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Promenade
プロムナード
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赤い絨毯が敷かれた大きなホールには、楽団が心地いいメロディを奏でている。
コントラバスの低い音は肌を感動させるように震えさせ、バイオリンにピアノ、フルート、ハープと、曲により弾き手が変わる豪華な演奏だ。
フロージアが北側の国境沿い全ての領地の献上を発表した後、プロムでも改めてフロージアは言及した。
そして、ステラはクラーク領はイシュトハンの初代辺境伯であるマトゥルスの名を借り、マトゥルス国の建国を正式に宣言していた。
朝早くからイシュトハンで正装でいたのは、時間がなかったから。
両国の宣言後に主従関係となった国の主人が集まる特別なプロムナードとなったからか、家族がプロムのパートナーだった者達は、兄や姉ではなく親が代わりにパートナーになったと思われる者が散見された。
フロージアとステラが共に祝辞を述べると、会場は少し経ってからざわざわと動き出した。
なんだかジュニアプロムの時と比べて全然楽しくない。
「ねぇフリード。本当に挨拶回りとかはしなくていいのよね?」
「そうだね。友人と話すくらいしかないと思うけど」
「なら、先に小腹を満たしに行きましょう!」
美しいドレスとスーツを着た同級生たちの間をスルスルとくぐり抜けると、まだあまり手をつけられていない美しく盛られた料理たちが視界に入って胸がときめく。
人生に一度ともいわれる豪華なパーティなだけあって、宝石のようなデザートが並ぶ。
話しかけたいようにしている視線を気づかないふりをしながら、クロエはフリードの腕を引っ張る。
「ねぇ見て!全部デザートかと思ったらこれはお肉だし、こっちは四角いサンドイッチだわ!」
花やフルーツが飾られている四角い皿が並べられ、取り分ける必要がない。
難点は、たくさんの種類をお皿に盛れないことだ。
「たまにこういった形の食事を出す夜会もあるよ」
「そうなの?数えるほどしか参加してないから知らなかった。イシュトハンにいたらフリードも夜会に出ることは少なくなるんじゃない?いいの?」
小さいお皿を2枚持って、3枚目は周りの目を見てから諦めたらしいクロエの目線の先にあったお皿を、フリードは見逃さなかった。
「そんなの参加する必要ないよ。それに、これからは意外と誘いも多いかも知れない。ほら、あっちの隅のテーブルに行こうか」
フリードは器用にクロエの持っていた2つのお皿も受け取り、席へと移動する。
「飲み物を持ってくるよ」
クロエが席に座ると、すぐ近くにいる執事にフリードは声をかけた。
なんてスマートなエスコートだろうか。
ジュリアンのエスコートしか受けたことがないクロエは、内心衝撃を受けていた。
ジュリアンはこんなに密着するようにエスコートをしたりしないし、こんなに優しくない!
お小言を言われながらエスコートされることに慣れすぎていたし、周りの行動を予測して動くことも初めてだった。
誰が話したがっているのか、仕草と目を見れば明らかだ。
現に今、フリードが側を離れれば、様子を伺うように誰しもが距離を取っている。
フリードと私、両方が揃った時に挨拶に来たいというのが丸わかりだ。
不埒な視線を向けてくるのは、子供のプロムに紛れ込んだ者たちだ。
楽しそうに談笑している同級生達とは纏っているオーラから違う。
ふとした瞬間に腰に回されるフリードの手に翻弄され、初めて他人の目を意識したクロエは頭を抱えた。
考えることが多すぎる!
