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liberty
やさしいハンカチ
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「ほらキリアン持ってきて!」
「うん!ちょっと待ってて魔女のねぇちゃん」
隣の部屋のドアを開けて姿を消したキリアンはすぐに戻ってきた。
その手には植木鉢を持っていて、小さく白い花を咲かせている。
「じゃじゃーーん!これはチェリーブロッサムだよ!何年も先だけどすごくすごく大きくなるんだ」
「えぇー!これ木なの?え、これ枝!?」
まだ幹も細く、枝は茎のようで、キリアンから受け取るまでは木だとは思いもしなかった。
「そうなの。花が散った後出来る赤い実は甘酸っぱくてとっても美味しいの。花を咲かせる度、実を食べる度に私達を思い出すようにこれを選んだのよ」
ウラリーの言葉が涙腺のストッパーを溶かしてしまったかのように涙が溢れる。
どんな宝石よりも、どんなドレスよりも嬉しい贈り物だった。
「ありがとう」
ようやく絞り出した声はくぐもっていて、自分の声ではないように思えた。
「あらあら。そんなに泣くほど喜んでくれるなんて、みんなで選んだ甲斐があったわ」
「魔女のねぇちゃん!泣いてたらご馳走が食べられないぞ!」
抱えるように植木鉢に回す腕に力が入って、花びらがクロエの頬を撫でた。
「この木からなる花は…毎年一緒に見て…実は…毎年…一緒に食べましょう」
「わーい!来年も引っ越しパーティが出来るーっ!」
「もうキリアン。来年は引っ越しじゃないでしょう?」
大喜びのキリアンを嗜めるウラリーだったが、彼女もとても嬉しそうだった。
予想以上のクロエの喜び具合には驚きもあったようで少し戸惑いも感じられるが、まるで妹を見るような優しい目をしていた。
「3人ともどこにいたってパーティに招待するわ!」
「ぐすっ私もですか」
「なっ!?ダン!」
グスッという鼻を啜る音に目を向けると、目を真っ赤にしたダンが目頭を押さえている。
「ただの引っ越しパーティで2人も泣く人がいるなんて想定外よ…」
「わー!俺ハンカチ持ってくるよ」
呆れたようにウラリーがつぶやくと、キリアンはアタフタしながらも走ってドアを開けて去り、その様子があまりにもおかしくて、クロエは笑いが込み上げてきた。
「ふふふははははっ!今日は本当に幸せな日だわ!あーおかしい。男の人の涙を見たのは久しぶりだわ!」
声を上げて笑うなんて何年も何年もしていなかった。
慎ましく、冷静であることが求められる貴族は、お腹を抱えて笑いたくてもそれを耐えるのが美しいと教育を受ける。
喜怒哀楽を操ってこそ貴族なのだと。
「メイリーさん。そんなに笑ったらダンが可哀想よ…フッ」
ウラリーも思わず漏れてしまったかのように笑うと、2人は涙目のダンを見てもう一度声を上げて笑った。
「2人とも酷いじゃないですか…」
「ごめんなさい…ダン、あなたも花が咲く時期を忘れてないでね。どこにいても私が迎えに行くわ」
クロエが笑いを堪えたように絞り出すように声をかけると、タタタタッとキリアンの足音が聞こえてきた。
「なんでみんな笑ってるのさ!ほらハンカチ!」
「「ありがとう」」
クロエとダンはハンカチを受け取ると目元を拭った。
こういった小物も揃えていかなくてはならないなと思いながらも、ゆっくり揃えていこうと自分を急かすことはなかった。
「うん!ちょっと待ってて魔女のねぇちゃん」
隣の部屋のドアを開けて姿を消したキリアンはすぐに戻ってきた。
その手には植木鉢を持っていて、小さく白い花を咲かせている。
「じゃじゃーーん!これはチェリーブロッサムだよ!何年も先だけどすごくすごく大きくなるんだ」
「えぇー!これ木なの?え、これ枝!?」
まだ幹も細く、枝は茎のようで、キリアンから受け取るまでは木だとは思いもしなかった。
「そうなの。花が散った後出来る赤い実は甘酸っぱくてとっても美味しいの。花を咲かせる度、実を食べる度に私達を思い出すようにこれを選んだのよ」
ウラリーの言葉が涙腺のストッパーを溶かしてしまったかのように涙が溢れる。
どんな宝石よりも、どんなドレスよりも嬉しい贈り物だった。
「ありがとう」
ようやく絞り出した声はくぐもっていて、自分の声ではないように思えた。
「あらあら。そんなに泣くほど喜んでくれるなんて、みんなで選んだ甲斐があったわ」
「魔女のねぇちゃん!泣いてたらご馳走が食べられないぞ!」
抱えるように植木鉢に回す腕に力が入って、花びらがクロエの頬を撫でた。
「この木からなる花は…毎年一緒に見て…実は…毎年…一緒に食べましょう」
「わーい!来年も引っ越しパーティが出来るーっ!」
「もうキリアン。来年は引っ越しじゃないでしょう?」
大喜びのキリアンを嗜めるウラリーだったが、彼女もとても嬉しそうだった。
予想以上のクロエの喜び具合には驚きもあったようで少し戸惑いも感じられるが、まるで妹を見るような優しい目をしていた。
「3人ともどこにいたってパーティに招待するわ!」
「ぐすっ私もですか」
「なっ!?ダン!」
グスッという鼻を啜る音に目を向けると、目を真っ赤にしたダンが目頭を押さえている。
「ただの引っ越しパーティで2人も泣く人がいるなんて想定外よ…」
「わー!俺ハンカチ持ってくるよ」
呆れたようにウラリーがつぶやくと、キリアンはアタフタしながらも走ってドアを開けて去り、その様子があまりにもおかしくて、クロエは笑いが込み上げてきた。
「ふふふははははっ!今日は本当に幸せな日だわ!あーおかしい。男の人の涙を見たのは久しぶりだわ!」
声を上げて笑うなんて何年も何年もしていなかった。
慎ましく、冷静であることが求められる貴族は、お腹を抱えて笑いたくてもそれを耐えるのが美しいと教育を受ける。
喜怒哀楽を操ってこそ貴族なのだと。
「メイリーさん。そんなに笑ったらダンが可哀想よ…フッ」
ウラリーも思わず漏れてしまったかのように笑うと、2人は涙目のダンを見てもう一度声を上げて笑った。
「2人とも酷いじゃないですか…」
「ごめんなさい…ダン、あなたも花が咲く時期を忘れてないでね。どこにいても私が迎えに行くわ」
クロエが笑いを堪えたように絞り出すように声をかけると、タタタタッとキリアンの足音が聞こえてきた。
「なんでみんな笑ってるのさ!ほらハンカチ!」
「「ありがとう」」
クロエとダンはハンカチを受け取ると目元を拭った。
こういった小物も揃えていかなくてはならないなと思いながらも、ゆっくり揃えていこうと自分を急かすことはなかった。
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