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liberty
手紙
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先程叫び声がした方で人が集まっているようで、ざわざわとしている。
「何なのかしら」
金色の手摺のついた階段を降りて、ドアが開けっ放しの執務室を覗くと、侍女や執事達が集まっている。
箱や手紙を拾い集める様子を確認すると、悲鳴の理由が分かった。
やはり結界は転送防止の効果があるらしい。
結界を解いたので今まで溜め込んでいた不着品が溢れ出してしまったのだ。
「クロエ様、お戻りになられていたのですね」
目の合った侍女がスカートを揺らしながらクロエの元に駆け寄る。
「旦那様も奥様も少し心配されながら出掛けて行きました」
ほんの数年ほど前まで、帰宅する魔力がなくなり夜になっても帰ってこないことが頻発していたため、その記憶がまだ鮮明に残っている事と、姉2人は学生の頃は王都の屋敷から通学しており、両親の外泊に関しての関心の無さには特に驚きはしない。
少し心配だと言いながらも、両親はきっと観劇にでも行っているのだろう。
「私から帰宅の知らせを出しておくわ」
紙切れ一枚を近くの街まで届けるくらいは簡単に行える。
結界のことは怒られるかもしれないので、手紙で一方的に伝えてしまったほうが都合がいい。
それに、ただ帰宅を待っていたら夜になってしまうかもしれない。
すぐに2階奥の自室に戻り、窓際に置かれた机の引き出しから白い便箋を取り出すと、簡単に事情を説明して、暫く隠れて生活することを書いていった。
「失礼致しますお嬢様、旦那様にお手紙を出されると伺ったのですが」
私付きの侍女が部屋に入って来たので振り向くと、彼女の手には赤い封蝋印が押された封筒を持っていた。
「えぇ。もう書き終わるところよ。その手紙も届ければいいの?」
「はい。王家からの手紙に至急と書かれておりましたが、渡せるのなら旦那様が開封した方がよろしいかと思いまして」
転送装置が直ったことが知れるのが早いなと感じたが、こちらから送っていたものも一気に届いたのだとしたら、納得はいく。
至急と言われて、内容に心当たりがありすぎるし、その思い浮かぶ内容のどれもが自分にとっては歓迎できるものはないので、早々にここを出て行くのが賢明だろう。
転送装置を使われてすぐにここに来られたら面倒なことになる。
「いいわ。一緒に転送しておきます」
急いで手紙を書き終えると、透視魔法を使い、街で食事を楽しんでいる両親の元へ届けた。
ハラリと机に舞ってきた手紙を見て、透視している事を悟った両親は、どこから見ているか分からないクロエに向けて手を振っているが、もっともっと上の方から見ているので、全然目は合わない。
手紙の内容を見たらそんなに暢気な態度ではいられないだろう。きっとすぐに家に帰ってくるはずだ。
透視魔法を解くと、急いでクローゼットを開けてついでに金庫の中身も全て取り出す。
1番大きな鞄にアクセサリーケースと個人資産全てを詰め込んだら、既に鞄は埋まってしまい、仕方なくもう一つ鞄を奥から引っ張り出すことになった。
その中に本棚にある魔法書を詰めれるだけ詰め込むと、窓の外が騒がしく感じた。
もう両親が帰ってきたのかと思ったが、それにしては早過ぎる。
そっと窓から覗くと、門番を振り払うフリードの姿が見えた。
「えっ!早過ぎる」
どんなに急いだって転送装置のあるイシュトハンの1番栄えた街から丸々2日で来るなんて信じられない。
それによく見てみれば、護衛もつけず歩いてくるのはフリード1人のみ。
まさか馬車も使わず、休みなくたった1人でここまで来たというのか。
幸いにして荷造りは終わっているのでいつでも出発出来る。
よっぽどラブラブ大作戦成功を前に逃げられたくなかったんだ。
「サリーのこと、そんなに好きなのね」
