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liberty
シリアスな支配者
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「無事だといいが…」
「既に無事とは言えないでしょうね。治癒出来る者をすぐに向かわせたほうがいいでしょう」
実家で王子が死ぬのも気持ちが悪い。
「あぁ、すぐに手配するよう伝えてくれ」
「御意」
陛下が指示をすれば、黒服の男が現れ、すぐに消えていった。
一見2人の護衛によって護られているように見える玉座も、高い魔力を持った者たちに護られているに違いない。
しかしそんな事は粗末な事。
「それで、陛下はクロエを捕まえてどうするおつもりですか?」
「出来れば婿入りは撤回して王宮に迎えたいと思っている」
「それがダリアの暴走の原因なのでは?」
一貴族の後継者を無理矢理に召し上げようとは些か傲慢な考え方ではないか。
ダリアも無償で講師をし続けているし、ステラ自身も無償で結界を張って魔力を奪われ続けている。
クロエも王族に不当に搾取されるのかと思うと反吐が出そうだった。
元々、ダリアが王城を破壊したのも、躾のなっていない姫が原因。王子の婚約者に執拗に粉をかける男がいたら、当然始末するだろうに、身内に甘い判断をした故に起きた必然だった。
それなのに、魔力が多いというだけでどれだけ搾取すれば納得するのだろうか。
「そろそろ、私達を不当に使役するのはお辞めになったらどうです?」
「不当では無いだろう。貴族として当然の務めだ」
「国の頭がこれでは部下が育たないのも仕方のないことですわね。私、ステラ・リラ・クラークは、陛下に退位を求めます」
「なに!?」
「なに、王家を潰そうというわけではありません。次の国王は王太子であるフロージア。彼に私たちの解放を求めます」
貴族が忠誠を誓うのは対価があるからに他ならない。
他国からの侵略や飢饉の際の援助や公共施設や国道などの恩恵があるからこそ忠誠を誓う。
しかしステラとダリアの奉仕には対価が存在しない。
「そんなことは許されない」
「私が結界を外しても、この城は控えている魔法省の人間がすぐに結界を張り直すことが出来ますよね?でも、ココで起こることを止める事は誰にも出来ない」
どれだけ人数を集めてもね。
それをいう前に、陛下の横にいる護衛が作り出している玉座の結界に光玉を放つ。
簡単に壊された結界を超え、陛下の顔のすぐ横を光玉が抜けていった。
優秀な腕を持つ王家お抱えの魔導士であるはずの護衛が身動きひとつ取れなかった。
ノーモーションで繰り出された魔法に、反応が遅れたのだ。
「陛下の身に纏っている防御魔法は、私にとっては無いも同然だということをお忘れなようで」
「国を敵に回してどうするつもりだ」
裏に控えていた護衛や影が陛下を取り囲むように前に出て、拘束魔法が次々とステラへ向けて放たれる。
「実質、私達は各々がこの国を支配出来るだけの力を持っていることは、使役してきた陛下は分かっておられるのでは?イシュトハン家を敵に回して勝てるわけがない。私1人でもこの国を乗っ取るくらい簡単なこと」
椅子から立ち上がることもなく、手を振り上げることもないステラの前で、儚くも砕け散るように魔法の残骸が舞っている。
この場の誰も、ステラを拘束することが出来ないでいた。
「陛下っ!」
ステラの後ろのにある扉が再び勢いよく開き、飛び出してきたのは、フロージア殿下だった。
座ったまま身動き一つしないステラを見て、慌ててステラの横に駆け寄ったフロージアは息を呑んだ。
緊急事態だと急いで駆けつけ、破壊音が聞こえて慌てて謁見の間へ駆け込んだのだが、状況が正しく理解出来ずにいる。
「フロージア、下がれ!」
玉座の飾りが崩れ落ちているのを見て、漸く理解出来た。
「ステラ、君は…」
「いいところに来たわね。今陛下に退位を要求したところよ」
「なんでそんな事を!」
「そこの陛下が立場も弁えず、私の魔力を不当に奪い続けることを当然の務めだとほざいたからよ?」
クッキーを口に含むステラを光玉が幾つも取り囲み、ステラがフロージアに微笑みかけると同時に、玉座の間に向かって一斉に飛んでいった。
「陛下っ!!!」
幾つもの声が上がり、陛下の前に護衛たちが立ち塞がったが、全ての者が床に叩きつけられて拘束された。
そして玉座の前にしゃがみ込んだ陛下も当然のように這いつくばったような格好で拘束されていた。
フロージアもとっさに防壁を玉座の前に展開したが、役に立つ事はなかった。
「やめるんだステラ!」
「ねえ、フロージア、覚えていらっしゃる?かつての約束を」
唸るような声がこだまする中、ステラの澄んだ声がフロージアの耳を包み込むように独占し、フロージアは玉座に向かおうとした足を止め、ステラから目を背けることが出来なかった。
