春夏秋冬、花咲く君と僕

えつこ

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第二章:夏

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「……あっ、…っあ……」

 指で捏ねると、びりびりと快感が全身に広がった。椿自身からこぷりと先走りが溢れ、直腸からは分泌液が放たれる。内側はさらに濡れ、指の動きに合わせて、ぐちゅぐちゅと音を立てた。椿は快感に流されるように、指を三本に増やし、前立腺を刺激する。同時に、勃ちあがった自身も扱いた。

「あっ、……っん……」

 ベッドの上で痴態を曝け出す自分を想像して、椿は惨めになった。些細な抵抗として、声を出さないように、唇を噛んで我慢する。Ωであることを呪いながら、徐々に思考は快楽に蕩けていく。

『椿くん』

 急に秀悟の声や視線を思い出し、椿の身体が跳ねた。きゅうっと中が締まり、自らの指を締めつける。軽く達したことに、椿は気づかない。
 椿のフェロモンがぶわりと匂いたち、部屋の中に充満する。脳裏にちらつく秀悟の姿を振り払うように、椿は首を振った。しかし、身体が本能的にαを求める。奥が疼いて仕方ない。後孔を熱いもので埋めて、指で届かない奥を突いて欲しい。椿は物足りなさを感じながらも、貪欲に性器と後孔を責め立てた。

「……っ、ん……な、なむら…さっ……」

 椿は無意識に秀悟の名前を呼ぶ。そうすることで、幾分か満たされた気持ちになった。椿自身は完全に勃ちあがり、精液混じりの先走りを流す。すっかり熟れた後孔は限界が近づき、椿の指を咥えこんで離さない。

「あ……んっ、……だ、めっ……」

 身体を震わせ、椿は達した。自身と後ろの両方での絶頂に、椿の視界はちかちかと瞬いた。椿は力が抜けた身体をベッドへと預ける。今までの自慰とは比べ物にならない快感に、椿は混乱していた。実際にαとセックスすればどうなってしまうのだろうと怖さすら感じる。そのαが秀悟なら、と想像して、椿は思わず起き上がった。秀悟の名前を呼んだことにようやく気付き、かぁっと顔が熱くなる。全部発情期のせいだ、発情期が終わればきっと大丈夫だ。椿は自らに言い聞かせる。
 心を落ち着かせるために、花のことを考える。後期はどんな花を生けよう。どんな作品なら秀悟は喜ぶだろう。早く秀悟に会って、四季展の作品の感想を聞きたい。椿の思考が秀悟に流れていくのは止まらなかった。
 発情期は苦しいが、素晴らしい花を生けられるのならと、常日頃から椿は受け入れていた。しかし、今は発情期が早く終われと思ってしまう。それは、椿にとって初めての感覚だった。


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