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第六章:ドドス共和国

6-28鶏の香味野菜スープ

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「ふわぁ~、なんか体あったまるぅ~」

「ゆっくりでいいのでスープだけは飲んで下さいね。一番栄養がにじみ出てるところですから」


 私は出来あがった鶏の香味野菜スープをメリーサさんに飲ませる。

 かなり長時間でしっかりと煮込んだのでお肉なんかも骨がほろりととれるくらいになっているけど、一番重要なのはこのスープ。
 栄養成分がしっかりと出ているから病人とかにも問題無く飲めるし栄養補填するにはうってつけだ。

「でもメリーサさんここまで魔力も体力も使っちゃうなんて大丈夫なの~?」

 一緒に居たルラはメリーサさんにそう聞く。
 メリーサさんはスプーンを置いてゆっくりと話始める。

「確かに体の負担が思った以上に大きかったけど、あの豊胸の施術は確かなモノ。今更やめるわけにはいかないの!!」

 それは乙女の頑なな決断。
 たとえ命を張ろうとも揺れる胸へのあこがれは誰だって持っている。

 私はぐっとこぶしを握ってからメリーサさんに言う。


「分かります! でも、流石に気を失う程と言うのはまずいですよ。だからとにかく今はしっかりと栄養を取って回復しないと……」


「うん、そうだね…… ごめんね、心配かけちゃって」

 メリーサさんはそう言って残りのスープを飲み始めるのだった。


 * * *


「すまないねぇ、でもこの鶏のスープとても美味しかったね」

 メリーサさんが食べ終わったのでお皿を下げて厨房に戻るとおかみさんが仕込みをしていた。
 既に鶏の香味野菜スープは全部食べ切って、私もルラもおかみさんたちも試食済み。
 作り方自体はおかみさんにも教えたのでメリーサさんの為にまた後で作るそうな。


「あれ、美味しかったけどちょっとあっさりだったね~」

「私たちエルフならあのくらいの方が消化が良いの。ルラったらお肉ばかりだとまた消化不良でお腹壊しちゃうよ?」

 蒸し器で先に脂を抜いたけど、私たちが食べる分にはその脂を戻しメリーサさんの分以外の鶏肉とスープを入れて煮込んで少し乳化した状態のスープにした。
 味的には鶏の濃厚な味が美味しい反面、出汁とか栄養が抜け出た鶏肉はさっぱり気味。
 香味野菜で無いと物足りなくなってしまうだろう。

 ルラは元男の子だったせいかお肉が大好きだ。
 ただ私たちエルフはあまりたくさんのお肉とかお魚を沢山食べると消化不良を起こしてお腹を壊す事がある。
 
 食べられない事は無いけど、結果的には野菜や果物なんかが多くなってしまう。

 
「でも、豊胸の施術ってこんなに影響出るもんなんだ……」

「どうしたのお姉ちゃん?」


 メリーサさんのあの様子を見ているとだんだんと不安になって来る。
 そもそも胸を大きくするだけであそこまで衰弱するものだろうか?
 
「メリーサさん、あそこまで衰弱しちゃうなんてさ、あの豊胸のお店は副作用も何も無いとか言っていたけど結構貧血で倒れている人もいたし……」

 私だって胸を大きくはしたい。
 でもあそこまで影響があるとなるとこの先の旅に影響が出るんじゃないだろうか?

「うーん、気になるよね。どうしようかなぁ~」

「そう言えばお姉ちゃん今日の抽選会行かないの?」

「あっ!」

 鶏の香味野菜スープの方に気を取られて忘れてた!
 私はルラと一緒に慌ててあの店に向かうのだった。


 * * * * *


「ぐぬぬぬぬぬぅ、抽選会にすら参加できなかった……」


 慌ててあのお店に行ったけど、既に抽選会が終わった後だった。
 出遅れたのは仕方ないけどまさか抽選会まで終わっていたとは。

 しょんぼりして鉄板亭に帰ろうとした時だった。
 向こうから見た事のある女性が歩いてくる。


「あれ? あの人ってお店の人かな?」

「あ~、最初にお店の宣伝してた人だぁ~」


 あの後ほとんど見ていなかったけど何かの用事でもあったのだろうか?
 久しぶりに見る彼女の胸はしっかりとたわわだった。


「あら? エルフの方なんて珍しい。もしかして抽選会に来られていた人かしら?」

「あ、ども。その抽選会に来たんですがもう終わった後でした。これだけ来ているのに一度も当たらないし……」

 しょんぼりとしながらそう言うとその女性はにっこりと笑って言う。


「エルフのお客様なんて珍しい方が来るとはうちのお店にとっても光栄ですね。そうだ、もしよろしかったら宣伝の為に協力していただけないでしょうか? エルフの方はその、スレンダーな方が多いと聞きます。もしそのエルフの方も豊胸が出来たのならば更にうちのお店は有名になりますしね。どうですか? お代は全てただでやりますからご協力いただけませんか?」


「え”っ!? 良いんですか!!!?」


 まさしくこれは渡りに船。
 願っても無い事が向こうからやって来たぁ!!

「お、お姉ちゃん?」


「やります! いや、やらせてください!!」


 即答な私。
 こんなチャンスめったにないんだから!!

「良かった。それじゃぁ早速お店に行きましょう」

 そう言ってその女性は私たちをお店の裏に引き連れて行く。
 そして裏口から私たちを店に引き入れるのだった。


 * * * * *


 お店の中は薄暗く、なんか良い匂いがしていた。
 何かのお香かもしれない。
 そんな中私たちは奥の部屋に呼び込まれる。

「それじゃぁこちらに来てください。どうぞお座りくださいな」

「失礼します」

 言いながら私とルラは勧められたソファーに腰を下ろす。
 彼女も対面のソファーに座ってから話始める。

「私この店のオーナーを務めるアンダリヤと申します。よろしく」

 にっこりと笑うその女性はアンダリヤと言うらしい。
 大人の女性の雰囲気が漂っていてブロンドの髪に肌白、目じりの長い美人さん。
 
「あ、私はリル、こっちは妹のルラって言います」

 私たちも挨拶を返すとアンダリヤさんはちょっと驚く。


「あなたがリルさんでしたか…… それとルラさん。なるほど……」




 そう言って彼女はにたりと笑うのだった。  

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