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Promenade
衝撃
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フリードとクロエはそのまま3曲続けて踊った。
一曲終わる毎に捌けていくホールの中心で甘く踊る2人を、同級生たちは誰も邪魔だてすることはなかった。
3曲目が、難易度の高いダンスだったこともあって、ホールの中心で踊る王子はどうやっても目を引いてしまっていた。
「どうしたの?クロエ」
3曲目のダンスの後半から、クロエはフリードの背中越しに誰かを探す様に視線を流していることにフリードは気付いていた。
激しいターンを繰り返す曲だったので、クロエの視線を追うことも難しく、フリードは気が気ではなかった。
「いてはいけない人がいる気がする」
独り言の様に呟くと、クロエは目を瞑り、最近めっきりと罪悪感の無くなってしまった呪文を口の中で唱える。
「まさか…」
クロエはその場で指を鳴らすと、フリードの顔も見ずに転移していた。
その場の誰もが、あぁとフリードに同情のため息を送った。
フリードは、クロエの腕を掴もうとしたその手を、中々下ろせなかった。
「ジュリアンっ!!」
ホールから庭園に転移したクロエは、庭園のベンチに座ろうとしている2人に向かって叫んだ。
「クロエ、転移してきたのですか?」
驚いた顔をした後、動揺する様子もなく振り返って女性をエスコートしていた手をとる。
クロエは頭に血が登り、眩暈が起こりそうだった。
「なんでプロムにいるのよ!その子は?卒業生ってこと!?」
魔法科では見ない女性の顔に、クロエは女性の顔をしっかりと見る。
日に焼けたこともない様な白く透き通る肌に愛らしさを残した目元、髪を結い上げていなかったら、同級生とは思えないかもしれない。
「そうですよ。一般科のスターク伯爵家の三女、マーリンです」
「イシュトハン伯爵夫人にお目に書かれて光栄です」
小柄なのにハスキーな声に、一瞬別の人が挨拶をしたのかと頭が誤作動をおこした。
「スターク伯爵令嬢、初めまして、イシュトハン家当主、クロエです。ダンコーネス先生とどうしてプロムに?」
私の出る夜会は全てジュリアンが出てくれたし、ジュリアンは親の爵位を借りているだけで正式には貴族ではなく、魔法省の官僚だ。
何故、魔法科でもない生徒が、大切なプロムナードに魔法歴史学の先生と参加しているのか、訳がわからない。
「ダンコーネス先生とは、婚約予定ですの」
「婚約!?」
「もう少し落ち着いてからの話だから今すぐ婚約するわけではないが、1年後くらいには結婚しようと思っています。手紙は見てないのですか?」
手紙…そういえば、フリードの手紙しかまだ目を通していない。
ジュリアンが結婚するなんてそんなのすぐに認められるわけない。
「ジュリアンが結婚したら…私はどうすればいいの?」
友人のいない秘密の多い私の唯一の相談相手で、ステラにもダリアにもない優しさで家族とは違う意見をくれるただ1人の信頼出来る人だった。
フリードの味方について裏切られたと思ったけど、こんなのもっと大きな裏切りだと感じる。
「クロエも結婚したのだから、殿下を頼りなさい。ほら、泣いたら化粧が崩れる」
ジュリアンが差し出したハンカチを見て、自分が泣いていることに気がついた。
「ジュリアンのロリコン!!教師のくせに!変態!」
クロエはジュリアンの手を跳ね除け、マーリンに抱きついた。
「わ、わ、わたくし!?」
慕っている兄のような存在を取られて、もしかしたら怒り狂うかもしれないと聞かされていたマーリンは、渋るジュリアンに、クロエに見つからないようにする約束でプロムのエスコートをお願いしていた。
それがまさか、抱き付かれるとは思っておらず、ジュリアンに目線で助けを求める。
それをやれやれと呆れたようにジュリアンは引き剥がしにかかった。
「ほら、マーリンのドレスを汚す気ですか?」
「うるさい!こんな小さい女の子に手を出すなんて許せない!」
「手は出していませんよ」
「ふぇえええ。ロリコンの癖に紳士ぶるんじゃない」
「はいはい。マーリンも困っていますよ」
「マーリン、貴女、本当にこの変態でいいの?この歳まで彼女の1人すらいたことない変人よ?」
クロエは自分の腕の中にすっぽりと収まってしまう小さな少女に必死に問いかける。
「私が必死に口説きましたの。もし彼の初めての女性なら、それは喜ばしいことです」
彼女の低い声は、クロエの嗚咽にかき消されず、はっきりと耳に入ってくる。
「な、な、なんていい子なの!?ジュリアンに目をつけるなんて見る目があるわ!ふぇええええん」
クロエは再びマーリンに抱きつき、ジュリアンは頭を抱えた。
「クロエ!見つけた!」
「フリード!?」
フリードの声に思わずクロエは身を硬くする。