「お待たせ。どうかした?」
「フリードはよくこの視線に耐え切れるわね」
「気付いていたのか」
心底驚いたとでも言うように目を見開く無礼者を連れて、あの陣地争いの場に飛び込んでやろうか。
「当たり前じゃない。結婚したからってこうも変わるもの?」
「仕方ないよ。君はもう隣国の姫様だし」
「姫様って…たかが伯爵家の当主じゃない」
「そうだね。隣国の王子を射止めて、現女王の妹で、最強の魔力保持量の平凡な伯爵家当主だ」
「ふむふむ、成る程、非凡でとても美しい姫のようだわ」
「あぁ、そうだね。とっても綺麗な姫だ」
フリードはグラスをクロエの前に置くと、クロエの頭にさり気なく口を落とした。
「ちょっと!今何したのよ」
そのまま流れるようにクロエの斜め横に腰を落としたフリードに小さく抗議したが、甘い笑みによって誤魔化されてしまった。
でも何故か嫌じゃない。
コントラバスの低い音は肌を感動させるように震えさせ、バイオリンにピアノ、フルート、ハープと、曲により弾き手が変わる豪華な演奏だ。
フロージアが北側の国境沿い全ての領地の献上を発表した後、プロムでも改めてフロージアは言及した。
そして、ステラはクラーク領はイシュトハンの初代辺境伯であるマトゥルスの名を借り、マトゥルス国の建国を正式に宣言していた。
朝早くからイシュトハンで正装でいたのは、時間がなかったから。
両国の宣言後に主従関係となった国の主人が集まる特別なプロムナードとなったからか、家族がプロムのパートナーだった者達は、兄や姉ではなく親が代わりにパートナーになったと思われる者が散見された。
フロージアとステラが共に祝辞を述べると、会場は少し経ってからざわざわと動き出した。
なんだかジュニアプロムの時と比べて全然楽しくない。
「ねぇフリード。本当に挨拶回りとかはしなくていいのよね?」
「そうだね。友人と話すくらいしかないと思うけど」
「なら、先に小腹を満たしに行きましょう!」
美しいドレスとスーツを着た同級生たちの間をスルスルとくぐり抜けると、まだあまり手をつけられていない美しく盛られた料理たちが視界に入って胸がときめく。
人生に一度ともいわれる豪華なパーティなだけあって、宝石のようなデザートが並ぶ。
話しかけたいようにしている視線を気づかないふりをしながら、クロエはフリードの腕を引っ張る。
「ねぇ見て!全部デザートかと思ったらこれはお肉だし、こっちは四角いサンドイッチだわ!」
花やフルーツが飾られている四角い皿が並べられ、取り分ける必要がない。
難点は、たくさんの種類をお皿に盛れないことだ。
「たまにこういった形の食事を出す夜会もあるよ」
「そうなの?数えるほどしか参加してないから知らなかった。イシュトハンにいたらフリードも夜会に出ることは少なくなるんじゃない?いいの?」
小さいお皿を2枚持って、3枚目は周りの目を見てから諦めたらしいクロエの目線の先にあったお皿を、フリードは見逃さなかった。
「そんなの参加する必要ないよ。それに、これからは意外と誘いも多いかも知れない。ほら、あっちの隅のテーブルに行こうか」
フリードは器用にクロエの持っていた2つのお皿も受け取り、席へと移動する。
「飲み物を持ってくるよ」
クロエが席に座ると、すぐ近くにいる執事にフリードは声をかけた。
なんてスマートなエスコートだろうか。
ジュリアンのエスコートしか受けたことがないクロエは、内心衝撃を受けていた。
ジュリアンはこんなに密着するようにエスコートをしたりしないし、こんなに優しくない!
お小言を言われながらエスコートされることに慣れすぎていたし、周りの行動を予測して動くことも初めてだった。
誰が話したがっているのか、仕草と目を見れば明らかだ。
現に今、フリードが側を離れれば、様子を伺うように誰しもが距離を取っている。
フリードと私、両方が揃った時に挨拶に来たいというのが丸わかりだ。
不埒な視線を向けてくるのは、子供のプロムに紛れ込んだ者たちだ。
楽しそうに談笑している同級生達とは纏っているオーラから違う。
ふとした瞬間に腰に回されるフリードの手に翻弄され、初めて他人の目を意識したクロエは頭を抱えた。
考えることが多すぎる!
「お待たせ。どうかした?」
「フリードはよくこの視線に耐え切れるわね」
「気付いていたのか」
心底驚いたとでも言うように目を見開く無礼者を連れて、あの陣地争いの場に飛び込んでやろうか。
「当たり前じゃない。結婚したからってこうも変わるもの?」
「仕方ないよ。君はもう隣国の姫様だし」
「姫様って…たかが伯爵家の当主じゃない」
「そうだね。隣国の王子を射止めて、現女王の妹で、最強の魔力保持量の平凡な伯爵家当主だ」
「ふむふむ、成る程、非凡でとても美しい姫のようだわ」
「あぁ、そうだね。とっても綺麗な姫だ」
フリードはグラスをクロエの前に置くと、クロエの頭にさり気なく口を落とした。
「ちょっと!今何したのよ」
そのまま流れるようにクロエの斜め横に腰を落としたフリードに小さく抗議したが、甘い笑みによって誤魔化されてしまった。
でも何故か嫌じゃない。
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