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just married
有意義になる予定のお茶会
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クロエは結婚式まで領主の仕事もなく、姉2人が結婚した時から領のことを勉強し直していたので、学園がなければやることがなかった。
恐らく既に魔力を使い切った魔獣を探すのを手伝うため、エイフィルを訪れたりしていたが、基本的には大量に来た結婚祝いへの返信をする退屈な毎日を過ごしていた。
その結婚祝いの中からサリーとサリーの婚約者からの贈り物と手紙を見て、挨拶が出来なかったことを思い出し、お茶会を開催することにした。
サリーの領地は王都の隣だということもあり、クロエが主催する初めてのお茶会は王都の屋敷で行うことになった。
この屋敷では滅多にないお茶会という言葉に、使用人たちは張り切ってしまい、それはそれは豪華なお茶会会場が完成した。
クロエが白目を剥いたほどだ。
「よくお越しくださいました」
「イシュトハン伯爵夫人、お久しぶりでございます。お茶会にお呼びいただけて光栄です」
「こちらこそ、急なお誘いを受けてくださって嬉しいわ」
一番最初に来たのはプロムで会ったリリィだった。
若草色に白いレースをあしらった上品なドレスを着こなし、ただ歩いているだけで育ちの良さを感じて眩しかった。
「私が一番乗りでしたか。早く着きすぎてしまいましたか?」
「いいえ、使用人も張り切って準備していましたから、見てください。この部屋中に置かれた百合の花。花粉がドレスにつかないように昨日からみんな内職していて、夜ご飯が遅くなったくらいなんです」
窓から風が入り込んでくるたびにふわりと百合の香りが鼻をくすぐる。
上品な白く大きな花びらが、薔薇のように強い主張をせずとも堂々と美しさを誇っている。
「まぁ!そんな手間のかかったことを?玄関の百合が美しいと思ったところでしたの。白いテーブルクロスに、白いティーセット。カーペットや家具の趣味の良さが際立ったいいお茶会会場ですわ!これ、私の家の料理長が作りました菓子ですの。たくさんありますから是非、使用人の方も含めて皆様で召し上がってください」
目を細めながら微笑む姿はまさに女神。
クロエは差し出された箱を受け取ったが、あまりの神々しさに心にダメージを負った。
女として勝てるところがひとつもないっ!!
今回のお茶会はサリーの婚約者を呼ぶためにパートナーの同伴をお願いしていた。
リリィのパートナーは彼女の兄であるマグシスだった。
侍女にコートを預けていたようで遅れて顔を出した後、リリィと同じように気品漂う姿にクロエは頬を染めた。
「やぁウルスガルバ卿と妹君。早かったね」
クロエが頬を染めたのを見ていたかのようにフリードは部屋の扉を開けた。
その目に影が落ちているのは、まつ毛が長いからだとクロエは思うことにする。
なんだかいつもより発光している気がするし、それと比例するように彼の影も黒い気がして身震いがした。
「あぁ、フリード殿下久方ぶりです」
「イシュトハン伯爵、お元気そうで何よりですわ」
マグシスがフリードの手を取り握手を交わし、フリードはリリィに小さく目礼して微笑む。
カーテシー執ることなく、フリードに挨拶をする姿を見るのは新鮮だった。
「リリィは伯爵と呼んでいるのか」
「えぇ。イシュトハンへ婿入りしたのなら、殿下と呼ぶより伯爵とお呼びするのが適切かと」
リリィとマグシスは暫くフリードの呼び方で揉めていた。
どちらも間違いではない為、クロエは放っておくことにして、侍女にお茶を入れるように指示する。
「コーンウォリス男爵令嬢がお見えになりました」
ドアの前に控えていた執事が扉を開けると、淡いピンクのドレスを着たサリーが顔を出した。
「サリー、よく来てくれたわ」
「はい。イシュトハン伯爵夫人、お招きいただきありがとうございます」
眩いほどの笑顔を溢れさせるサリーが可愛くて、少し不機嫌そうなフリードを視界から追い出すようにサリーの元へと向かった。
「そんなに畏まらないで。プロムでは挨拶もできずごめんなさい」
「そんな!気にしないでください。あ、そうです。ご紹介します。こちらは私の婚約者でフィバリー商会のハーベストです」
「本日は爵位のない私までご招待に預かり恐縮でございます」
男爵家の娘を嫁にもらうだけあって、しっかりと教育されているのが伺える姿勢だった。
サリーが結婚を了承した位だから、心配は不要なようだ。
「こちらこそ。サリーの婚約者の方にお会いしたかったので本日はお会いできて嬉しく思います。私はイシュトハン家当主のクロエです。ハーベスト様とお呼びしても?」
家名があれば、他の呼び方も考えるのだがそうもいかず、許可もなく馴れ馴れしく名前で呼ぶのは貴族には難しいことだ。
名前で呼ぶことに許可を得たクロエは、早速2人をテーブルに案内すると、3組によるお茶会は合図もなく始まった。
「クロエ様、サリー様、私のこともリリィとお呼びくださいませ」
「リリィ様と?」
「はい。ウルスガルバってあまり可愛くありませんでしょう?友人には名前で呼んでもらっていますの」
所作の一つ一つも完璧な美しい女性から発せられた、友人という言葉にクロエの胸は途端に高鳴った。
「私を友人にしてくださるのですか!?」
あまりの驚きにクロエは少し身を乗り出す。