そういえば、フリードをホールの真ん中に置いて転移したなと思い出せば、後ろを振り向きたくなくてマーリンの小さな背中に回り込む。
しかし、背の高いクロエは、ちょうど顔一つ分マーリンより背が高かった。
仕方なくクロエは、マーリンの背中に手を置き、少し屈むようにして身を隠した。
「その子は?ダンコーネス先生、これはどういうこと?」
「まだ公表は控えていますが、婚約者になる予定の生徒です」
「私は何も聞いてないが?」
「だからまだ他の生徒の手前、公表は控えています」
何故かバチバチと争うように言葉を交わすジュリアンとフリードを確認しながら、何かいい言い訳はないかと考えるが何も思い浮かばない。
「君、名前は?」
「我が王国の第二王子にご挨拶申し上げます。一般クラスのマーリン・スタークでございます」
マーリンは丁寧にフリードにカーテシーを執る。
伯爵という爵位に負けない美しい礼だ。
きちんと教育のされている証だった。
「スターク伯爵の娘か。確か伯爵夫人はマビスリー国の出身だったな」
「はい。魔力の多い者が多い国ですが、姉2人とは違い、私はあまり多くの魔力は持っておらず、一般クラスに在籍しておりました」
マビスリー国は、北半分を氷に覆われた国だが、国民の魔力保持量が多く、平民も火を起こす位の魔力を有していると聞いたことがある。
姉2人は魔力保持量が多いとなると魔力保持量は血筋のみに影響されるものではないのかもしれない。
「フリードリヒ殿下、いや伯爵の方がいいでしょうか。私とマーリンはダンスタイムが終わる前にホールへ戻ります。お二人はごゆっくりお過ごしください」
「えっ!ダンスをまだ踊ってないの!?信じられないっ!ジュリアン何してるのよ!それでも男なの?さっさと行きなさい」
聞き捨てならないとばかりにクロエは声を上げた。
プロムナードでダンスを踊らないなんて許されない。
一生の思い出なのにダンスを踊らなかったなんて、絶対悲しい思い出になってしまう。
「クロエ、また遊びに来なさい。ではマーリン、行きましょう」
ジュリアンはクロエの頭にポンと手を乗せてから、マーリンの手を取った。
「ジュリアンが男になってる…」
決して自分には向けられない甘い目をマーリンに向けるジュリアンに、クロエは愕然としていた。
そして、今日この日まで、フリードの味方についた裏切り者だと思って連絡も取らなかったことを後悔していた。
祝福したい気持ちももちろんあるが、喪失感も大きく、気持ちの整理がなかなか付かなかった。
ジュリアンの教官室で魔力不足になった時にもらったクッキー、あれは絶対にマーリンからもらったものだ。
暫くクロエはホールへ戻る2人を目で追いながら、ジュリアンとの記憶を思い返していた。
一曲終わる毎に捌けていくホールの中心で甘く踊る2人を、同級生たちは誰も邪魔だてすることはなかった。
3曲目が、難易度の高いダンスだったこともあって、ホールの中心で踊る王子はどうやっても目を引いてしまっていた。
「どうしたの?クロエ」
3曲目のダンスの後半から、クロエはフリードの背中越しに誰かを探す様に視線を流していることにフリードは気付いていた。
激しいターンを繰り返す曲だったので、クロエの視線を追うことも難しく、フリードは気が気ではなかった。
「いてはいけない人がいる気がする」
独り言の様に呟くと、クロエは目を瞑り、最近めっきりと罪悪感の無くなってしまった呪文を口の中で唱える。
「まさか…」
クロエはその場で指を鳴らすと、フリードの顔も見ずに転移していた。
その場の誰もが、あぁとフリードに同情のため息を送った。
フリードは、クロエの腕を掴もうとしたその手を、中々下ろせなかった。
「ジュリアンっ!!」
ホールから庭園に転移したクロエは、庭園のベンチに座ろうとしている2人に向かって叫んだ。
「クロエ、転移してきたのですか?」
驚いた顔をした後、動揺する様子もなく振り返って女性をエスコートしていた手をとる。
クロエは頭に血が登り、眩暈が起こりそうだった。
「なんでプロムにいるのよ!その子は?卒業生ってこと!?」
魔法科では見ない女性の顔に、クロエは女性の顔をしっかりと見る。
日に焼けたこともない様な白く透き通る肌に愛らしさを残した目元、髪を結い上げていなかったら、同級生とは思えないかもしれない。
「そうですよ。一般科のスターク伯爵家の三女、マーリンです」
「イシュトハン伯爵夫人にお目に書かれて光栄です」
小柄なのにハスキーな声に、一瞬別の人が挨拶をしたのかと頭が誤作動をおこした。
「スターク伯爵令嬢、初めまして、イシュトハン家当主、クロエです。ダンコーネス先生とどうしてプロムに?」
私の出る夜会は全てジュリアンが出てくれたし、ジュリアンは親の爵位を借りているだけで正式には貴族ではなく、魔法省の官僚だ。
何故、魔法科でもない生徒が、大切なプロムナードに魔法歴史学の先生と参加しているのか、訳がわからない。
「ダンコーネス先生とは、婚約予定ですの」
「婚約!?」
