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第九章:道に迷う
9-18封印の祠
しおりを挟むせっかくイリカさんからお米の話を聞こうとしていたのにノーム君たちが戻って来たらしい。
まあ仕方ない。
お米の話はノーム君たちの結果を聞いてからにしよう。
「お疲れ様。それで祠らしいものは見つかったの?」
私は手のひらを地面近くまでおろし、やってきた泥人形のノーム君を手のひらに載せる。
そして顔の高さまで持ち上げて聞くとノーム君は身振り手振りで岩山の方を指さす。
「どう、ですか? 何か手掛かりは見つかりましたか??」
「ん~と、どうやらそれらしいものを見つけたらしいですね。でもイリカさんが危惧していた通り土砂に埋まっているらしいです」
ノーム君から伝わって来る意味は大体そんな感じだった。
はっきりとした言葉では無いものの、その意思が伝わるのが精霊魔法でもある。
そしてノーム君は山の一点を指さす。
「どうやらあっちの方みたいですね。行きましょう!」
私はノーム君の指し示す方へと歩き始めるのだった。
* * * * *
そこは岩山という表現そのままで、険しい岩肌が生える草木の数を制限している。
全体的に岩と地肌がが多く、ほとんど草木が生えていない。
「どうやらあの崖の方みたいですね」
ノーム君が指し示すそこは高い絶壁の下だった。
くぼみがあって確かに以前に山崩れでもあったのか、岩や砂が堆積している。
「祠ってあの下なんでしょうか?」
「えっと、どうやらそうみたいですね。元の岩肌に掘られた穴の奥にあるらしいです。土砂で出入り口が塞がれているようですけど」
ノーム君を地面に戻し、精霊魔法を切ると元の泥に戻って行った。
上の方を見るとなんか危なっかしい木の根っことかが見える。
それに今にも崩れて来そうな場所もある。
岩肌の洞窟に祠があるとすると完全に入り口が塞がれているわけだけど、もしかしてその中の封印のひょうたんは大丈夫なんじゃないだろうか?
「どうしますか? あの土砂を退けるのは一苦労しそうですけど?」
「とは言え、出来ればひょうたんは回収しておきたいですね。またいつ封印が解かれるか分かりませんから」
イリカさんはそう言って堆積している土砂を見る。
『なんね、あの土砂退ければいいのけ?』
『村の土嚢積みさやってるけん、こんだけ人数いればすぐできんよ?』
『んだな、どうするイリカさ?』
なんかオーガの皆さん体動かすのはやぶさかじゃないみたい。
私がそう思っているとイリカさんは頷いてオーガの皆さんにお願いする。
「そうですね、ではお願いします」
イリカさんがそう言うとオーガの皆さんはそこまで行って土砂をどかし始める。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんの力使ってどかせば早いんじゃない?」
「うーんそうしたいけどノーム君たちに結構魔力持っていかれていまスキル使うと気を失いそうで……」
チートスキルと精霊魔法を使い過ぎると疲労が一気に襲ってきて下手をすると気を失ってしまう。
出来れば今のこの状況ではそれは避けたい。
まだ何が有るか分かったもんじゃないから。
「そっか、そう言えば前に買ったポーションてのは飲まないの?」
「あ、そっか。魔力回復のポーションがあったっけ!」
ルラに言われてポーチをまさぐって小瓶を取り出す。
以前シーナ商会で買っておいたマジックポーション。
ゲームなんかで私もその存在は知っていたけど、まさか自分が使う羽目になるとは。
とりあえずふたを開けて飲んでみる。
オレンジ味のそれは意外と飲みやすく、生前の栄養ドリンクみたいな感じだった。
飲んでしばらくするとなんか意識がはっきりとしてきて疲れが減ったような気がする。
「うん、多分魔力が少し回復したみたいね。本当に効くんだ、このマジックポーション」
正直ゲームの世界とこの世界が全く同じとは思っていない。
むしろ生前の世界に近いと思っている。
どんなに念じてもステータスウィンドが開く訳でもないし、レベルが上がったという通知も何も無い。
魔法だって地道に覚えたりしない限り勝手に新しい魔法が分かる事は無い。
うーん、そう考えるとやっぱりゲームのあれって親切だよね~。
そんなどうでもいい事を思いながら向こうを見ていると、どうやら何か掘り当てたようだった。
『イリカさ、ちょっと来てぐんねか?』
長老さんオーガに呼ばれてイリカさんはそちらに行くとどうやら石で出来た扉のような物が掘り出されたようだった。
「どうやら祠の扉みたいですね。周りの土砂をもう少し退けて開けてみましょう」
どうやら祠の入り口が見つかったようだ。
長老さんは頷いてみんなに声をかけてそこを集中的に掘り返す。
そして完全にむき出しになった石の扉は結構な大きさだった。
「間違いなさそうですね。扉を開けましょう。【開錠魔法】アンロック!」
イリカさんは言いながら魔法で扉を開ける。
すると魔法の効力で石の扉はズリズリとこちらに観音開きで開いてくる。
「さて、中に入りましょう」
イリカさんがそう言った時だった。
「お姉ちゃんっ!」
ルラの警告の叫びに指さす先を見ると絶壁の岩がはがれここへ落下してくる。
私はとっさに手を掲げ落ちてくる土砂を対象にチートスキル「消し去る」を発動させる。
「『消し去る』!!」
多分落ちてくれば私たちなんて一発でぺしゃんこになるだろう岩々を一瞬で消し去った。
「あっぶなぁ…… って、あ、あれ?」
スキルを使うのに集中していたのでその後から襲ってくる疲労感がに気付くのが遅れた。
そしてその疲労感は一気に広がる。
「お姉ちゃん!」
「あ、あれぇ……」
ルラが慌てて私に駆け寄るの見るのを最後に私の意識はぷつりと切れるのだった。
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