ーーーしまった。淑女の皮を剥いでしまった。
初めてのお茶会で公爵令嬢を前に淑女の姿を崩してしまったことに、深い後悔をすることとなった。
恐らく既に魔力を使い切った魔獣を探すのを手伝うため、エイフィルを訪れたりしていたが、基本的には大量に来た結婚祝いへの返信をする退屈な毎日を過ごしていた。
その結婚祝いの中からサリーとサリーの婚約者からの贈り物と手紙を見て、挨拶が出来なかったことを思い出し、お茶会を開催することにした。
サリーの領地は王都の隣だということもあり、クロエが主催する初めてのお茶会は王都の屋敷で行うことになった。
この屋敷では滅多にないお茶会という言葉に、使用人たちは張り切ってしまい、それはそれは豪華なお茶会会場が完成した。
クロエが白目を剥いたほどだ。
「よくお越しくださいました」
「イシュトハン伯爵夫人、お久しぶりでございます。お茶会にお呼びいただけて光栄です」
「こちらこそ、急なお誘いを受けてくださって嬉しいわ」
一番最初に来たのはプロムで会ったリリィだった。
若草色に白いレースをあしらった上品なドレスを着こなし、ただ歩いているだけで育ちの良さを感じて眩しかった。
「私が一番乗りでしたか。早く着きすぎてしまいましたか?」
「いいえ、使用人も張り切って準備していましたから、見てください。この部屋中に置かれた百合の花。花粉がドレスにつかないように昨日からみんな内職していて、夜ご飯が遅くなったくらいなんです」
窓から風が入り込んでくるたびにふわりと百合の香りが鼻をくすぐる。
上品な白く大きな花びらが、薔薇のように強い主張をせずとも堂々と美しさを誇っている。
「まぁ!そんな手間のかかったことを?玄関の百合が美しいと思ったところでしたの。白いテーブルクロスに、白いティーセット。カーペットや家具の趣味の良さが際立ったいいお茶会会場ですわ!これ、私の家の料理長が作りました菓子ですの。たくさんありますから是非、使用人の方も含めて皆様で召し上がってください」
目を細めながら微笑む姿はまさに女神。
クロエは差し出された箱を受け取ったが、あまりの神々しさに心にダメージを負った。
女として勝てるところがひとつもないっ!!
今回のお茶会はサリーの婚約者を呼ぶためにパートナーの同伴をお願いしていた。
リリィのパートナーは彼女の兄であるマグシスだった。
侍女にコートを預けていたようで遅れて顔を出した後、リリィと同じように気品漂う姿にクロエは頬を染めた。
「やぁウルスガルバ卿と妹君。早かったね」
クロエが頬を染めたのを見ていたかのようにフリードは部屋の扉を開けた。
その目に影が落ちているのは、まつ毛が長いからだとクロエは思うことにする。
なんだかいつもより発光している気がするし、それと比例するように彼の影も黒い気がして身震いがした。
「あぁ、フリード殿下久方ぶりです」
「イシュトハン伯爵、お元気そうで何よりですわ」
マグシスがフリードの手を取り握手を交わし、フリードはリリィに小さく目礼して微笑む。
カーテシー執ることなく、フリードに挨拶をする姿を見るのは新鮮だった。
「リリィは伯爵と呼んでいるのか」
「えぇ。イシュトハンへ婿入りしたのなら、殿下と呼ぶより伯爵とお呼びするのが適切かと」
リリィとマグシスは暫くフリードの呼び方で揉めていた。
どちらも間違いではない為、クロエは放っておくことにして、侍女にお茶を入れるように指示する。
「コーンウォリス男爵令嬢がお見えになりました」
ドアの前に控えていた執事が扉を開けると、淡いピンクのドレスを着たサリーが顔を出した。
「サリー、よく来てくれたわ」
「はい。イシュトハン伯爵夫人、お招きいただきありがとうございます」
眩いほどの笑顔を溢れさせるサリーが可愛くて、少し不機嫌そうなフリードを視界から追い出すようにサリーの元へと向かった。
「そんなに畏まらないで。プロムでは挨拶もできずごめんなさい」
「そんな!気にしないでください。あ、そうです。ご紹介します。こちらは私の婚約者でフィバリー商会のハーベストです」
「本日は爵位のない私までご招待に預かり恐縮でございます」
男爵家の娘を嫁にもらうだけあって、しっかりと教育されているのが伺える姿勢だった。
サリーが結婚を了承した位だから、心配は不要なようだ。
「こちらこそ。サリーの婚約者の方にお会いしたかったので本日はお会いできて嬉しく思います。私はイシュトハン家当主のクロエです。ハーベスト様とお呼びしても?」
家名があれば、他の呼び方も考えるのだがそうもいかず、許可もなく馴れ馴れしく名前で呼ぶのは貴族には難しいことだ。
名前で呼ぶことに許可を得たクロエは、早速2人をテーブルに案内すると、3組によるお茶会は合図もなく始まった。
「クロエ様、サリー様、私のこともリリィとお呼びくださいませ」
「リリィ様と?」
「はい。ウルスガルバってあまり可愛くありませんでしょう?友人には名前で呼んでもらっていますの」
所作の一つ一つも完璧な美しい女性から発せられた、友人という言葉にクロエの胸は途端に高鳴った。
「私を友人にしてくださるのですか!?」
あまりの驚きにクロエは少し身を乗り出す。
ーーーしまった。淑女の皮を剥いでしまった。
初めてのお茶会で公爵令嬢を前に淑女の姿を崩してしまったことに、深い後悔をすることとなった。
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