復四時間の過酷な通勤を受け入れる「お試し移住」だった。冬は路面が凍り、ヘッドライトの先に鹿が佇む峠道。
 周囲からは「無謀だ」「逃げだ」と囁かれながらも、俺はハンドルを握り続ける。
​ これは、大黒柱という重圧に押し潰されそうになった一人の父親が、安定という名の執着を手放し、本当の「家族の幸せ」を不器用に選び直していく、再生の記録。

『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
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