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第三章:新しい生活

3-12冒険の成果

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「えへへへへぇ~トランさぁ~ん♡」


 私はにこにこしながらトランさんの腕に抱き着く。
 そしてさりげなくまだ小さい胸を押し当ててみたりもする。

「しかしその格好はどうしたんだいリルにルラ。僕がいない間に問題は無かった?」

「うん、大丈夫だよ~。あ、でもあたしたち『赤竜亭』でアルバイトする事になったんだよ~」

 トランさんの質問にルラが答える。

 
 もう、本当は私が答えたかったのに。
 私はトランさんから離れてお辞儀をしながらお出迎えの挨拶をする。


「お帰りなさいませ、ご主人様♡」

「リル? なんなんだいそれは??」

「え? だって人間界ではお店にお客さんが来るとこうやってお出迎えするってレナさんが……」


 私はレナさんに習った通りにお出迎えの挨拶をするとトランさんは大きくため息をついてレナさんを見る。

「レナ、君の趣味を年端も行かないリルやルラに教え込むんじゃないよ。いいかいリル、それはレナの趣味だよ」

「はえ? そ、そうなんですか!?」

 驚きレナさんを見ると視線を外し口笛とか吹いている。


 やっぱり違うんじゃん!!


「とは言え、ルラ、君たちが『赤竜亭』でアルバイトってどう言う事?」

「ん~とねぇ、アルバイトするとご飯が食べられるの!」

「いやいやいや、ルラ、それじゃわからないって」

 にっこりと笑うルラだけど、確かにまかない飯の為にここで働いているわけではある。
 私はもう一度トランさんの腕に抱き着きながら今までに何が有ったかを話し始めるのだった。


 * * *


「なる程ねぇ、確かに『赤竜亭』の料理は他よりおいしかったけど、更に美味しいまかない飯があったとはね」

「そう言う訳で、私たちトランさんたちがいない間でも結構充実した日々を過ごしてました」

 にっこりとそう言うとトランさんは頷くけどいきなりレナさんを呼ぶ。

 
「それでレナ、なんでリルとルラだけこんなにスカート短いんだよ?」

「ぎくっ! い、いや、ほら、その方が活発に見えるし可愛いでしょ?」


 レナさんはトランさんにそう言われ目をそらして答える。
 しかしトランさんはジト目でレナさんを見ている。

「確かに可愛らしいけど、これって君の趣味丸出しだよね? 駄目だよ、リルとルラに手を出しちゃ?」

「だ、出さないって! 本当はお持ち帰りしたいけどこの子たちってまだ子供なんでしょ? だからその服装だけで我慢してるしのよ!」


 ちょっとマテ。
 レナさんて本当にそっちの気が有るの!?
 
 この衣装で私とルラだけがスカート短いのってレナさんの趣味って事!?

 
 私はさぁ~っと青ざめてレナさんから逃げるようにトランさんの後ろに隠れる。
 
「レ、レナさんって私たちをどうするつもりですか!?」

「何もしないわよ、ただ愛でるだけでお姉さんは、うふっ、うふふふふふっ」


 にょわぁっ!
 ガチよ!

 この人ガチだわぁっ!!


「姉さんやめなよ、リルちゃん本気で怖がっているじゃない」

「はいはい、まあ可愛い子は大好きなのは本当だけど、リルちゃんとルラちゃんのお陰でお店の売り上げは過去最高だし、リルちゃんの作るまかない飯があまりに美味しくってうちの新メニューに加えようって話は本当よ」

 アスタリアちゃんに嗜まれながらそんな事を言いながらドヤ顔になるレナさん。


 何故そこでドヤ顔になる?


「ふーん、リルってそんなにおいしいモノを作るの?」

 しかしトランさん私が料理をする事に興味を持ってくれた。

「ト、トランさんも食べてみますか?」

「うん、じゃあいただこうかな」

 私は大喜びで厨房に戻りおかみさんたちに許可をもらってミートソースとあさりクリームの二種類を量を少な目で作ってトランさんに持ってゆく。


「どうぞ! お、お口に合うかどうか分かりませんがよろしくお願いします!」


「お姉ちゃん、なんか変」

 思わず料理を差し出してからお辞儀までしてしまう私。
 だって未来の旦那様に手料理を食べてもらうのだもの。
 緊張するって!

「へぇ、これって確かパスタって言うんだよね? 精霊都市ユグリアで食べたっけなぁ」

「え? トランさんこれ知ってるんですか?」

「うん、実はこれシェルが広めたらしいんだけど、小麦粉からこんな細いものが出来るのって凄いよね?」

 言いながらトランさんは「いただきます」と言いながら器用にくるくるとパスタを巻き取って口に運ぶ。


「んっ! 美味しい!! 凄いじゃないかリル!」


「え、えへへへへぇ~」


 やった、褒めてもらった! 
 トランさんは美味しそうな顔してミートソースのを平らげる。

 そして次にあさりクリームもフォークで器用に巻き取って口に運ぶ。


「へぇっ! これも美味しいよ!! 濃厚な味は沢山は食べられなさそうだけどとても美味しい。海の貝の風味が白ワインにとても合うね!!」


 よかったぁ~。
 あさりクリームも美味しいって言われたぁ~。


 私はにこにこ顔でトランさんの食事をする様子を見ている。
 するとお店にぞろぞろとトランさんの冒険者仲間もやって来た。


「リルちゃん、ただいま」

「トランはもう食事をしているのですか?」

「リルちゃんなんだいその恰好は?」

「お、トラン、何だよそれ旨そうだな!?」


 エシアさんもロナンさんもホボスさんもテルさんも無事帰って来た。
 皆さん元気そうで何より。


「お帰りなさい、皆さん。無事で何よりです」

「おかえりぃ~」


 私やルラが挨拶すると皆さんにっこりと笑ってくれる。
 そしてテルさんの質問にここでアルバイトを始めた事を伝えるとみんなきょとんとしてから笑う。


「確かにリルちゃんとルラちゃんがそんな格好していればお客が寄って来るな!」

「そうだな、こんなかわいい格好していればレナの看板娘も交代だな」

「ちゃんとコモン語も勉強を続けているようで何よりです。だいぶ上達しましたね?」

「では早速酒を注文させてもらおう。後はトランが食べていたそれも頼む」


 ワイワイガヤガワしながら夕食前の早い食事を始める。
 そして何だかんだ言って私とルラが給仕を始める頃には他のお客さんも来始めていた。

 トランさんたちだけに給仕していられなくなり私たちは仕事を始めるのだった。


 * * *

 
「トラン、やっぱりそうだったみたいだ。冒険者ギルドに問い合わせてきたが間違いなく未発掘だった」

 エシアさんはそう言ってトランさんの相向かいに座っている。
 追加でお酒とお料理を運んでいた私はエシアさんがそんな話をしているのが小耳に入る。

「未発掘?」

 私がお酒のジョッキを置きながら空いたジョッキを回収しているとエシアさんは頷いて私にも話してくれる。


「今回受けた依頼で行った迷宮で隠し扉を見つけたんだがな。冒険者ギルドに問い合わせしてもそんなものは見つかっていなかったらしいんだ。だから準備をして今度はその未発掘の部分を探索してくる」

「そうかぁ、やっぱりね。あの迷宮はもう全て探索されつくしていたと思ったけど、西側だけ構造がおかしかったからね。これはお宝のチャンスだね」


 いいながらトランさんはエシアさんと新しいジョッキで乾杯する。
 どうやらトランさんのお仕事は順調のようだ。




 私は「頑張ってください!」と言って空いたお皿を下げるのだった。
 
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