「『調合師なんて不要』と追放されました。——今さら来ても、金貨三枚いただきます」

「役立たずと追放された私が、実は王国最強の『調合師』だったようです」
~『調合師なんて不要』と追放した元パーティが、金貨を持って頭を下げに来ています~
「リナ、お前はクビだ。〈調合Lv.1〉しか使えない役立たずに、用はない」
三年間パーティに尽くしてきたリナ・アルヴェスは、リーダーのカインにそう告げられ、あっさり追放された。
泣いたりはしなかった。怒鳴りもしなかった。
ただ鞄を肩にかけて、夜空を見上げて——「まあ、いっか」と呟いただけだ。
辺境の街ラーゼルに流れ着いたリナは、廃屋を借りて小さな調合工房を開く。
〈調合Lv.1〉、のはずが——作れる薬はなぜか全部、規格外だった。
解熱剤を飲んだ客が「王都の薬より全然いい」と叫び、回復薬は飛ぶように売れ、気づけば工房の前に毎日行列ができている。
そんなある日、一人の旅人が工房を訪れた。
「普通の旅人です」と名乗る彼——シリル——は、万能回復薬をひと口飲んで絶句し、翌日もその翌日も工房に現れた。
「また来たんですか」
「薬を買いに来た」
「昨日も全種類買いましたよね」
「今日の分だ」
素性はよくわからないが、リナには関係ない。
工房が繁盛していれば、それでいい。
——そう思っていたのに。
「助けてください、リナさん」
ある日突然、元パーティの回復師ミアが工房に現れた。
毒沼エリアで回復魔法が効かず、リナの解毒剤が唯一の希望だと言う。
リナは静かに答えた。
「商品としてお売りします。一本、金貨三枚です」
「そ、そんな……値引きしてもらえない?」
「『回復魔法があれば、調合薬なんて必要ないわ』——そう言いましたよね、あのとき」
ミアは黙って、金貨を三枚並べた。
これが始まりだった。
元リーダー、槍士、魔法使い——追放した全員が、一人ずつ頭を下げに来る。
そのたびにリナは静かに、丁寧に、正規料金で対応する。
そして気づけば、隣には「ただの旅人」だったはずの男が立っていた。
「君は本当に、もっと広い場所に立つべきだ」
「今の工房で十分です」
「…………王都に分店を出さないか。俺が支援する」
「条件次第で考えます」
〈調合Lv.1〉と鑑定書に書かれた女が、やがて世界に名を轟かせる調合師と呼ばれるまで。
追放されても、泣かなかった女の、ちょっと痛快な逆転物語。
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