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liberty
崩れ落ちる執念
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要塞とも言われるイシュトハン邸は、門から続く道は湾曲しており、迂回させられながら玄関へたどり着く。
人の腰上辺りに来るように剪定された、観賞用ではない原種の薔薇の植え込みが直進を許さず、屋敷の上層階からは侵入者の位置は一目瞭然。
隣国と接する山からの侵入者や獣対策として、山を背に立っている屋敷であるが、裏門同様に正門も同じように全てを屋敷の中から把握出来るようになっており、攻撃魔法を得意とする母は、今でも迷い込んだ猛獣退治を屋敷から行なっているし、母が不在ならば屋上の魔石に魔力を通せば、敷地内の対象者は拘束出来る。
攻撃魔法は苦手なクロエでも、家から慌ただしく出て行った使用人たちに形ばかりに迎え入れられようとしている、門から向かってくるオモチャのように小さなフリードを、ここから足止めする事も容易い。
クロエの滞在を聞いたのか、足を止めて真っ直ぐにこちらを見ているフリードを見ていても、すぐに逃げようとは思えなかった。
次の瞬間には光の輪がまっすぐ飛んでくる。
パシンッと窓が一瞬光ると光の輪の欠片がハラハラと落ちていった。
「はービックリした」
ついボーッと眺めてしまっていたために反応が遅れた。
例え拘束魔法で拘束されても、転移魔法が使えなくなるわけではないので逃げる事は出来るのだが、面倒なことになるのでやはりすぐに帰ることにする。
「さて、引っ越しパーティのためにさっさと帰ろっと」
大きなバッグ2つと一緒に裏山へ転移したクロエは、その場で3発程弱い攻撃魔法を発動させ、辺りに水溜まりを作っていた。
そしてもう一度、今度は借りたばかりのフラットへと転移した。
目の前に広がる平民向けのシンプルな家具たちを見て、安堵したかようにため息をつく。
正確な座軸を読み取れる解析でないのなら、裏山全体が調査の対象になるはずであり、比較的新しい痕跡に絞ったとしても相当量の痕跡が残っている。
学園の休みの間、獣退治に勤しみ、魔法の勉強をしていた場所を選んだのは痕跡を辿らせないため。
同じ場所で複数の魔法を使えば、それだけ解析に時間がかかる。
「逃げるだけなら楽勝なんだけど…」
見つかったら別の場所へ移るだけ。
だけどそれだけでは腹の虫が収まらない。
フリードも許せないけど、サリーにも話を聞く必要がある。
私が婚約を発表している以上、何も知らないとは言わせない。
「サリーに会いに行こうかしら」
善は急げとばかりに手紙を書こうとしたが、今の服装を思い出して考え直す。
ドレスを買うにしてもこの平民街に貴族向けドレスの既製品があるわけもない。
仕方なく夜中にもう一度帰ることにして、今日は詰め込んだ本を片付けることにする。
「拘束魔法を解く練習もしなくちゃ…」
本を手に取ってデスクの上に並べながら、パラリと一冊の本を開く。
上級魔法の指南書はあっても、使いこなせる人はあまりにも少ない為、新しく魔法書が刊行されることは殆どない。
図書館にある本も初級魔法や生活魔法が中心で、高価な上級魔法書は貸し出しには許可が必要で、貴重な本を持ってこないという選択肢は持ち合わせていなかった。
しかし拘束されていない状態から練習が出来るわけもない。
「ダンに拘束魔法を教えるところから始めるのが早いかしら」
ジュリアンが味方であれば、ジュリアンの元に通いたいが、フリードの味方についたのだからフラフラと会いに行くわけにもいかない。
「仕方ない。拘束魔法もどれかの本に載っていたはず」
中級魔法の本の中から常時魔法に分類されているであろう拘束魔法を探すのでも時間はかかる。
見つけた頃にはすっかり日も傾き始めていた。
人の腰上辺りに来るように剪定された、観賞用ではない原種の薔薇の植え込みが直進を許さず、屋敷の上層階からは侵入者の位置は一目瞭然。
隣国と接する山からの侵入者や獣対策として、山を背に立っている屋敷であるが、裏門同様に正門も同じように全てを屋敷の中から把握出来るようになっており、攻撃魔法を得意とする母は、今でも迷い込んだ猛獣退治を屋敷から行なっているし、母が不在ならば屋上の魔石に魔力を通せば、敷地内の対象者は拘束出来る。
攻撃魔法は苦手なクロエでも、家から慌ただしく出て行った使用人たちに形ばかりに迎え入れられようとしている、門から向かってくるオモチャのように小さなフリードを、ここから足止めする事も容易い。
クロエの滞在を聞いたのか、足を止めて真っ直ぐにこちらを見ているフリードを見ていても、すぐに逃げようとは思えなかった。
次の瞬間には光の輪がまっすぐ飛んでくる。
パシンッと窓が一瞬光ると光の輪の欠片がハラハラと落ちていった。
「はービックリした」
ついボーッと眺めてしまっていたために反応が遅れた。
例え拘束魔法で拘束されても、転移魔法が使えなくなるわけではないので逃げる事は出来るのだが、面倒なことになるのでやはりすぐに帰ることにする。
「さて、引っ越しパーティのためにさっさと帰ろっと」
大きなバッグ2つと一緒に裏山へ転移したクロエは、その場で3発程弱い攻撃魔法を発動させ、辺りに水溜まりを作っていた。
そしてもう一度、今度は借りたばかりのフラットへと転移した。
目の前に広がる平民向けのシンプルな家具たちを見て、安堵したかようにため息をつく。
正確な座軸を読み取れる解析でないのなら、裏山全体が調査の対象になるはずであり、比較的新しい痕跡に絞ったとしても相当量の痕跡が残っている。
学園の休みの間、獣退治に勤しみ、魔法の勉強をしていた場所を選んだのは痕跡を辿らせないため。
同じ場所で複数の魔法を使えば、それだけ解析に時間がかかる。
「逃げるだけなら楽勝なんだけど…」
見つかったら別の場所へ移るだけ。
だけどそれだけでは腹の虫が収まらない。
フリードも許せないけど、サリーにも話を聞く必要がある。
私が婚約を発表している以上、何も知らないとは言わせない。
「サリーに会いに行こうかしら」
善は急げとばかりに手紙を書こうとしたが、今の服装を思い出して考え直す。
ドレスを買うにしてもこの平民街に貴族向けドレスの既製品があるわけもない。
仕方なく夜中にもう一度帰ることにして、今日は詰め込んだ本を片付けることにする。
「拘束魔法を解く練習もしなくちゃ…」
本を手に取ってデスクの上に並べながら、パラリと一冊の本を開く。
上級魔法の指南書はあっても、使いこなせる人はあまりにも少ない為、新しく魔法書が刊行されることは殆どない。
図書館にある本も初級魔法や生活魔法が中心で、高価な上級魔法書は貸し出しには許可が必要で、貴重な本を持ってこないという選択肢は持ち合わせていなかった。
しかし拘束されていない状態から練習が出来るわけもない。
「ダンに拘束魔法を教えるところから始めるのが早いかしら」
ジュリアンが味方であれば、ジュリアンの元に通いたいが、フリードの味方についたのだからフラフラと会いに行くわけにもいかない。
「仕方ない。拘束魔法もどれかの本に載っていたはず」
中級魔法の本の中から常時魔法に分類されているであろう拘束魔法を探すのでも時間はかかる。
見つけた頃にはすっかり日も傾き始めていた。
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