指に触れる窓ガラスが、クロエの体温を奪っていくかのように体の中心が冷えるのを感じた。
「何なのかしら」
金色の手摺のついた階段を降りて、ドアが開けっ放しの執務室を覗くと、侍女や執事達が集まっている。
箱や手紙を拾い集める様子を確認すると、悲鳴の理由が分かった。
やはり結界は転送防止の効果があるらしい。
結界を解いたので今まで溜め込んでいた不着品が溢れ出してしまったのだ。
「クロエ様、お戻りになられていたのですね」
目の合った侍女がスカートを揺らしながらクロエの元に駆け寄る。
「旦那様も奥様も少し心配されながら出掛けて行きました」
ほんの数年ほど前まで、帰宅する魔力がなくなり夜になっても帰ってこないことが頻発していたため、その記憶がまだ鮮明に残っている事と、姉2人は学生の頃は王都の屋敷から通学しており、両親の外泊に関しての関心の無さには特に驚きはしない。
少し心配だと言いながらも、両親はきっと観劇にでも行っているのだろう。
「私から帰宅の知らせを出しておくわ」
紙切れ一枚を近くの街まで届けるくらいは簡単に行える。
結界のことは怒られるかもしれないので、手紙で一方的に伝えてしまったほうが都合がいい。
それに、ただ帰宅を待っていたら夜になってしまうかもしれない。
すぐに2階奥の自室に戻り、窓際に置かれた机の引き出しから白い便箋を取り出すと、簡単に事情を説明して、暫く隠れて生活することを書いていった。
「失礼致しますお嬢様、旦那様にお手紙を出されると伺ったのですが」
私付きの侍女が部屋に入って来たので振り向くと、彼女の手には赤い封蝋印が押された封筒を持っていた。
「えぇ。もう書き終わるところよ。その手紙も届ければいいの?」
「はい。王家からの手紙に至急と書かれておりましたが、渡せるのなら旦那様が開封した方がよろしいかと思いまして」
転送装置が直ったことが知れるのが早いなと感じたが、こちらから送っていたものも一気に届いたのだとしたら、納得はいく。
至急と言われて、内容に心当たりがありすぎるし、その思い浮かぶ内容のどれもが自分にとっては歓迎できるものはないので、早々にここを出て行くのが賢明だろう。
転送装置を使われてすぐにここに来られたら面倒なことになる。
「いいわ。一緒に転送しておきます」
急いで手紙を書き終えると、透視魔法を使い、街で食事を楽しんでいる両親の元へ届けた。
ハラリと机に舞ってきた手紙を見て、透視している事を悟った両親は、どこから見ているか分からないクロエに向けて手を振っているが、もっともっと上の方から見ているので、全然目は合わない。
手紙の内容を見たらそんなに暢気な態度ではいられないだろう。きっとすぐに家に帰ってくるはずだ。
透視魔法を解くと、急いでクローゼットを開けてついでに金庫の中身も全て取り出す。
1番大きな鞄にアクセサリーケースと個人資産全てを詰め込んだら、既に鞄は埋まってしまい、仕方なくもう一つ鞄を奥から引っ張り出すことになった。
その中に本棚にある魔法書を詰めれるだけ詰め込むと、窓の外が騒がしく感じた。
もう両親が帰ってきたのかと思ったが、それにしては早過ぎる。
そっと窓から覗くと、門番を振り払うフリードの姿が見えた。
「えっ!早過ぎる」
どんなに急いだって転送装置のあるイシュトハンの1番栄えた街から丸々2日で来るなんて信じられない。
それによく見てみれば、護衛もつけず歩いてくるのはフリード1人のみ。
まさか馬車も使わず、休みなくたった1人でここまで来たというのか。
幸いにして荷造りは終わっているのでいつでも出発出来る。
よっぽどラブラブ大作戦成功を前に逃げられたくなかったんだ。
「サリーのこと、そんなに好きなのね」
指に触れる窓ガラスが、クロエの体温を奪っていくかのように体の中心が冷えるのを感じた。
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