あぁ…今があの約束を守る時なのか…
「既に無事とは言えないでしょうね。治癒出来る者をすぐに向かわせたほうがいいでしょう」
実家で王子が死ぬのも気持ちが悪い。
「あぁ、すぐに手配するよう伝えてくれ」
「御意」
陛下が指示をすれば、黒服の男が現れ、すぐに消えていった。
一見2人の護衛によって護られているように見える玉座も、高い魔力を持った者たちに護られているに違いない。
しかしそんな事は粗末な事。
「それで、陛下はクロエを捕まえてどうするおつもりですか?」
「出来れば婿入りは撤回して王宮に迎えたいと思っている」
「それがダリアの暴走の原因なのでは?」
一貴族の後継者を無理矢理に召し上げようとは些か傲慢な考え方ではないか。
ダリアも無償で講師をし続けているし、ステラ自身も無償で結界を張って魔力を奪われ続けている。
クロエも王族に不当に搾取されるのかと思うと反吐が出そうだった。
元々、ダリアが王城を破壊したのも、躾のなっていない姫が原因。王子の婚約者に執拗に粉をかける男がいたら、当然始末するだろうに、身内に甘い判断をした故に起きた必然だった。
それなのに、魔力が多いというだけでどれだけ搾取すれば納得するのだろうか。
「そろそろ、私達を不当に使役するのはお辞めになったらどうです?」
「不当では無いだろう。貴族として当然の務めだ」
「国の頭がこれでは部下が育たないのも仕方のないことですわね。私、ステラ・リラ・クラークは、陛下に退位を求めます」
「なに!?」
「なに、王家を潰そうというわけではありません。次の国王は王太子であるフロージア。彼に私たちの解放を求めます」
貴族が忠誠を誓うのは対価があるからに他ならない。
他国からの侵略や飢饉の際の援助や公共施設や国道などの恩恵があるからこそ忠誠を誓う。
しかしステラとダリアの奉仕には対価が存在しない。
「そんなことは許されない」
「私が結界を外しても、この城は控えている魔法省の人間がすぐに結界を張り直すことが出来ますよね?でも、ココで起こることを止める事は誰にも出来ない」
どれだけ人数を集めてもね。
それをいう前に、陛下の横にいる護衛が作り出している玉座の結界に光玉を放つ。
簡単に壊された結界を超え、陛下の顔のすぐ横を光玉が抜けていった。
優秀な腕を持つ王家お抱えの魔導士であるはずの護衛が身動きひとつ取れなかった。
ノーモーションで繰り出された魔法に、反応が遅れたのだ。
「陛下の身に纏っている防御魔法は、私にとっては無いも同然だということをお忘れなようで」
「国を敵に回してどうするつもりだ」
裏に控えていた護衛や影が陛下を取り囲むように前に出て、拘束魔法が次々とステラへ向けて放たれる。
「実質、私達は各々がこの国を支配出来るだけの力を持っていることは、使役してきた陛下は分かっておられるのでは?イシュトハン家を敵に回して勝てるわけがない。私1人でもこの国を乗っ取るくらい簡単なこと」
椅子から立ち上がることもなく、手を振り上げることもないステラの前で、儚くも砕け散るように魔法の残骸が舞っている。
この場の誰も、ステラを拘束することが出来ないでいた。
「陛下っ!」
ステラの後ろのにある扉が再び勢いよく開き、飛び出してきたのは、フロージア殿下だった。
座ったまま身動き一つしないステラを見て、慌ててステラの横に駆け寄ったフロージアは息を呑んだ。
緊急事態だと急いで駆けつけ、破壊音が聞こえて慌てて謁見の間へ駆け込んだのだが、状況が正しく理解出来ずにいる。
「フロージア、下がれ!」
玉座の飾りが崩れ落ちているのを見て、漸く理解出来た。
「ステラ、君は…」
「いいところに来たわね。今陛下に退位を要求したところよ」
「なんでそんな事を!」
「そこの陛下が立場も弁えず、私の魔力を不当に奪い続けることを当然の務めだとほざいたからよ?」
クッキーを口に含むステラを光玉が幾つも取り囲み、ステラがフロージアに微笑みかけると同時に、玉座の間に向かって一斉に飛んでいった。
「陛下っ!!!」
幾つもの声が上がり、陛下の前に護衛たちが立ち塞がったが、全ての者が床に叩きつけられて拘束された。
そして玉座の前にしゃがみ込んだ陛下も当然のように這いつくばったような格好で拘束されていた。
フロージアもとっさに防壁を玉座の前に展開したが、役に立つ事はなかった。
「やめるんだステラ!」
「ねえ、フロージア、覚えていらっしゃる?かつての約束を」
唸るような声がこだまする中、ステラの澄んだ声がフロージアの耳を包み込むように独占し、フロージアは玉座に向かおうとした足を止め、ステラから目を背けることが出来なかった。
あぁ…今があの約束を守る時なのか…
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