「もう少し落ち着いてからの話だから今すぐ婚約するわけではないが、1年後くらいには結婚しようと思っています。手紙は見てないのですか?」
手紙…そういえば、フリードの手紙しかまだ目を通していない。
ジュリアンが結婚するなんてそんなのすぐに認められるわけない。
「ジュリアンが結婚したら…私はどうすればいいの?」
友人のいない秘密の多い私の唯一の相談相手で、ステラにもダリアにもない優しさで家族とは違う意見をくれるただ1人の信頼出来る人だった。
フリードの味方について裏切られたと思ったけど、こんなのもっと大きな裏切りだと感じる。
「クロエも結婚したのだから、殿下を頼りなさい。ほら、泣いたら化粧が崩れる」
ジュリアンが差し出したハンカチを見て、自分が泣いていることに気がついた。
「ジュリアンのロリコン!!教師のくせに!変態!」
クロエはジュリアンの手を跳ね除け、マーリンに抱きついた。
「わ、わ、わたくし!?」
慕っている兄のような存在を取られて、もしかしたら怒り狂うかもしれないと聞かされていたマーリンは、渋るジュリアンに、クロエに見つからないようにする約束でプロムのエスコートをお願いしていた。
それがまさか、抱き付かれるとは思っておらず、ジュリアンに目線で助けを求める。
それをやれやれと呆れたようにジュリアンは引き剥がしにかかった。
「ほら、マーリンのドレスを汚す気ですか?」
「うるさい!こんな小さい女の子に手を出すなんて許せない!」
「手は出していませんよ」
「ふぇえええ。ロリコンの癖に紳士ぶるんじゃない」
「はいはい。マーリンも困っていますよ」
「マーリン、貴女、本当にこの変態でいいの?この歳まで彼女の1人すらいたことない変人よ?」
クロエは自分の腕の中にすっぽりと収まってしまう小さな少女に必死に問いかける。
「私が必死に口説きましたの。もし彼の初めての女性なら、それは喜ばしいことです」
彼女の低い声は、クロエの嗚咽にかき消されず、はっきりと耳に入ってくる。
「な、な、なんていい子なの!?ジュリアンに目をつけるなんて見る目があるわ!ふぇええええん」
クロエは再びマーリンに抱きつき、ジュリアンは頭を抱えた。
「クロエ!見つけた!」
「フリード!?」
フリードの声に思わずクロエは身を硬くする。
そういえば、フリードをホールの真ん中に置いて転移したなと思い出せば、後ろを振り向きたくなくてマーリンの小さな背中に回り込む。
しかし、背の高いクロエは、ちょうど顔一つ分マーリンより背が高かった。
仕方なくクロエは、マーリンの背中に手を置き、少し屈むようにして身を隠した。
「その子は?ダンコーネス先生、これはどういうこと?」
「まだ公表は控えていますが、婚約者になる予定の生徒です」
「私は何も聞いてないが?」
「だからまだ他の生徒の手前、公表は控えています」
何故かバチバチと争うように言葉を交わすジュリアンとフリードを確認しながら、何かいい言い訳はないかと考えるが何も思い浮かばない。
「君、名前は?」
「我が王国の第二王子にご挨拶申し上げます。一般クラスのマーリン・スタークでございます」
マーリンは丁寧にフリードにカーテシーを執る。
伯爵という爵位に負けない美しい礼だ。
きちんと教育のされている証だった。
「スターク伯爵の娘か。確か伯爵夫人はマビスリー国の出身だったな」
「はい。魔力の多い者が多い国ですが、姉2人とは違い、私はあまり多くの魔力は持っておらず、一般クラスに在籍しておりました」
マビスリー国は、北半分を氷に覆われた国だが、国民の魔力保持量が多く、平民も火を起こす位の魔力を有していると聞いたことがある。
姉2人は魔力保持量が多いとなると魔力保持量は血筋のみに影響されるものではないのかもしれない。
「フリードリヒ殿下、いや伯爵の方がいいでしょうか。私とマーリンはダンスタイムが終わる前にホールへ戻ります。お二人はごゆっくりお過ごしください」
「えっ!ダンスをまだ踊ってないの!?信じられないっ!ジュリアン何してるのよ!それでも男なの?さっさと行きなさい」
聞き捨てならないとばかりにクロエは声を上げた。
プロムナードでダンスを踊らないなんて許されない。
一生の思い出なのにダンスを踊らなかったなんて、絶対悲しい思い出になってしまう。
「クロエ、また遊びに来なさい。ではマーリン、行きましょう」
ジュリアンはクロエの頭にポンと手を乗せてから、マーリンの手を取った。
「ジュリアンが男になってる…」
決して自分には向けられない甘い目をマーリンに向けるジュリアンに、クロエは愕然としていた。
そして、今日この日まで、フリードの味方についた裏切り者だと思って連絡も取らなかったことを後悔していた。
祝福したい気持ちももちろんあるが、喪失感も大きく、気持ちの整理がなかなか付かなかった。
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